January 7, 2017
コンテンツ・マーケティングとは中高生が考えるセックスのようなものだ。

インターネットが一般の人に使われ始めて早20年弱、動画、記事、そしてソーシャルゲームと、僕たちがオンライン上で過ごす時間は日に日に長くなってきています。2004年頃、40代半ばのあるアメリカ人の方がこんなことを言っていました。

「10年前は一枚の写真をダウンロードするだけでも、もの凄く時間がかかった。それを考えると今のインターネットのスピードは信じられないほど早いよ。」

ほんの少し前まで、記事や動画をWeb上で見る習慣はありませんでしたが、現在ではWeb上には、コンテンツが溢れかえり、数多くのコンテンツはほとんどユーザーに見られず、インターネットという情報網の中に密閉され、二度と見つけられることはありません。米国コンテンツ・マーケティング協会の創業者であるJoe Pulizziさんは次のように述べています。

「もうこれからは良いコンテンツ(Good Contents)はユーザーに見てもらえない。素晴らしいコンテンツ(Excellent Contents)だけがユーザーに見てもらえる時代になってくるだろう。」


↑良いコンテンツではなく、素晴らしいコンテンツでないとユーザーに見てもらえない。

コンテンツとはユーザーを魅了するための記事や動画のことで、インターネットが一般に広がり始めた1996年、マイクロソフトの創業者であるビル・ゲイツさんがインターネット上に
「Content is King (コンテンツは王様だ)」という記事を書いています。

この記事の中で、近い将来インターネットがテレビ局や出版社の役割を果たし、良いコンテンツを作ることで広告収入を得るビジネスモデルが当たり前になるだろうと書かれており、コンテンツを作る人(ライターや映像クリエイター)にしっかりとお金を払わなければいけないことや、最初は広告で収益を上げるのには苦労するなど、現在のWeb業界のトレンドを1996年当時から予想していました。


↑ビル・ゲイツ「コンテンツは王様」(iStock)

最近ではGoogleのアルゴリズムの変更により、「コンテンツ・マーケティング」という言葉を日本でも耳にするようになりました。オーストラリアでRazorfish Sydneyというマーケティング会社を経営するIain McDonaldさんは次のように説明しています。

「コンテンツ・マーケティングは中高生が考えるセックスのようなものだ。みんな話題にしているけど、実際にどうやるのかイマイチ分からない。多分みんなやっているような気がするから、自分がもやっていると周りに主張する。」


↑みんな話題にしているけど、実際にどうやるか分からない。

BtoBにしてもBtoCにしても、これだけユーザーがネット上に滞在する時間が長くなった現在、コンテンツ・マーケティングでお客さんを獲得していくことが当たり前になってきます。

もしあなたがマーケティング担当者であれば、会社の上司からこんな風に言われたことはないでしょうか。

「そんなお金にもならない、Facebookやブログを更新して何になる?そんなもの更新する暇があったら営業電話の一本でもしたらどうだ。」

なかなか結果が出なく、会社で肩身の狭い思いをしているのであれば、答えはもの凄くシンプルです。

「You’re not doing it right.」(そもそもやり方が間違っている。)

あなたのことなんて誰も興味ない。

従来、自社の宣伝をする場合は雑誌やテレビの広告枠を買って、限られたスペースの中で自分たちの言いたいことを伝えなければなりませんでした。しかし、インターネットという無限の空間を手に入れ、時間や枠を気にせず自分たちの宣伝ができるようになった現在、企業が次々とクオリティーの低いコンテンツを作成し、Web上にゴミを増やしています。

「もうコンテンツが世の中に溢れてるんだ。今まで自分たちが作ったコンテンツをすべて消したほうが良いとは言わないが、そのコンテンツが自分たちに利益を与えるというよりは、自分たちにダメージを与えているということに早く気づいた方がいい。」


