イラスト by リーディング&カンパニー
「数字は嘘をつかない」と不況になればなるほど、経営やタスク管理を数字化し、目標を短期化させることで、企業にとって本当に大事な長期的な目標からどんどん遠ざかっているという元大手コンサルタントの証言、「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」、かなり興味深いです。
大手コンサル会社に仕事を依頼すれば、「効率化」や「スキルの標準化」、そして「パフォーマンスの最適化」などを根拠なく押し進め、社員は機械同様、数字で管理されて、職場からどんどん人間味が奪われていきます。
↑短期の数字目標は職場からどんどん人間味を奪う。
この数十年、企業のリーダーたちは、「どうしたら我が社はビジネスを通じて人びとの暮らしをもっとよくするために貢献できるか」という重要な課題に取り組もうとせず、あまり意味のない問題ばかりにとらわれてきました。
•どうしたら競争優位性を確保できるか?
•どうしたら(会社的にも個人的にも)利益を増やせるか?
•どうしたら人材活用の効率を最適化できるか?
↑「効率化」は企業の合言葉。
例えば、「やせなければ」と思った人がいて、1. 「半年で10キロやせる」という目標と、2.「体力をつけ、心身の健康状態を改善する」という2つの目標を比べてみると分かりやすいです。
「半年で10キロやせる」という目標は、目標達成のために食事制限ができたとしても、すぐにリバウンドで体重が戻ってしまう可能があるし、運動して筋肉がつくせいでかえって体重が増えるおそれもあります。(筋肉よりも脂肪のほうが重いため)
さらに5ヶ月経っても目標に近づかない場合は、極端に食べる量を減らしてしまうかもしれません。
↑数字は達成しても本当の目的を失う。
それに引き換え、「体力をつけ、心身の健康状態を改善する」という目標は長期のライフスタイルの変化を表します。
この目標が素晴らしいのは、期限もなくいつまでも達成できないところにあります。これはキレイごとではなく、努力は常に持続していかなければならず、基本的に終わりなどないのかもしれません。
↑本当に大事なのは長期的なライフスタイルの変化。
これは企業目標も全く同じことで、「革命的な家電を作りたい」と思っている企業が、経営コンサルタントに相談すると、「では具体的な数字に表してみましょう」という話になり、あっさりと「年末までに革命的な商品をX個つくる」という目標にすり替わってしまいます。
つまり重要なのは「期限」と「数量」であり、「革命な家電を作りたい」という一番大切な目標は二の次になってしまうわけです。
↑「革命的なモノを作るなら発売延期なんて当たり前」
もう経営コンサルタントが推奨するマネージメントモデルやメソットは必要ありませんし、すでにあるものさえ、しっかり機能しているかは疑問です。
Evernoteの創業者、Phil Libinさんは100年後もEvernoteが繁栄し続けているようにと、100年以上存続している企業を徹底的に調べました。
世界には100年以上の歴史を持つ企業が約3000社ありますが、驚くことにその約80%が日本企業で(多くはスモールビジネス)、日本型の経営とシリコンバレーのスタートアップメンタリティーを融合させることが長期的に繁栄する企業には必要だと述べています。
↑100年以上の歴史を持つ企業の80%は日本企業。
数十年前まで日本企業は当たり前のように長期的なビジョンを持ち、社員を数字などで管理せず、社内には「人間味」が溢れていました。
しかし、不況なり経済が衰退し始めると、欧米の経営スタイルにシフトし始め、職場からどんどん「人間味」が失われていったように思います。
もちろん欧米式の経営スタイルで成功した企業も多いのは事実かもしれませんが、「数字は嘘をつかない」と人や長期的ビジョンをすべて数字で管理するのはかなり危険なのではないでしょうか。
数字は平気で嘘をつきます。もうこれ以上数字を目標にして職場から人間味を奪うのはやめましょう。数字はリカバリーできても、一度失われた人間味を取り戻すことはそんな簡単なことではないのですから。