October 1, 2014
僕たちは10年間“クール”であることを意識したけど、次の10年は別に“クール”じゃなくてもいいんだ。

2004年、ハーバード大学の寮からスタートしたFacebookはあっという間に世界中に広がり、人々の生活に欠かせないものになりました。

「このようなシステムを誰かが作る必要があったんだ。でも僕たちが作ることになるとは夢に思わなかったですよ。」

Facebook10周年のインタビューでザッカーバークさんはこう答えていますが、結局大学の勉強そっちのけで作り、大学内で個人情報の取り扱いで訴られたサービスが世界を人々を繋げていきました。


↑「10年間は素晴らしい冒険だった」と答えるザッカーバーグさん

僕も当時アメリカに住んでいて、2005年ぐらいに「このFacebookってMyspaceと何が違うの?」と聞いて、「よく分かんないけど、すごくクールなんだ。お前も使えよ!」と言われたのを覚えていますが、まさか10年後、自分の会社名や役職、恋愛ステータスをFacebook上にアップするとは夢にも思いませんでした。


↑2005年当時は大学のEmailがないと登録できなかった。

Facebookは大学から大学へ、若者から大人へと時間を経て広がっていき、2012年に株式上場を果たします。そして創業10周年を迎え、2014年から2024年までの戦略を3年、5年、そして10年に分けて事業計画を立て、次の時代に向けて動き出しています。

「毎晩、毎晩、僕の家のリビングルームに集まって、次の行動について考えてるんだ。常に新しいことをやっていくよ。」

と、ザッカーバークさんは話していますが、2004年に初めてインタビューされた時も同じようなことを答えて、それ以上のことをザッカーバーグさんは成し遂げてきました。(口調はちょっと生意気ですが笑)


↑2004年にCNBCに初めてインタビューを受けたザッカーバーグさん

2004年当時、ザッカーバーグさんが望んでいた「世界中の人々を繋げる」という目標はある程度達成されました。Facebookが成功した理由について問われたザッカーバーグさんは次のように答えています。

「誰よりも世界を繋げることを大切に思ったからだ。そしてそれは今も変わらない。だから僕は、これまでの10年よりも、これからの10年の方がワクワクしてるよ。」


↑これからの10年の第一弾としてリリースされたアプリ:PAPER

もし、この記事を読んでいるあなたがWebマーケターなら、最近の若者離れや他のSNSの台頭を懸念されているかもしれません。プリンストン大学のリサーチによれば、Facebookは2017年まで80%のユーザーを失うと予想されています。

それをただ単純に「ソーシャル・ネットワーク」という中で考えれば、人々はあまりにも複雑なWeb上での人間関係に疲れ果て、Facebookを離れていくかもしれません。

しかし、ザッカーバーグさんは次の10年の戦略を「匿名の人格」を通じたコミュニケーションも考慮しているそうで、Bloomberg Busienss Weekのインタビューで次のように答えています。

「バランスが難しいと思うけど、必ずしも本当の人格をWeb上で公開する必要が無くなってくるかもしれないね。いつも周囲に見られている気がすると疲れちゃうから。」


↑次世代のSNSとはどんなサービスなのか。

Facebookの未来には色々な噂やリサーチがあります。あなたがいちユーザーであれば、そこまで気にしないと思いますが、企業の売上を左右するソーシャル・マーケターであれば気にせざるも得ません。Facebookの未来が明るいとは簡単には言えませんが、Facebookが僕たちの生活を良くしようとしていることは間違いないようです。

それは何でかって?

これからご説明しましょう。

名刺サイズのスマホにすべてをはめ込むのには本当に苦労したよ。


↑Facebook Creative Labの自信作:PAPER

最近ではFacebook内で自分の近況を報告するというよりは、気になる記事や動画などの「コンテンツ」を共有する場として使うことが多くなりました。今回デザイナーのバックグラウンド多く持つチームで設計されたコンテンツ共有アプリ「PAPAR」は、従来のUIやロゴなどを一切使わない全く新しいFacebookプラットフォームとしてスタートしています。Papar制作チームのMike Matasさんは次のように振り返りました。


↑Mike Matasさん

「僕たちはPaper制作の過程で、人が本当に新聞や雑誌を読む感覚を導入したかったんだ。いやー、デザインとエンジニアリングのイノベーションを同時に行う必要があったから本当に苦労したよ。」

CBS Newsのテクノロジー・アナリスト、Larry Magidさんは「ニュースをグラフィックのように見るアプリ」とPaperを表現しており、従来のFacebookアプリにはない美しさをベースにして、Facebookを再定義するつもりではないかと期待を寄せています。

従来のFacebookは「Face=人」をハブにしてコミュニケーションを取ってきましたが、今後は「Paper=コンテンツ」をハブにしてユーザーはコミュニケーションをとっていく可能性が高いです。


