December 7, 2014
睡眠不足の人が毎日もう1時間睡眠を取るようにすれば、収入が600万円増えた時よりも幸せになれる。

私たちが毎日元気に活動するために、平均8時間の睡眠が必要だと言われていますが、現代人の睡眠時間は50年前に比べて1時間から2時間短くなっており、たった10年前と比べても、38分短くなっています。

「毎日帰りが終電で頑張っているビジネスマン。」、「昨夜は一睡もせずにこの資料を作ってきました。」、「オレが若い頃は終電以外で帰ったことはなかった。」、何となくどこかで聞いたことのあるようなフレーズばかりですが、生産性ではなく創造性が重視される21 世紀の世界では、この睡眠時間を減らすという考え方が命取りになっていきます。


↑睡眠時間が少ない自慢は20世紀の遺産。(Pic by Flickr)

歴史上、最も国民に愛されたアメリカ大統領の一人、ビル・クリントンは5時間しか眠らないことで有名でしたが、「私が人生で犯した大きな過ちはどれも、疲れていたせいで犯したものだ。」と述べていますし、エクソン・ヴァルディーズ号の原油流出事故、チェルノブイリやスリーマイル島の原子力発電事故も、その要因の一部は睡眠不足にあったと言われています。(サード・メトリック Kindle Loc 168) 


↑ビル・クリントン「大きな過ちはどれも、疲れていたせいで犯したものだ。」(Pic by Flickr)

ハフィントンポスト創業者のアリアナ・ハフィントンさんは睡眠について、TEDトークの中で次のように述べました。

「前夜に4時間しか睡眠を取らなかった男性と食事をする機会が最近あったんです。私はその男性と食事をしながら心の中ではずっとこう思っていました。“もしあなたの睡眠時間が4時間ではなくて5時間だったら、この食事はもっともっと楽しいものになっていたでしょうね。”」

アメリカ全体で、睡眠不足によって失われた生産性は年間で6兆3000億円に上るとも言われており、科学誌サイエンスのリサーチによれば、睡眠不足の人が毎日もう1時間睡眠を取るようにすれば、収入が600万円増えた時よりも、幸せになれると計算しています。(サード・メトリック Kindle Loc 1295)


 ↑ハフィントン「睡眠不足を自慢する人の話はつまらない。」(Pic by Flickr)

睡眠不足はビジネスマンにとって、一番重要なスキル、「直感」と「クリエティビティー」を著しく低下させます。

直感とは素早く、無意識に、決断の理由を明確に語ることなく、的確に下される決断のことを指し、大昔から多くの重要な決断は論理的思考よりも直観によって下されており、世界的なベストセラー作家のマルコム・グラッドウェルも「第1感–“最初の2秒”の”何となく”が正しい」と述べています。

「直観はとてもパワフル、私に言わせれば知性よりもパワフルだ。それが私の仕事に大きな影響を与えている。」(スティーブ・ジョブズ)

「知識ではなく直感。それがあなたの”開けゴマ”」(アルベルト・アインシュタイン)


↑アインシュタインは一日10時間寝ていた。(Pic by biography)

さらに、「クリエティビティー」とは、一部の特別な人が突然アイデアをひらめくわけではなく、頭の中にすでにある情報をどう上手く組み合わせるかによって生まれるもので、睡眠が頭の中でバラバラになっている情報の良い組み合わせを見つけて、情報を統合させる役割を果たしています。

「クリエティビティーとはただの組み合わせです。クリエイティブな人は他人から”どうやったら、そんなにクリエイティブになれるのか?”と聞かれるとちょっと困ってしまうでしょう。だって彼らはそれを”創っている”というよりは、”組み合わせ”を見つけただけなのですから。」(スティーブ・ジョブズ)


↑創造性とはただの「組み合わせ」(Pic by Flikcr)

ビートルズの名曲「イエスタデイ」を目覚めの直後に思いついたという、ポール・マッカートニーは、慌ててピアノへ走り、忘れないうちに録音したと言われています。

もしポールが72時間ぶっ続けで作曲していたら、音楽の歴史上もっともカバーされた曲と言われている「イエスタデイ」はこれほど人気がでなかったのかもしれません。

さらにドイツの心理学者、Ullrich Wagner氏の調査によれば、夜中しっかりと睡眠を取った日の方が、斬新な数学の回答が生み出される確率が2倍になったそうです。


↑ビートルズの名曲も睡眠の中から生まれた。(Pic by Flickr)

睡眠を改善するだけで、パフォーマンスを劇的に改善できることは様々なリサーチが証明しています。

なかでもスタンフォード大学のバスケットボールチームを対象に行われた調査は有名で、睡眠が脳に与える影響を研究していたシェリ・マー研究員はバスケットボール部の選手11人に2〜3週間はいつも通り生活してもらったあとで、仮眠と食事に気を配り、毎晩10時間の睡眠を心がける生活を5〜7週間してもらいました。

