April 18, 2015
TPP調印で、日本は世界政府の奴隷になる

数年前に比べてTPPに関する議論はあまり聞かなくなりましたが、「開国/鎖国」、「内向き」、そして「日本は遅れている/乗り遅れるな」など、TPP賛成者にはお決まりのセリフとともに、提携してしまえば二度と後戻りができない条約に、日本政府はサインをしようとしています。

内閣官房の資料によれば、TPP参加意義の一番の理由はGDP増加で、二番目に挙げられているのが、「国を開く」という強い意思を示すメッセージですが、日本は別に鎖国などしていませんし、コメなどの一部の品目を除けばかなり開かれた市場になっています。

このような何の根拠も戦略もない精神論でTPPに参加すれば、逆に日本の交渉の立場を圧倒的に弱くし、最終的には自分たちの国のことも自分たちで決められない状況を作り出してしまうことに多くの人が気づいていません。


↑「開国」、「自由競争」という何の戦略もない精神論が最悪の事態を招く (CSIS)

TPPに関する議論は、「海外から安い農産物が入ってくるため、日本の農業が大きな打撃を受ける」や「輸出時の関税が下がることで、海外市場に参入できる」などといったものが多いですが、それはほんのごく一部の話であって、このTPPという経済連携協定の裏で、民主主義に選ばれていない、ごく一部の多国籍企業や資本家に有利な仕組みが構築され、国境を越えて絶大な力を持つ、事実上の世界政府が作られようとしていると、認知科学者の苫米地英人さんは指摘しています。


↑ワンピースの世界ではない。本当の世界政府が作られようとしている (Joaquin Villaverde)

TPPは関税の即時撤廃を求め、例えばコメなどの関税撤廃の例外を認めないという意味では、現在よりも急進的な貿易自由化を目指すものですが、TPPの一番怖いところは、交渉に参加するごく一部の人以外、交渉の内容はもちろんのこと、合意した内容まで誰にも教えてはいけないことになっており、例えば国会議員であっても、守秘義務を約束した特定の関係者以外、内容を知ることができず、決まったことでも4年間は誰にも明かしてはいけないことになっています。(TPPで日本支配をたくらむ者たちの正体)


↑TPPの内容はごく一部の人しか知ることができず、その内容は4年間は明らかにされない (Glenn Pope)

オリンピックをイメージすれば分かりやすいかもしれませんが、オリンピック委員会はアスリートやファンの投票によって決まるものではなく、ごく一部の人たちによる密室談合によって決められ、世界のスポーツ界に絶大なる権力をふるい続けます。

民主的に選ばれていない人たちは、世界統一のルールでやっているのだから公平だと述べるかもしれませんが、階級制を取っ払い、明日から体重100キロと40キロが同じリングで戦うということになれば、それは明らかにおかしいと思う人たちが圧倒的に多いのではないでしょうか。

自由貿易が悪いという意味ではなく、TPPもオリンピックと同じ原理で、まったく民主的に選ばれていないごく一部の企業とグローバルな資本家たちが、世界のルールを勝手に決めてしまおうとしています。


↑世界統一ルールと聞いたら、まず警戒しなければならない (UK in Israel)

TPPによって関税が廃止されると、そこは弱肉強食の世界になり、すでに力の差が歴然と開いている中では、巨大な資本を持つものが圧倒的に有利になります。

もちろん、TPP賛成者が言うように世界の市場に打って出て、新しいマーケットを獲得できる可能性はありますが、逆に日本の市場を全滅させられた上に、海外の資本が一気に入ってくる可能性もあり、むしろそちらの可能性の方が圧倒的に高いのではないでしょうか。


↑TPPに参加すれば、日本の市場は全滅させられる可能性が高い (WorldSeriesBoxing)

韓国とアメリカは米韓FTAという自由貿易協定を結んでいますが、これを結んだ結果、韓国企業は次々と外資に買われ、銀行まで外資の手の中に落ちてしまいました。

つまり会社自体は韓国にあって、働いている人たちは全員韓国人でも株主はすべて外資なので、韓国の人たちが働ければ働くほど、外資が儲かる仕組みになっており、国民の生活は一向によくなる傾向はありません。

元農林水産大臣の山田正彦さんはアメリカで国務省の人から、「TPPでは日本に米韓FTA以上のものを求める」と告げられたと述べています。


↑TPPに参加すれば、外資のために毎日せっせと働くことになる (tokyoform)

さらに、TPPの経済協定を結ぶことで、日本に大量の遺伝子組み換え作物が入ってくることは間違いなく、今後は「遺伝子組み替え作物ではない」と表示することも禁じられ、農産物は原産地すら表示できなくなる可能性があり、「国産のものは安心だから、国産を買おう」ということすらできなくなってしまいます。

実際、アメリカでは一応安全だということになっている遺伝子組み替え作物を差別することになるとして、「遺伝子組み換え作物かどうか」を表示することを禁止されているそうです。


