「ソフトウェアが世界を喰いつくす」、アメリカでは徐々にその現象が表れ始め、日本ではまだ本質が伝えられずにいます。
アメリカではTSUTAYAと同じ役割を果たす、「blockbuster」がNetflixなどのソフトウェア会社によって破綻に追い込まれているのに、なぜ僕たちはまだTSUTAYAでCDやDVDを借りているのか。
ネットスケープの創業者で、テクノロジーのトレンドを作り続けているマーク・アンドリーセン氏は次のように述べています。
「あと少しでタブレットやスマートフォンがすべての人に行き渡るだろう。すべての経営者は次の5年でそれをどう活用するか、どこに投資するかを真剣に考えなければならない。」
↑マーク・アンドリーセン氏 「ソフトウェアに仕事を奪われるのか。それも活用して利益を増幅させるのか。それはあなた次第だ。」(Photo)
実際、ちょっと周りを見渡してみれば、どれだけ凄い勢いで世界が変わっているのかが分かります。
例えば本を一番多く販売する会社はソフトウェア企業のアマゾンであり、物理的な書店はどんどん少なくなってきています。
さらにアマゾンはキンドルを開発し、物理的なデジタル書籍、さらには自己出版ができるプラットフォームまで作り上げてしまいました。
↑アマゾンがどれだけの仕事を奪ったか。ベゾス氏はこれからも笑顔でどんどん仕事を奪っていくだろう (Photo)
現在、アメリカで一番多く動画を配信する企業はNetflixなどのソフトウェア会社であり、その他の動画を配信している企業、ComcastやTime Warnerなどもタブレットやスマートフォンを活用したソフトウェア会社に変化しつつあります。
↑ソフトウェア会社のNetflixが物理的な店舗を展開していたBlockbusterを破産に追い込んだ。(Photo)
現在、アメリカの音楽業界もApple、Spotify、そしてPandoraなどのソフトウェア会社によって独占されています。従来のレコード会社は音楽という「コンテンツ」を提供するだけで、もう販売する販路はすべてソフトウェア会社に移行してしまいました。
↑最新のPCには、もうCDを入れる場所すらない 。(Photo)
現在、一番成長しているエンターテイメント企業はゲーム会社であり、これも同じくソフトウェア会社です。
日本ではガンホーがパズドラ一つで任天堂を越えてしまったと話題になりましたが、アメリカでもZyngaが急成長しており、当然のことながらゲームはすべてオンライン上で提供しています。
↑すべてのゲームはソフトウェアによってオンラインで (Photo)
もう何十年も最高の映画を作り続けているのは、スティーブ・ジョブズが関わって成長したピクサー社であり、これもまたソフトウェア会社です。
最近ではディズニーに買収されましたが、もうソフトウェア会社抜きにして、最高のアニメーションを作ることは不可能な時代なのかもしれません。
↑もうソフトウェアなくして、最高のエンターテイメントを提供することは不可能。(Photo)
ボーダフォンの写メールのCMが懐かしいですが、写真産業はとうの昔にソフトウェア会社に食べられしまいました。
現在、カメラ機能が付いていないスマートフォンはありませんし、写真を共有する際にもFacebookやFlickrなど、ソフトウェアによって世界中に拡散され、共有されていきます。
↑写真産業はとうの昔にソフトウェア会社に食べられいる。(Photo)
最大のマーケティング・プラットフォームはグーグルでグルーポンやフォースクウェアなど、当然ながらすべてがソフトウェア会社によって運営されています。
↑もうグーグル抜きのビジネスは考えられない。(Photo)
現在、もの凄い勢いで成長している電話会社はSkypeで、こちらもマイクロソフトに買収されたソフトウェア会社です。
従来のアメリカ2大電話会社であるAT&TとVerizonはアップルなどとパートナーシップを組み、ソフトウェア会社に進化しようとしています。
↑もう会社の電話もSkypeで (Photo)
ソフトウェア会社であるリンクトインは巨大なリクルート市場を一気に食いつくそうとしています。
転職という概念が変化しており、従業員は特に仕事を探していなくても履歴書をオンライン上にアップしておくことで、リクルーターがリアルタイムで人を検索できる環境が整いつつあります。
↑日本人がリンクトインを使う、使わないの問題ではない。(Photo)
恐らく、これからすべての物理的なモノ(例えば家具など)に、コンピューターチップが組み込まれ、ソフトウェアによって管理されていきます。マーク・アンドリーセン氏は近い将来、薬のピルにまでチップが埋め込まると話していますが、そんなSF映画みたいな話も、そんな遠い未来の話ではありません。
以前、別の記事でも書きましたが、一番の問題はまだ多くの人、または企業がもうすぐそこまで来ているソフトウェア革命に対して、必要なスキルを準備できていないことです。
アメリカではデジタル・リテラシーの高いエンジニア、マネージャー、そしてマーケターなどはシリコバレーという「ゾーン」に集められ、高い給料を貰っているのに対して、アメリカ全体の失業率は上がる一方で、もうすでに政府の援助抜きでは暮らしていけいない人がどんどん増えています。
まだ僕たち日本人は、CDやDVDを物理的に借りて返す行為を続けています。日本の市場は守られても、世界との格差はどんどん広がるばかりです。