↑人ではなくコンテンツをハブに

現在、アメリカ人の約30%はFacebook経由でニュースを消費しており、ザッカーバーグさんはこのPaperと従来のFacebookを上手く組み合わせ、会社をSNSとコンテンツハブを融合させた、全く新しいプラットフォームに変化させようとしています。さらにPaperはマーケターにとって非常に有効なツールで、細かく選別され、ターゲティングされたユーザーに対して、コンテンツ通じたマーケティングを行うことができるようになります。

「Paperはコンテンツのフローをコントロールするサービスとして素晴らしいものだ。そこには多くの広告が集まるだろう。」と、あるコンテンツ・プロバイダーが公言しており、Facebookの新しい時代への動きについて、方向性は間違っていないと断言しています。


↑あなたが新聞を読むように


↑3年後、あたなはPaperを使う

欧米のメディアでは、PaperのデザインやUIがあまりにも美しく、使い勝手も素晴らしいので、従来のFacebookアプリはもう誰も使わないのではないかと噂されています。そんな噂を聞いてPaperのプロダクトマネージャー、Michael Reckhowさんは笑いながら次のように答えました。

「It’s a good problem to have」(それは素晴らしい問題だ!)

会社は大きくなった。それじゃあ、みんなでハーバードの寮へ戻ろう!


↑次の10年を創るFacebook Creative Lab

Facebookはたった10年で従業員6300人を抱える巨大企業になりました。さすがにこれだけ大きくなってくると、ハーバードの寮やシリコンバレーで一軒家を借りて、数十人の仲間と好き放題やっていたようにはいきません。ザッカーバーグさんは2005年当時、あるスタンフォードのカンファレンスでマネージメントについて次のように語っています。

「Facebookの中で一番重要だと考えていることは、フレンドリーな文化を持つことなんだ。マネージメントについての考えは全くないよ。自分でも何やっているのか分からないからね。(笑)」


↑2005年当時のFacebookオフィス

TechCrunchの記事によれば、最近Facebookは楽しく働ける場所ではなくなってきていると言います。Googleの就労時間の20%は社内のリソースを使って好きなことをやって良いという「Google 20% ルール」や「Google Ventures」の影響もあり、スキルのある従業員がFacebookから離れていっているそうです。


↑20%ルール:夢中になることから、イノベーションは生まれる。

今回、Googleに対抗してかどうかは分かりませんが、従業員がハーバードの寮でハッカーのように働ける環境、「Facebook Creative Lab」が設立されました。社内環境が直接影響しているのかは定かではありませんが、Facebookはここ数年、Facebook HomeやFacebook Pokeなどユーザーをワクワクさせるようなサービスを世の中に送り出せていません。

「Facebook Creative Lab」はマネタイズのことは一切考えず、長期的に成長するサービスを作ることに特化したクリエイティブ集団です。


↑Facebook Creative Labのシンボル:「もし恐れるモノが無かったら、あなたは何をする?」 

Creative Labの一員であるMichael Reckhowは次のように話します。

「私たちのすべきことは、ユーザーが好むサービス”核”を作ることです。もしそのサービスがFacebookのメインサービスになれば、会社がそれをマネタイズする方法を考えます。」

あなたがもし、会社から時間もお金を気にしなくていいから自分の好きなものを作ってみろ!と言われたらどうするでしょうか。ガチガチに就労時間を管理され、月間の営業目標によってパフォーマンスが評価されている方にとっては、腰が抜けてしまうような問いかもしれません。


↑Creative Labから今年中に20個の新しいサービスをリリース予定

ホンダやソニー、アップル、フェイスブックも含め、人類の歴史に残るような企業の多くは、一人、もしくは数人の「遊び心」から始まっています。遊び心が無くなり、売上や生産性だけにフォーカスした商品やサービスがどうなるかは、ソニーやジョブズ解雇後のアップルを見れば明確です。

Facebookはそれを理解したのでしょうか。社内の一部をハーバードの寮に帰らせるようです。

まとめ


↑次の10年は別にクールじゃなくても良い

ザッカーバーグさんはAltranic のインビューで次のように答えています。

「電気が世の中に出始め頃、みんなは電気のことを”クール”なものと思ったのかもしれない。だけど、少し時間が経ってそれが当たり前になったら、もう電気を”クール”なものだなんて思わないんだ。」

もしかするとFacebookも電気と同じなのかもしれません。確かにiPhoneが2007年に発売された時、iPhoneを持っているということはもの凄く”クール”なことでしたが、当たり前に普及して自分の親でも持っているくらいになると、別に”クール”でも何でもありません。

ではFacebookが次の10年で目指すものは何なのでしょうか?ザッカーバーグさんは次のように答えています。


↑「社会には、より多くのソーシャルサービスが生まれてくるでしょう。Facebookはそれらを支える立場になりたいと考えています」

“クール”なサービスから、人々の「必需品」へ。創業10年を迎えたFacebookは、今まさに新しい時代のフレーズに入りつつあります。人類の歴史書に載るサービスになるのか、それとも時代の流れに押しつぶされて消えていくのか、長いようで短い10年後はまだ微かにも見えませんが、彼らが僕たちの生活をより良くしようとしていることは間違えないようです。

/MARK_ZUCKERBERG_NEXT_AMBITION