June 16, 2017
キングコング西野「マネタイズを遅らせると『面白い』の可能性は増える。」今は、それができる時代。

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どれほど良い製品やサービスを作っても、しっかりとマネタイズをしなければビジネスとして成り立ちません。

よくお金の正体は「信用の一部を数値化したもの」だと言われ、インターネットというインフラの発達で、世の中の仕組み自体が大きく変った現在、従来のマーケティングや広告の分野で成功体験がある人と一緒にマネタイズについて考えると、お金が入ってきてビジネスは存続できるかもしれませんが、「面白いもの」が作れるのかと言われれば、それはまた別のような気がしてしまいます。


↑成功体験がある人が入るとマネタイズはできるかもしれないが、本当に「面白いもの」は作れない

芸人の枠を越えて、絵本作家や上場会社の顧問など様々な領域で活躍するキングコングの西野亮廣さんはノーギャラで個展を開き、毎日、お客さんの悩みを聞いたり、芸をしたりして信用を積み重ねた結果、最終的にクラウドファンディングで1000万円以上が集まった自身の経験から、「マネタイズのタイミングを後ろにズラすと『面白い』の可能性は増える」として次のように述べています。(1)

「クリエイターの信用とは何か?相手を楽しませることだ。とても面白い時代だと思う。

これまでは給料(ギャラ)という方法でしかマネタイズできなくて、そのルールの中で動く以上は給料(ギャラ)を支払う側の都合の中で活動しなきゃいけなかったんだけど、マネタイズのタイミングを後ろにズラすことができる時代になったので、照準をお客さんに絞って、『お客さんを楽しませる』ということを、より純粋に追求できるようになった。徹底的に楽しませて、信用の面積を広げれば、後でいくらでもマネタイズできる。マネタイズのタイミングを後ろにズラすと『面白い』の可能性は増える。そして今は、それができる時代。」


最初は、休日なしで朝8時から夜中まで働いたとしても、「ラーメンが食べられるくらいの利益」が稼げれば大丈夫


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20年前の世界トップ企業500社の上位100社は、鉄鉱石や石油などの天然資源を何か別のモノに変える会社でした。

しかし、現在のトップ企業100社の中には宇宙産業や自動車、化学、食品、そして重工業などのモノをつくる会社は32社しか含まれておらず、それ以外の68社は資源ではなくアイデアを加工して、そこから利益を生み出しているのだと言います。(2)

アイデアというものを「仕事」としてプロが提供すれば、その時点でお金が発生しますが、アマチュアが無料でアイデアを出せば、様々なプロセスをスキップして、アマチュアがいきなりプロと同じ市場に立てることになります。そういった意味で、収入よりも注目される方を大切にしたいという人が無料で何かを奉仕するというのは、十分理に適った行動とも言えるでしょう。


↑マネタイズを少し後ろにズラせば、いきなりプロと同じ市場に立つことができる

AirbnbやDropboxなど数年で何十億ドルもの価値を持つサービスを生み出した起業家育成スクール「Yコンビネータ」の創業者ポール・グレアムは、長期的なことを考えれば、最初の数ヶ月は休日なしで朝8時から夜中まで働いたとしても、「ラーメンが食べられるくらいの利益」が稼げれば十分で、利益なんかよりも、使ってくれるユーザーが増えることの方が何よりも大切なのだと言います。(3)

マネタイズを先延ばしするということは、ビジネスマンにとっては「生産性の敵」かもしれませんが、アーティストやクリエイターにとっては、「創造性の源」になります。

ビジネススクールの最高峰ペンシルベニア大学ウォートン校の教授アダム・グラントも、最も成功している組織を運営する責任者は仕事にとりかかる前に時間を徹底的に無駄にすることが多いのだそうです。

また、全米で最もスマートだった高校生たちを対象に、彼らが30代になってから行われたインタビューでは、その中の67パーセント以上が通常の仕事やクリエイティブな作業ですぐに判断を下そうとせず、先送りをしていたことを認めました。(4)

 ザッカーバーグ「ヤフーから1000億円の買収を断ったら、多くの従業員が辞めてしまった。」


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さらに、一流の作家になると書籍のアイデアが浮かんで、本を書き、それが売れて事実上マネタイズするまでには途方もない時間がかかることになります。

村上春樹さんは「騎士団長殺し」というタイトルが浮かんでから、そのアイデアを半年〜2年ほど醗酵させるために寝かせて、それから2年ほどの歳月をかけて小説を完成させたそうですし、村上龍さんは小説「半島を出よ」を書き始めるまで、約10年の構想期間を必要としました。(5) (6)

村上春樹さんは自身のエッセイの中で次のように述べています。(7)