↑クオリティーの低いコンテンツは自分たちの価値を下げていることに気づけ。

例えば、
深夜のTVコマーシャルはクオリティーが低いものが多いですが、あなたは気を止めるでしょうか?現在、深夜のTVコマーシャルと同じようにクオリティーが低く、人間味を一切感じない広告やコンテンツがWeb上に散乱しています。多くの広告代理店は「お客様第一」と平気な顔で口にしますが、営業ばかりに力を入れていてクリエイティブな方法でユーザーの注目を集めることにほとんど頭を使っていません。


↑営業に時間を使うのではなく、クリエイティブになることに時間を使う。

これから、広告代理店が考えなければならないことはキャッチーなスローガンで注目を集めることではなく、どのようにユーザーの注目を維持し続けるかです。あなたが大企業であろうと、中小企業であろうと成らなければいけないのはメディア・カンパニーであり、出版社になるくらいの意識を持つ必要があるのです。

ソーシャルメディア・マーケティング?そんなものはやめろ。メディアもしくは出版社になれ!

企業が一番やってはいけないことは大量の広告を出して、自分のプラットフォームにユーザーを集め、そこで自分たちのプロダクトやサービスの情報をどんどん流していくことです。多くの企業がFacebook広告が安いのを良いことに、たくさんの「いいね!」を集めて、そこで自分たちの宣伝ばかりしていますが、それは自分の企業の評価下げていることに早く気づかなければなりません。

 Joe Pulizziさんは自社をメディア・カンパニーとして運営していく上で大切なことは「継続性」だと断言した上で
次のように述べています。

「例えば、新聞社をやろうとして、よし、じゃあ6ヶ月間だけ新聞社をやろうなんて言う人はいないはずだ。ほとんどの会社はコンテンツ・マーケティングに関して全く戦略を持っていない。」


↑「いいね!」を集めるのに夢中になってはいけない。

コンテンツ・マーケティングやSNSマーケティングを「広告」として考えていると、継続性を保つことはできません。YahooやCNNを見れば分かりますが、メディア・カンパニーというのは自分たちが伝えたいことができた時に、FacebookやWebサイトで情報を配信するのではありません、できれば毎日、もしくは定期的に付加価値の高いコンテンツを配信していくことが必要になってきます。

さらに重要なことは、そのメディアが
しっかりとしたミッションを持ち、人間味を持ったコミュニケーションを提供していくことでユーザーが集まってきます。例えば弊社Leading&Companyのメディア、
「1年半先を行くソーシャルメディア・マーケティング」
は世界のWeb関連と新しい働き方を日本にいち早く伝え、ユーザーの意識に小さい変化を起こさせるというミッションを持っています。


↑CNN:どんな形でもいい。常に価値を与えてユーザーとコンタクトし続けることが大切。

ハーバード大学のMikolaj Jan Piskorsky教授は、ソーシャル戦略とは「Social Value Exchange=ソーシャルを通じた価値の交換」を提供した時のみ有効だと断言しており、インターネットで価値のある情報とは、
「ユーザーが止まって、コンテンツ読んだり見たりして、自分の頭で考え、行動を変える」
のことを指します。よく企業のfacebook投稿でありがちな、「雪が強くなってきました。滑らないように気をつけてお帰り下さい。ところで弊社では◯◯のサービスをリリースしました。」みたいな投稿が本当に価値を与えているのかをもう一度考える必要があります。

例えばアメリカンエクスプレスが運営する
「American Express Open Forum 」というメディアは自分たちのサービスの話はほとんどせずユーザーに価値をもたらす情報を提供し、会員のみが参加できる中小企業向けのソーシャル・ネットワークも運営しています。(自分たちのビジネスの話はサイト全体の約1%)


↑ビジネスのことは極力少なく。とにかく価値のある情報を。

多くの研究者がコンテンツ・マーケティングで効果を出すには最低半年から一年ほどかかると調査しており、長期的にマーケティング戦略を考える必要があります。facebookの投稿やブログにしてもそうですが、社交辞令を含め、価値のない文章はすべて省くぐらいの気持ちでコンテンツ作成の取り組まなければなりません。そもそも、ソーシャルメディアで社交辞令は一切必要ないのですから。

