人と人の関係を向上させるためのSNSが、知らない間に人々の人生をどんどん不幸にしていっているのではないかという記事を最近よく目にします。
バージニア大学のメグ ・ジェイ教授は1999年から10年以上、20代の心理カウンセリングをしてきましたが、教授の前では人生の悩みを打ち明け、ものすごく悲観的なのに対し、彼らのフェイスブックやツイッターを見てみると、明らかに人生を楽しんでいるように書かれていたことが不思議でならなかったと言います。
↑20代のほとんどがSNSの中で理想の自分を作っている。
ジェイ教授によれば、フェイスブック内はしょせん人気コンテストと一緒で、投稿の内容はあまり重要ではなく、他人から「どう見られるか」に重点が置かれ、美人や著名人などと一緒に写ることで自分のステータスを上げようとしているそうです。
「単に親しい友人や隣人とつながる必要性というだけではなく、すばらしい生活はどうあるべきかということを日々の書き込みで常に思い出させてくれる数百人もの他者とつながっていなければならないと、わたしたちは感じるようになっているのです。これがさらに事態を悪化させています。」(1)
↑投稿内容よりも「どう見られるか」が重要。
ドイツで600人を対象に行われた調査によれば、3人に1人がSNSにログインした前と後ではログインした後の方が気分が悪いと答えており、特にバケーションの写真を見た時にこの傾向が強く、さらにフェイスブックをよく使う人は、自分の投稿をアップできないと不満になると感じた人も多くいたとこのリサーチは伝えており、ミシガン大学が82人を対象に2週間行った調査でも、同じような傾向が見られました。
「フェイスブックをある一定回数、使った人は次回友人にテキストメッセージを送る時、あまり良い気分にはならなかった。2週間、持続的にフェイスブックを使い続けた人は、明らかに人生の満足度が低下していた。」
↑バケーションの写真はあまり良い印象を与えない。
ジェイ教授の患者はフェイスブック内では充実した生活を送っているように見えますが、ジェイ教授の前では次のように繰り返し述べていたと言います。
「フェイスブックで、だれかの交際ステータスが婚約中や既婚に変わるのを見るだび、パニックになるの。」
「フェイスブックを見て、他人が何をしているのかを知るまでは、自分のキャリアはとても順調だと思っていたんです。」
ほとんどの20代が知り合いの書き込みや写真を「真実」だと受け取っており、それが自分に疎外感をもたらしているのではないでしょうか。
SNS内ではすべて上手くいっているように見えても、書き手のほとんどがトラブルや悩みを隠しており、読み手にはそれが伝わっていないことが悪循環を生んでいるようにも感じます。
↑書き手のほとんどがトラブルや悩みを隠している。
SNSは人々をインターネットで繋ぎ、お互いの人間関係を向上させるツールでしたが、いつの間にか人生の満足度を「競争」するツールに変わり始めているのかもしれません。作家のシャルル・ド・モンテスキューは次のように述べています。
「われわれが幸せになりたいと望むだけなら簡単だ。しかし、他者よりも幸せになりたいと望むなら、簡単ではない。われわれは他者のことを実際以上に幸せだと買いかぶっているからだ。」
ユタ・バリー大学の調査によれば週5時間以上、フェイスブックを使うと他人の人生は自分の人生よりも優れていると感じるようになり、次第に「人生は不公平だ」と思うようになるそうで、グーグルの会長であるエリック・シュミットもボストン大学の卒業式のスピーチで次のような言葉を卒業生たちに送りました。
「今日のスピーチの中で、一つだけ覚えておいてほしい。1日1時間はスマホをOFFにする習慣をつけよう。”いいね!”ボタンを押すだけじゃない。直接それを言ってあげよう。」
「スクリーンの中で会話をするんじゃなくて、直接会って本当のコミュニケーションを取ろう。人生はスクリーンの中で起こっているわけじゃない。これだけは忘れないでくれ。」
↑「いいね!」を押すだけではなくて、それを直接言ってあげよう。(iStock)
フェイスブックで人生の一部を共有するのは素晴らしいことですが、フェイスブックを見すぎたり、毎週毎週の出来事をアップしたりしている方は少し使い方を見直す必要があるのではないでしょうか。
あなたは完璧な人生をバーチャル上で「表現」していますが、それは大きな幻想で、時に周りの大切な人たちを不幸にしているのかもしれません。
1.メグ ジェイ「人生は20代で決まる」(早川書房、2014年) Kindle P1081