「『時間によって勝ち得たものは、時間が証明してくれるはずだ』と信じているからです。そして世の中には時間によってしか証明できないものもあるのです。

もしそのような確信が自分の中になければ、いくら厚かましい僕だって、あるいは落ち込んだりするかもしれません。

でも『やるべきことはきちんとやった』という確かな手応えさえあれば、基本的に何も恐れることはありません。あとのことは時間の手にまかせておけばいい。」



↑時間によって作られた「面白いもの」の価値は、必ず、必ず時間が証明してくれる

クリエイターや面白いことを考える人達にとって、「マネタイズ」という言葉は、吸血鬼にとってのニンニクみたいなものでしょう。(8)

好きなことで生きていこうと思えば思うほど、面白さを追求しようと考えれば考えるほど、お金とは真剣に向き合っていかなければなりません。しかし、お金の本質を理解せず、すぐマネタイズをしようとすれば、様々な可能性がただの現金に変わってしまいます。

マーク・ザッカーバーグは2006年にヤフーがフェイスブックを約1000億円で買収を提示した時、取締役会にやって来て「オッケー、 じゃ、 形式だけ、 ちゃちゃっと10分以内にすませちゃいましょう。ここで売るとかありえませんよね」と言ってオファーを蹴りましたが、それから、約1年足らず多くの従業員が辞めてしまったそうです。


↑お金の本質を理解せずにマネタイズしてしまうと、「面白いもの」がただの現金に変わってしまう

10年後、ザッカーバーグは当時のことを振り返り、「ヤフーが数千億のオファーをしてきた時が最も困難な時期だった」として、次のように述べています。

「ヤフーが大金をオファーしてくるまで、僕たちはただ毎日集まって、次の正しいステップは何かを考える日々でした。(中略) そして、ヤフーが価値のあるオファーをしてきたわけですが、その時(フェイスブックには)1000万人ほどのユーザーがいて、まだこれ以上成功するかなんて全然分かりませんでした。」

その時初めて、自分たちの未来についてしっかり考えたんです。社内では投資家なども交えて、興味深い議論をたくさん行いました。

最終的に私とダスティン(フェイスブック共同創業者)は、1000万人以上のユーザーとつながること、もっと他の学校にもフェイスブックを広めることを決意したのですが、この頃は、すごくストレスが溜まる日々でしたね。なぜなら、多くの人は会社を売ると思ってましたから。」



↑1000億円のオファーを蹴ったことで、現在の企業価値は35兆円以上

恐らく、マネタイズを後ろにズラして与えた価値の複利は、その後、何倍にもなって返ってくるのでしょう。

人間は心理的に今まで有料だったものが急に無料になると、今までよりもクオリティーが下がったんじゃないかと考えてしまいますが、最初から無料であればそうは思わないのだと言います。

確かに、レストランで無料で提供されている醤油や塩の質が低いと考える人はまずいないでしょうし、フェイスブックやグーグルが誰も悪いものだと思われていないのは最初から無料で提供されているため、それらと比較する対処物があまり見当たらないからなのです。

フェイスブックは1000億円というマネタイズを少し遅らせたことで、それが350倍の35兆円になっていますし、やはり昔話みたいに思われるかもしれませんが、やはりマネタイズを我慢して、面白さを追求し、価値を与え続けたものはしっかりと返ってくるものなのでしょう。

少なくても、今は「返ってくること」を信じながらビジネスができる時代なのです。

P.S

利益はとりあえず先延ばしにして「面白いもの」を作っている方や企業様で、インタビューさせていただける方を探しております。規模や業種、そして都会・地方などは問いませんので、もしインタビューさせていただける方や企業様など、いらっしゃいましたら、ぜひこちらからご連絡下さい。


参考書籍

1.西野 亮廣「魔法のコンパス 道なき道の歩き方」主婦と生活社、2016年 P(P91〜P92) 2.クリス・アンダーソン「フリー 〈無料〉からお金を生みだす新戦略」NHK出版、2009年 kindle 3.リー・ギャラガー「Airbnb Story」日経BP社、2017年 Kindle 4.アダム グラント「ORIGINALS 誰もが『人と違うこと』ができる時代」三笠書房、2016年 Kindle 5.川上 未映子・村上 春樹「みみずくは黄昏に飛びたつ」新潮社、2017年 Kindle 6.藤原 和博「本を読む人だけが手にするもの」日本実業出版社、2015年 Kindle 7.村上 春樹「職業としての小説家」新潮社、2016年 P157 8.ベン・タロン「夢とスランプを乗りこなせ――ぼくがクリエイターとして生きていく方法」英治出版、2016年 Kindle

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