まだまだ「アクセス数(PV)=お金」、「訪問者数(UU)=影響力」と考えるメディアが多く、なんとかタイトルをクリックさせたり、SEOを意識した記事構成する企業もまだまだ多いですが、5年から10年先を見据えている、英国フィナンシャル・タイムズやツイッター創業者エブが作った新しいサービス「ミディアム」、そして次世代メディア「アップワーシー」が、今後はアクセス数や訪問者数をサイトの指標として使わないようにすると発言しました。フィナンシャル・タイムズの広告ディレクター、Jon Slade氏は次のように述べています。
「私たちが広告主にレポートを出す時は、1000個の広告のうち、500個の広告は何秒間ユーザーに見られました、250個は10秒間ユーザーに見られました、250個は30秒間ユーザーに見られました、という伝え方をします。次のステップは時間割形式で広告を販売することです。」
↑世界でも最も影響力のあるメディアがアクセス数と訪問者数重視から脱却。(Shih-Pei Chang by Flickr)
ミディアムは独自で「Total Time Reading」という指標を作り、クリックではなくユーザーがそのコンテンツをどのくらいの時間見ているかによって、コンテンツを評価しており、今後もう、「Total Time Reading」しか指標にしないと述べています。
アップワーシーも同じく「Attention Minutes」という指標を作り、ユーザーの滞在時間を長くすることを会社の目的として、メディア企業全体がコンテンツの質を重視する方向にシフトしてくれればと考えているようです。
↑滞在時間が直接収益につながる「もうPV自慢のし合いは終わりにしよう。」
社会人になると「時間はお金」という言葉を耳にタコができるほど聞かされますが 、不思議なことにウェブ上では「クリック数=お金」という認識が強く、「時間=お金」と考えるメディアが日本ではほとんどありません。
「Chartbeat」と言う新しい分析ツールを提供するトニーさんは次のように述べています。
「もし広告の費用対効果がよかった時期が恋しいなら、マーク・ザッカーバーグに相談して、広告の特別枠を作ってもらったらどう?でもいくら彼でも1日を25時間にするのは難しいんじゃないかな。」
↑フェイスブック「費用対効果という”幻覚”を見せるクスリ。」
多くのメディアが「カロリーのないコンテンツ」を作成し、それに広告をかけてアクセスを集め、広告主を説得することで、メディアの早期にマネタイズを目指しているように思います。
以前、オバマ政権がシリアを爆撃するかもしれないというニュースが流れた日と人気歌手マイリー・サイラスが歌番組でパフォーマンスした日が重なりましたが、ニューヨーク・マガジンの調査によれば、人気歌手のニュースはシリア爆撃のニュースよりも12倍人気があったそうです。
↑1日24時間しかないのなら、本当に知るべきニュースとは何だろう。以前、フェイスブックなど、様々な企業の役員を務めるマーク・アンドリーセン氏が「もうPV(アクセス数)やUU(訪問者数)を分析するのは時間の無駄だ!」と公言したという記事を書きましたが、彼はもうアプリのダウンロード数すらカウントする必要がないと述べており、投資家は遠慮なくそのことを指摘するべきだと発言しています。
例えば、「ウイリアム王子の恋愛が三角関係であることが発覚」という記事タイトルがあったら、多くのユーザーがクリックしますが、コンテンツの中身にほとんど価値はなく、そこに広告を出す企業のブランド・イメージは著しく低下していくことでしょう。
↑「企業もメディアもいい加減、無駄なことに気づけ」
クリック数が多くても、カロリーが少ないWeb上のジャンク・コンテンツの重要性は、今度どんどん下がっていきますが、逆にスポンサーポストなどを含む、中身のあるコンテンツの価値は今後どんどん上がっていくことは間違いありません。
バズフィードの調査によれば、イギリスのオート・メーカー「Mini」がキャンペーンの一環で出したコンテンツを見たユーザーの32.9%が次に車を購入する時、「Mini」を検討すると述べており、52.2%が「Mini」というブランドに楽しいイメージが付いたと答えています。
さらにヴァージン・モバイルのソーシャル・コンテンツを通じて、「次に携帯を購入する時はヴァージンを検討する」というユーザーが150%も増えたという調査報告もあります。
↑中身のあるコンテンツは企業のブランド・イメージを大きく変える。
いつも思うことですが、上場しようが、○○万ダウンロード達成しようが、周りでそのサービスを使っている人がほどんどいないことを考えると、インターネット上でどれだけ情報を操作されているかが分かります。
アクセス数を増やすのはそれほど難しくないかもしれませんが、「アクセス時間」を増やすことはもの凄く頭を使う作業で、どの企業でもできることではありません。
それをお金でショートカットしようとする起業家や投資家が笑っていられる時間はそれほど長くないのではないでしょうか。
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