この実験を3シーズンにわたって行った結果、選手11人のパフォーマンスは驚くほど向上し、スリーポイント・シュートの確率は9.2%、フリースローの確認は9%もアップしました。

さらに選手たちの気分は明るくなり、疲労を感じにくくなったと述べており、「研究結果は、以前の彼らが最下限レベルで機能していたことを示している。」とシェリさんはリサーチの結論づけています。(サード・メトリック Kindle Loc 1510)


 ↑睡眠を改善しただけで、フリースローの確認は9%もアップした。(Pic by Flickr)

しかし、いくら睡眠が大切だと分かっていても、忙しい日常の中で7〜8時間の睡眠を毎日取ることは簡単ではありません。

複数の研究によれば、日中に短時間の昼寝をすることで、睡眠不足を補えることが証明されており、歴史を振り返ってみても、レオナルド・ダビンチ、トーマス・エジソン、ウィンストン・チャーチル、そしてジョン・F・ケネディなどもよく昼寝をすることで有名でした。


↑エジソン「徹夜の自慢をする暇があるなら、昼寝をしよう。その方が今後の人類のためになる。」(Pic by Flickr)

時代の最先端を行く企業は、当然のことながら睡眠の重要性を理解しており、会社内に「昼寝ルーム」を備える企業も増えてきています。2011年から「昼寝ルーム」を備えているハフィントンポスト社のアリアナさんは次のように述べています。

「2011年の春に導入したときは反応がよくなかった。昼寝をしたら、同僚に仕事をさぼっていると思われるのではないかという不安の声が多かった。だから彼らにははっきりと伝えている。疲労してして消耗した状態でいること、休憩を取らずエネルギーを回復させないことは軽蔑すべきことだと。」(サード・メトリック Kindle Loc 928) 


↑さぼっているわけではない。個々の情報を頭の中で組み合わせているんだ。(Pic by Flickr)

実際、日本では高度成長期やバブルは何十年も前に終わりを告げているのに、24時間働いている、もしくは働いているふりをしていることがカッコいいという「考え方」だけが残り、さらに不況という状況が、「睡眠時間を削ってまで働いて、もっと給料を貰らわなければ」という概念を後押し、負のジレンマにはまっているように感じます。

そもそも、収入の増加と幸福度の関係は科学的に証明されておらず、南カリフォルニア大学の調査によれば、日本で1958〜1987年にかけて、実質所得は500%もアップしたにもかかわず、日本国民の幸福度には一切変化がなかったそうです。


↑もっと稼がなければと、日本人の睡眠時間は減るばかり。(Pic by Flickr)

睡眠に対する意識を変えることが、日本の古い考え方をリセットし、新しい時代に向かうキッカケになるのではないでしょうか。

ルートヴィヒ・マクシミリアン大学の調査によれば、世界の80%の人たちが平日、アラームをセットして起きているそうですが、睡眠の重要性を再認識し、生産性を重視する考え方から創造性を重視する考え方にシフトするためには、アラームを起床時間に鳴るようにセットするのではなく、就寝時間に鳴るようにセットしなければなりません。


↑アラームは起床時間ではなく、就寝時間に鳴るようにセットする。(Pic by Flickr)

つまり、「アラームを止めるために寝室に行かなければならない」状況を作り出すのです。

多くの人は睡眠は融通が聞くものだから、大事な仕事に合わせて、いつでも就寝時間は変更できるものだと考えていますが、21世紀は「寝たほうが出世できる時代」、飛行機や電車の出発時刻と同じように、絶対に変えられない予定だと見なすべきです。

人間は食べすぎることはあっても、一般的に寝すぎることはないため、就寝時間さえ守るようにすれば、自然とリフレッシュした状態で目が覚めるようになっています。


↑「就寝時間」という便に乗り遅れないように、2時間前には仕事を終えて自宅へ。(Pic by Flickr)

一日7〜8時間も寝るなんて、何か手を抜いているみたいで心配だと思う人も多いのではないでしょうか。

実際、InstagramをFacebookに1000億円で売却したKevin Systromさんも一日8時間は睡眠をとっていたそうですが、「起業家としては最悪だ!」と言われることもあったそうです。

しかし、終電まで働くことは意外と簡単ですが、22時〜23時に寝ることはそれほど簡単なことではなく、それを勇気を持って実行できる人たちが直感でしっかりと自分をコントロールし、クリエイティブな世の中を作っていくのではないでしょうか。

とりあえず、今日は一度、23時に寝てみましょう。大きな変化に気づくはずです。

(Eye Catch Pic by Flickr)

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