↑TPP参加で、日本の食生活は急変する (stu mayhew)

アメリカの企業で、遺伝子組み換え作物分野では最大手と言われる、「モンサント」という企業があります。

モンサントは殺虫剤や除草剤も作っており、ベトナム戦争時にはあの枯葉剤を作っていた会社ですが、TPPによって経済協定が結ばれれば、間違いなくモンサントの遺伝子組み換え作物が日本に入ってくるでしょう。

住友化学はこのモンサントという会社と業務提携していますが、この住友化学の会長、米倉弘昌氏は、日本経済に大きな影響力を持つ経団連の名誉会長でもあります。

経団連は日本のTPP参加を強く支持しており、政治家に圧力をかけて、TPP参加を進めようとしていることを考えると、住友化学が業務提携しているモンサントの遺伝子組み換え作物が日本に入ってくれば、住友化学も儲かると考えているのは明らかでしょう。


↑TPP参加で、モンサントの遺伝子組み換え作物が日本に大量上陸 (Die Grünen Kärnten)

もう一つTPPの問題点として、元農林水産大臣の山田正彦さんはインターネットの規制と著作権を指摘していますが、TPPに参加することで、新聞に載っていた記事をFacebookにアップしたら、それも著作権侵害とみなされる規約が作られる可能性があり、多国籍企業やグローバル資本にとって都合の悪いことは、「シェア」自体が違法行為とみなされます。

現在、インターネットの規制は緩く、口コミが広がりやすい状況にありますが、グーグル会長であるエリック・シュミットも、「政府はいずれ仮想世界でも、現実世界と同等の力を持ちたいと考える。」と述べている通り、インターネットも「著作権」という名目で規制される可能性があるのです。


↑インターネットが規制されたら、真実を伝えることもできなくなってしまう (mkhmarketing)

政治家や一部の企業人は「自由競争」、「自由貿易」と大きな言葉を使ってごまかしますが、それはやってよい分野とやってはいけない分野があります。

例えば、アメリカのように貧乏人は質の悪い医療、お金持ちに最高の医療、もしくは警察が「あなたからはお金を貰っていないので泥棒を捕まえることはできません。」と、すべての警察がセコムのようになってしまう世界が本当に私たちが望んでいるものでしょうか。


↑警察、病院、「自由競争」にして良いものと、悪いものがある (Thomas Hawk)

TPPは農業や関税に焦点が当てられていますが、実際は「トロイの木馬」で、参加したら中に敵がたくさん隠れていて、一度踏み入れたら抜け出せず、あとは好き放題やられてしまう可能性があります。

日本の文明開化の指導者として知られる福沢諭吉は「学問のすすめ」の中で、世間の情報に流されず、自分の頭で考え、議論を盛んにすることの大切さを説き、一個人が独立した意見をしっかりと持つことで、新の独立国を作ることができると考えました。


↑周りの意見に流されず、自分の頭で考える大切さ (Naoya Fujii)

しかし、現在の日本はメディアという世論に流され、少数派の意見に耳を貸そうとしないばかりか、自分のことに精一杯で、今後の日本について本気で議論しようとする人がどんどん少なくなっているように思います。

福沢諭吉は鎖国を批判し、日本が世界に対して「開国」することで、世界と肩を並べる国に成長すると信じたナショナリストでしたが、皮肉なことにそれから140年後の現在、福沢諭吉が望んだ「開国」という名のもとに、日本の独立や国益が失われていこうとしているのですから、こんなに悲しいことはありません。


↑開国の名のもとに、日本の独立がどんどん失われていく (stuart anthony)

TPPは意思決定力のない日本が、アメリカの思惑通りになっていくという、いつものパターンに思われがちですが、アメリカ議会の134名がTPPの反対に署名しており、国という領域を超えて、多国籍企業とグローバル資本に有利な仕組みを作ろうとする、「世界政府樹立」をおかしいと感じている人たちが、アメリカ国内にも少なからず存在します。

これは民主的に選ばれた人でもなければ、その国に税金すら納めていない人たちに巨大な権限を渡すか、それとも渡さないか、つまり「民主主義vs非民主主義」の戦いでもあると言えます。

私たちの未来を大きく左右する、こんな大切な決断が大して議論されることもなく、「第三の開国」という簡単な精神論だけで進んでいることにもっと脅威を感じるべきなのではないでしょうか。

正しいか、間違っているか、賛成か反対は世論やメディアではなく、自分自身が決めていくべきです。

※今回の記事は苫米地英人さんの「TPPで日本支配をたくらむ者たちの正体」「アベノミクスを越えて」、中野 剛志さんの「TPP亡国論」「TPP 黒い条約」を参考にしました。私たちが知らなければならない事実が多く書かれていますので、ぜひ読んでみて下さい。

Eye Catch Pic by G.S. Matthews

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