October 26, 2014
パタゴニア創業者「私はいつも地球に良いかを優先することで利益を上げてきた。」

数年前、パタゴニアが「Don’t Buy This Jacket(このジャケットを買わないで)」という広告をニューヨークタイムズに出して話題をよびました。

よく増毛やダイエットなどのコンプレックス商品の宣伝文句として「○○でない人は決して購入しないで下さい。」みたいなものを見かけます。

これは顧客心理を上手くついて商品を購入させる戦略で、企業のビジョンには全く関係のないものですが、パタゴニアは環境問題を考慮して、必要なければ本当に購入してほしくないと考えていました。


↑本当に必要かもう一度よく考えて下さい。(Pic by vita)

これは環境問題に真剣に取り組むパタゴニアが、このジャケットを作るためにも地球の資源の一部が削るられている、だから本当に必要かどうかもう一度よく考えて下さいという真のメッセージでした。

「2つで980円」と、とにかく購入を勧誘するユニクロがこのような広告を出したら吐き気がしますが、このメッセージがパタゴニアのブランドイメージと完全にリンクし、ジャケットの売上げは過去最高を記録、さらに5万人の人達が「これからすべてのものに対して、購入する前に本当に必要なものか考えるようにします。」という署名にサインをしました。


↑ジャケットを作るため、地球の資源の一部が削られている。(Pic by Flickr)

ほとんど企業がコピーライティングやイメージ戦略などを使い、消費者の欲求を刺激して、なんとか商品を購入させようとしますが、パタゴニアはそれとは全く逆のことをやり、過去最高の売上げを記録しています。

パタゴニアの創業者であるYvon Chouinardさんは次のように述べています。

「馬鹿げてるように思うかもしれませんが、私はいつも決断をする時、それが地球のためによいかということを優先して考えることで利益を上げてきました。私たちのお客さんはそのことを知っているでしょうし、彼らも地球環境のために何かしたいのではないでしょうか。」


↑右:「私は利益よりもまず地球環境のことを考えて決断をしてきました。」(Pic by Flickr)

パタゴニアは世界でも最もクオリティーが高く、さらに高額なアウトドア用品を作る企業ですが、彼らのビジョンは利益を最大化させることよりも、さらに大きいところにあり、「Don’t Buy This Jacket」と真実を伝えた今回のキャンペーンはパタゴニア・ブランドをさらに強くしました。パタゴニアで働くJill Dumainさんは次のように述べています。

「広告業界が以前のように機能することはないでしょう。誰もが広告を疑っているので、Clever(賢い)な人たちはもう相手にされません。

Clear(明確)が新しい時代のClever(賢い)になります。とにかく自分のメッセージを明確に伝えることが求められる時代になってきているのではないでしょうか。」


↑「クレバーなメッセージではなく、クリアーはメッセージを」(Pic by pipipinopi)

パタゴニアの収益は毎年15%ずつ伸びており、さらにその収益は環境に優しいサプライチェーンの構築に投資されるそうです。

実際、環境問題もさることながら、スティーブ・ジョブズを見ても分かるように、服装で個性を出そうと頑張るより、毎日同じ服を来ている人の方が格好良く思われる時代になりました。

ちなみにジョブズは外見ではなく、内面でその人を判断したいため、ジョブズと会う時は個性のある服を来ていくことが禁じられているそうです。


↑パタゴニアのTシャツを着るPinterest CEO「服装は個性よりビジョン」(Pic by tecnologia)

ツイッター創業者のビズは「社会貢献をしない会社は競争面でも不利になる」と述べており、ヴァージンのリチャード・ブランソンも、「企業は利益を考えるよりも社会に与える明確な目的を持たなければならない」と何度も繰り返しています。

資本主義の中の社会貢献とは、莫大な収益を上げた一部の上場企業だけが、一つのイメージアップ戦略として行うものだったのかもしれません。

しかし、地球温暖化や人口増加など世界規模で取り組まなければならない問題が増えれば増えるほど、見返りを求めない企業の社会貢献が回り回って利益につながっていくのではないでしょうか。

Eye Catch Photo by Flickr

/DO_NOT_BUY