September 26, 2014
リンクトイン創業者 「他人の利益を優先すればするほど、人間関係から多くの恩恵が得られる」

昨日書いた、「数字はウソをつかない」と同じようにビジネス業界では、「Give Take」や「Win-Win」の関係を築くことが何となく当たり前になっています。

ペンシルベニア大学の教授、Adam Grant氏によればビジネスマンは大きくわけて3つのタイプに分かれるそうです。

1. テイカー

何でも自分中心に考え、自分の利益を得る手段としてのみ、相手に「ギブする」。裏を返せば、テイクという目的を達成する手段として有効だと考えれば、テイカーは実に積極的にギブすることもある。

2. マッチャー(バランスをとる人)

マッチャーは「人間関係はお互いに五分五分であるべきだ」と考える人たちで、彼らはいつも頭のなかに、「バランスシート」を持っている。自分と相手の利益•不利益を常にバランスさせようとし、「これだけしてもらったから、私も同じくらいお返ししよう」という思考を持って行動する。

3. ギバー

「Give&Given」で動く人をギバーと呼び、見返りなど関係なしに、まず先に人に与える。その結果、「どこからかお返しをもらえる」という感覚を持たない。


↑世の中必ずしもGive&Takeではない。

エンジニアリングの世界ではもっとも生産性が低く効率の悪いエンジニアがギバーだという調査があります。

カリフォルニア州のプロのエンジニア、160名がどれだけ協力的だったとかという観点で、お互い調査し合った結果、もっとも成功していないエンジニアが「ギバー」だったそうです。

ギバーは締め切り厳守、経費の無駄遣い、そして仕上げた仕事など、あらゆる項目で最低点をつけられました。つまり他の人の仕事を手伝っていて、自分の仕事を終わらせられないのです。


↑ギバーは人の仕事を手伝っていて自分の仕事を終わらせられない。

これと同じパターンは医学部でも見られ、ベルギーの医学生600人以上を対象とした調査で、成績が最も低い学生が、「人助けが大好きだ」とか「人が何を必要としているか常に思いやる」といったギバー特有の主張に関して、得点が非常に高かったそうです。

このような事例は販売員も例外ではなく、テイカーとマッチャー(ギブ&テイクでバランスを取る人)は年間売上がギバーの2.5倍もあったそうで、ギバーは強引に売りつけるようなことは一切せず、客にとって本当に何がベストなのかを常に気にかけている傾向がありました。


↑多くの分野でギバー特有の主張と生産性は一致した。

このような調査内容を聞くと「ギバー」は他人に与えてばかりで、ものすごく損をしているような気がしますが、「与える人こそ成功する時代」の著者、アダムさんは次のように結論づけています。

「ギバーの頭のなかでは、成功の定義そのものがちょっと変わっている。テイカーが成功を人を出し抜いて優れた成果を達成することだと考えているのに対し、マッチャー(ギブ&テイクでバランスを取る人)は成功を個人の業績と他人の業績を公正に釣り合わせることだと考える。」

「一方、ギバーは成功を他人にプラスの影響をもたらす個人的なものだと考えるのだ。この成功の定義は、働く人の雇用スタイル、評価、報酬、昇進のやり方を根本から変えてしまう。個々の従業員の生産性だけでなく、この生産性が周囲の人びとに与える影響にも注意を払わなければならないということだ。」


↑アダム氏「ギバーは成功の定義が根本的に違う」

アダムさんの言葉はなぜ「ギバー」になるべきなのかの根本的な説明にはなっていませんが、成功者にはマッチャー(ギブ&テイクでバランスを取る人)ではなく、ギバーが圧倒的に多いのが事実です。

リンクトインの創業者であり、シリコンバレーで最も信頼されると言われているリード・ホフマンさんは次のように話しています。

「ちょっと信じられないかもしれないが、他人の利益を優先すればするほど、人間関係から多くの恩恵が得られるのだ。なぜなら、人助けをはじめると、評判がどんどん高まり、自分の可能性の世界が広がるからね。」


↑ホフマン氏「他人の利益を優先させる。まずそこから始まるんじゃないかな」

確かに自分のことで精一杯な状況下で他人に与え続けることは困難なことかもしれません。しかし、ボランティアを週2時間行う人は、ボランティアをしない人に比べて幸福度が高かったという調査でもあるように、ギバーの成功の定義が普通の人とは根本的に違うのかもしれません。

もしかすると金融危機を経て、人生の中の「成功の定義」をもう一度考え直す時期に差し掛かっているのかもしれません。

まずは頭の中の「バランスシート」を消すことから始めましょう。

/GIVE_AND_GIVEN