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ペイパルの卒業メンバーが立ち上げたユーチューブ、リンクトイン、スペースX、テスラ・モーターズ、イェルプ、ヤマー、そしてパランティアの7社はどれも1000億円以上の企業価値を持っており、並外れたペイパルの企業文化を共有しているメンバーたちは今でも「ペイパル・マフィア」としてIT界に限らず大きな影響力を持っています。この中でもペイパルのCEOを務め、「ペイパル・マフィア」のリーダー的存在でもあるピーター・ティール氏は企業には究極のオカルト文化が必要だと何度も強調し、会社はとにかくスタート時が一番大事であると断言しています。


↑ペイパル・マフィアの中心メンバー、イーロン・マスク。(Flickr/OnInnovation)

「創業時がぐちゃぐちゃなスタートアップはあとで直せない。238年前のアメリカ建国の瞬間もそうだった。中央政府はどこまで力を持つべきか？議会への代表者をどう配分するべきか？その夏フィラデルフィアで決まった妥協案をどう見るにしろ、そこで決まったことはそれ以降ほとんど変わっていない。」

「その点では企業もまた国家と同じだ。破綻の瀬戸際まで追い詰められない限り、誰もそれを正そうとしない。土台に欠陥があっては、偉大な企業を築くことはできない。」(ピーター・ティール)(1)


↑創業時がぐちゃぐちゃなスタートアップはあとで直せない。

とにかくオカルト的な企業文化と長期なビジョンを大事にするピーター・ティール氏は、事前にあまり計画せずに、少しずつ改善していく、最近流行の「リーン・スタートアップ」は成功しにくいと批判しています。

さらに面接で必ず「賛成する人がほとんどいない、大切な真実はなんだろう？」と尋ね、著書「ゼロ・トゥ・ワン」の冒頭で元マッキンゼーの瀧本 哲史さんが海外のパクリしかできない、日本のバイラルメディアやニュースメディアを批判しているように、とにかく明確なミッションがなく、軽いノリで始める会社を嫌うことでも有名です。


↑軽いノリでとにかく始めるリーン・スタートアップなんて絶対上手くいかない。

最近、日本では大手企業がメディアをどんどん買収していますが、ピーター氏によれば、企業の買収価格は高すぎるか安いすぎるのどちらかで、創業者が明確なビジョンを持っていない場合の買収価格は大抵高すぎることが多く、明確なビジョンを持っている創業者はどんな価格をオファーされても安すぎるので、会社を売却しないんだそうです。

ツイッターがフェイスブックに買収話を持ちかけられ、「いくらなら売る？」という問いに、創業者のビズが思いつく一番大きな数字で「500億円」と適当に言ったら、その話が外に漏れて、数ヶ月ツイッターの企業価値が250億円と投資家に判断されたのは有名な話ですが、いくらお金を積まれても、未来が見えている創業者には安すぎる価格のかもしれません。


↑未来が見えている人にはいくら積まれても安すぎる。

グーグルや他の会社で高額でより高い地位につける人が、20番目の社員としてあなたの会社を選ぶ理由は何でしょうか？

「他社よりストックオプションが高くなる。」

「優秀な人たちと仕事ができる。」

「差し迫った社会問題の解決に役立つことができる。」

ピーター氏によれば、これらはすべて典型的な悪い例で、他社とほとんど変わらないと言います。


↑グーグルからスカウトが受ける人が、あなたの会社に来てくれる理由は何だろう。

ペイパルでは米ドルに代わる新しいデジタル通貨を創るという使命に「興奮」できる人だけが集まりました。

「健康保険のような基本をカバーしたら、あとは他社にできないことを約束すべきだ。それは、素晴らしい仲間と独自の問題に取り組める、替えのきかない仕事のチャンスだ。おそらく報酬や福利厚生では2014年のグーグルに勝つことはできないけど、使命とチームについての正しい答えがあれば、1999年のグーグルになることができる。」（ピーター・ティール）


↑ペイパルでは「他の企業ではできないことができる」と約束した。(Flickr/Ken Yeung)

「スタートアップ」や「起業」という言葉に「興奮」した若者たちが適当に渋谷辺りに集まって会社を作る。

スタートアップはただの流行語、会社はただの手段でしかないはずなのに、中途半端にお金を持っている大人たちも一緒になって、明らかに方向性がずれているように感じます。

もっと別のことに「興奮」できる人が増えたらもっと世の中は楽しくなるのに。

1.ピーター・ティール「ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか」(NHK出版、2014年) Kindle