November 8, 2014
出張費に100円投資することが、1250円の収入を生み出す。

Pic_(juicyrai)_CC

メッセージアプリやSNSなど、テクノロジーがどんどん発達することによって、直接会って話したり、仕事の打ち合わせする機会が以前よりも減っているように思います。

特にIT企業などはオフィスに来なくてもできる仕事が多いですが、Yahoo CEOに就任したマリッサ・メイヤーさんは企業文化を強くするため、社員全員にオフィス勤務を強制し、「できないのであれば、辞めて下さい。」と述べ、直接会って会話する重要性を強調したのは記憶に新しい出来事です。

「一人で仕事する方が生産性が高いのは理解してるわ。でも、人々は一緒の場所で働く方がより協力的になってイノベーションを起こしやすくなるの。多くの素晴らしいアイデアは、二つのアイデアをくっつけたものなんだから。」(マリッサ・メイヤー)


↑チャットアプリやオンライン上のやり取りだけで、本当にイノベーションを起こせるのか。

不況になるとクライアントに会いにいく予算を削減しがちになりますが、オックスフォード・エコノミックは、出張費に100円投資することは1250円の収入を生み出し、利益は380円上がるというリサーチを発表しており、企業はクライアントに会う回数を減らすどころか、利益を上げるために回数をどんどん増やしていかなければなりません。

さらにチェスター大学の調べでは人々は、直接会って「笑顔」を共有することで、Facebookなどのオンライン上のコミュニケーションよりも幸福度が50%も上がるそうで、これはスカイプなどでも効果があると述べています。


↑Facebookは人間関係を代行するものではない。

現在、アメリカで1961年から1981年に生まれた「ジェネレーションX」と呼ばれる世代は、直接会って行うコミュニケーションと、FacebookやTwitterそしてメールなどを使ったデジタルコミュニケーションの量がぼぼ同等にあり、テクノロジーが発展する前に比べるとFace to Faceのコミュニケーションの量はどんどん少なくなっているのではないでしょうか。

イギリス、アメリカ、インド、中国などを対象に行われた調査でも81%のビジネスマンは、長期的な信頼関係を築くためには直接会うことが大事だと考えており、その中の47%は直接会うことが減ったためにクライアントを失ったと述べています。


↑週末のゴルフ、新オフィス移転の投稿に「いいね!」を押しているだけでは信頼関係は築けない。

アメリカの企業文化を第一に考えるザッポスという会社は1500人の従業員を抱える大企業ですが、メインの入り口は一つしかなく、業務上、ものすごく不便らしいのですが、1500人の従業員が同じ入り口を使うことで、お互い顔を会わせる機会が増え、そこから何かが生まれるのではないかと、わざと入り口を一つにしているそうです。

Yahoo CEOのマリッサさんも、「生産性よりも創造性」と述べていますし、グーグルは次の20年で、検索エンジンで得た莫大な利益、6兆9000億円の多くを人工知能の開発につぎ込む予定です。もしコミュニケーションの大半をテクノロジーに頼ったら、将来人間のする仕事など本当に無くなってしまうかもしれません。


↑グーグルは検索エンジンで得た莫大な利益を人工知能の開発に充てる。

UberやAirbnbが私たちの生活を大きく変えつつありますが、一般の人がタクシーやホテルを使うようになったのはここ数十年のことで、テック界では「革命だ!革命だ!」と騒いでも、一般の人からしたら「便利になったな」と思うぐらいです。

しかし、人間はたぶん何万年も前から笑顔を共有していたと思いますし、SNSが誕生してまだ10年ちょっとしか経っていないことを考えると、生物学的にテクノロジーがコミュニケーションを代行するのはまだまだ先なのかもしれません。


↑Yahoo CEO「まず人、それからプロダクト、それからトラフィック、そして売上げへ。この連鎖反応が一番大切。」

最近、「あなたは誰かのともだち」とFacebookのCMがよく流れていますが、あのCMはコミュニケーションをテクノロジーに委ねることを促進すべきだと言っているように聞こえます。

Master CardがCMで「お金で買えない価値がある。買えるものはMaster Card」と言っていたように、テクノロジーよりも人間が前に来るべきなのではないでしょうか。

IT革命がもたらした一番の恩恵は、「直接会う大事さ」を再度認識させてくれたことなのかもしれません。

/GO_FACE_TO_FACE