April 21, 2017
J.K.ローリングが書けるのは1日約500文字「文章とは書き手が苦労して書けば書くほど、読み手はラクに理解できる。」

Matthew Bloomfield_CC_Flickr

村上龍さんは、10年の構想期間を設けて、200冊を超える書籍や資料に目を通し、さらに関係者に大量のインタビューを行うことで、著書「半島を出よ」という小説を仕上げたそうです。(1)

また、司馬遼太郎さんも「竜馬がゆく」を書くにあたって、神保町にある古本屋で、トラック1台分の本や資料を買ったというのはあまりにも有名なエピソードですが、何かを書く時は、捨てる情報が多ければ、多いほど作品の質は上がり、実際はたった1%のことを伝えるために、調べた情報の99%を捨てるぐらいの覚悟がなければ、本物のライターや作家になるのは難しいでしょう。(2)

つまり、文章を書くためには、99%は捨てる情報を頭の中に大量にインプットして、頭のなかで無限にシュミレーションすることで、自分の中に伝えてたい映像を作り出し、その映像を読み手に伝わるように文章で説明していきます。恐らく、いい文章というのは読んでいるうちに、頭のなかに文章で表現された映像が浮かんでくるものなのではないでしょうか。(3)

文章というのは、自分の頭の中のイメージを何とか読み手に伝えようと、書き手が苦労して書けば書くほど、読み手はラクに理解でき、書き手がラクをして書けば、読み手には理解しにくい文章になってしまいます。

SNSの普及によって、いまや、コミュニケーションの主体は、喋ることから、書くことに大きく移行しており、不思議なことに情報を発信すればするほど、価値の高い情報がその人のもとに集まってくるというのはが世の常というものです。(新聞社は毎日情報を発信しているため、自然と世の中の情報が集まってくる。)

ハリーポッターの著者、J.K.ローリングは1日約500〜1,000文字、映画化された「スタンド・バイ・ミー」の著者、スティーヴン・キングは1日約2,000文字程度の文章しか書けないと言いますが、良い文章を読むということは、捨てられた99%の情報も一緒に自分自身の中に取り入れるという行為であると言っても過言ではありません。

捨てられた情報がない、つまり調べたことをそのまま全部書いている文章など、ほとんど読む価値がないのではないでしょうか。

藤原 和博「本を読む人だけが手にするもの」日本実業出版社、2015年 Kindle 2.佐々木 豊文「『1冊10分』で読める速読術」三笠書房、2010年 P40 3.野地 秩嘉「SNS時代の文章術」講談社、2016年 Kindle

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