クライアントを意識するな。オーディエンスを意識しろ。

スターバックスはクールな音楽と空間をセットにしてコーヒーを提供します、セブン-イレブンはATMや郵便受取など日常品を販売する以外の価値を提供しています。コンテンツをマーケティングをしていく上で、あなたがまず考えなければならないのは、お金を払って
商品やサービスを買う以外のところで価値を提供しなければなりません。

コンテンツ・マーケティングの中での「商品やサービス以外の付加価値」とはユーザーを楽しませたり、価値のある情報を与えて教育したりすることですが、まずBtoBで改善しなければならないことは、「退屈されること」をやめることです。出版社で考えてみれば分かりやすいですが、本を手にとってもらうためにカバーをデザインします。マーケティングもこれと同じことで、もの凄く慎重にタイトルやデザインに気を配り、本を出すステップと同じようなに考える必要があるのです。


↑記事のタイトルは本のカバーと同じ。

「退屈する」という言葉から正反対にある企業がレッドブルです。ユーザーを楽しませるという分野においてはレッドブルの上を行く企業はないかもしれません。映画プロデューサーのPeter Guberさんはユーザーと感情的に繋がることが最も大切だと述べています。

企業はメルマガやFacebook投稿など休む間もなく情報を送り続けていますが、コンテンツの中に感情が一切入っていないため、ユーザーの意識の中に止まらずスルーされてしまいます。ソーシャル・メディアで最も稼いだ男、ゲイリー・ヴェイナチャックさんはこれを「ストリーミング・エコノミー」と読んでおり、日々の日常の中で人々はスワイプをひたすら繰り返しており、その中で目に止めてもらうためには、どう感情的にユーザーとエンゲージしていくかが、大切だと述べています。


↑どんな方法でもいい。ユーザーをエキサイトさせろ。

ストーリー性を持たせユーザーとしっかりコミュニケーションを取れている良い例がパタゴニアです。 Joe Pulizziさんも
パタゴニアのコンテンツ・マーケティングは素晴らしいと絶賛していますが、パタゴニアは自分たちは何が得意で何が得意ではないか、どのサプライヤーが環境のことを考えて行動しているかなど、自分たちのストーリーを伝えるコンテンツをしっかり作ってコミュニケーションを取っています。

これからWeb上でユーザーを集めていくには自分たちの情熱をストレートに伝える必要があります。もし自分たちでストーリーを作れないのであればフリーランスの方に頼み、ストーリーを作ってもらうこともできるでしょう。実際、BtoBのマーケティングで外部にアウトソーシングする割合が一番多いのはライティングだと言うリサーチもあります。(ライティング64% デザイン54% コンテンツの拡散30%)


↑パタゴニア「自分たちのミッションを明確に語る。」

繰り返しになりますが、コンテンツを作る人は、企業の文化やサービスに関して、溢れるばかりの情熱を持っていなければなりません。残念ながら、いくらWeb上であっても感情や情熱はフェイクすることができないので、外部のライターの人間性を重視して、慎重に選ぶ必要があります。

まとめ

昨日、孫さんはフェラーリを作るのではなく、高速道路を作るためにアメリカへ来たんだとBloombergのインタビューで答えていました。高速道路とはLTE回線の必要性を、人々のインフラに例えたもので、高速道路が完成したら、その中に花や果実を植えなければならないと述べています。

孫さんが述べる花や果実とは、インターネット上の「コンテンツ」のことを指し、素晴らしいコンテンツを作って、ユーザーを教育したり、楽しませたりすることが、これからのマーケティングで必要不可欠なのはこれまで述べてきた通りです。


↑高速道路に果実を植えよう。

当然ですが、綺麗な花や美味しい果実がある場所にユーザーは集まります。そしてその花の匂いを嗅いだり、あなたの育てた果実を食べた人達が、自然とあなたに魅力を感じ、お客さんになっていくのではないでしょうか。

最後にもう一度申し上げますが、コンテンツ・マーケティングは長期戦略であり、1ヶ月、2ヶ月で成果が出るものではありません。だってレプリカの果実を持ってきても、それは匂いもしませんし、食べても味がないのですから。

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