October 12, 2016
ソーシャルメディアで世界一稼いだ男「SNSはBtoCよりBtoBの方がセクシーだ。」

毎年、多くのWebマーケティングの手法が海外で生まれ、少し遅れて日本に輸入されてきます。多くの手法はBtoC、言わゆる一般消費者をターゲットに考えられたマーケティング手法が中心で、何百万、何千万円というお金が動く可能性があるBtoBの市場では、まだまだWebマーケティングの信頼性は薄いのかもしれません。

しかし、現在までに考えられたマーケティングの歴史を紐解いていくと、BtoBマーケティングはBtoCより少し遅れてトレンドに対応する傾向があり、現在BtoCで頻繁に活用されているソーシャルメディア・マーケティングやコンテンツ・マーケティングをBtoBの市場で活用する企業が欧米では増えてきています。
過去年での購買のプロセスは大きく変わり、今まで何か困ったことがあったり、必要なものがあれば、製品を取り扱っている会社に電話をして情報を仕入れていましたが、現在は自らオンラインでリサーチをして、ソリューションを自分で見つけ出すことができます。


↑電話なんかしなくてもWeb上でソリューションは見つかる。

日本ではまだまだKPIやROIなど、エクセルを使って細かく数値を分析をするBtoCを中心としたWebマーケティングが中心で、長期的に戦略を組み、長い目でしっかりと企業間の信頼を築くというBtoBのWebマーケティングが浸透していません。オンラインでもオフラインでも同じことですが、BtoBの企業間では一度の取引で大きなお金が動き、多くの人が決断のプロセスに関わるため、
信頼関係の構築にBtoCよりもかなり長い時間がかかります。

Eloquaというマーケティング会社がBtoBの企業を中心に行った調査によれば、企業内でソーシャルメディアの担当を任されている部署は企業によって大きく異なり、広報がソーシャルメディアを運営している企業が全体の26%、それぞれの部署が少し担当している企業が23%、Webチームが担当している企業が11%、そしてどの部署が担当しているわけでもなく、とりあず続ける企業が23%とまだまだBtoB内でのWebマーケティングを戦略的に活用している企業は少ないようです。


↑まずWebに詳しい人がソーシャルメディアを運営することは根本的な間違い。

BtoBのWebマーケティングは企業間で信頼関係を築くために比較的長い時間を必要としますが、BtoCに比べてターゲットとする人数が圧倒的に少ないため、根気よく続ければ、企業間でのパイプを強くし、Web内で自分たちのブランドを確立し易いのが特徴です。以前フォーブス誌がソーシャルを使ったセールスは対面で直接会ってセールスをする方法に比べて効率が悪いと指摘した記事を出しましたが、 BtoB専門のマーケティングコンサルタント、Tom Skotidasさんはその記事に対して次のように述べました。

「ソーシャルメディアはセールスのプロセスを促進させるものだ。次の5年でほとんどのBtoBマーケターがソーシャルメディアを使うことになり、これが大きな転換点になるだろう。」


↑マーケティングコンサルタントのJay Baerさん「BtoBはターゲットが少ないから、ブランド力を広げやすい。」

さらにソーシャルメディアで世界一稼いだ男、ゲイリー・ヴェイナチャックさんはスタートアップ企業こそBtoBをターゲットとしたソーシャル・マーケティングをしていくべきだと主張し、
その理由を次のように述べています。

「グーグルやマイクロソフト、そしてオラクルなど巨大企業が買収をしながらどんどん成長しようとしている。もしあなたが巨額の利益を得ることを望んでいるならBtoBの市場を意識してソーシャルメディアを活用してくれ。BtoBの市場、そこにお金が集まるのだから。」

ハーバード大学の「Society For New Communications Research」という調査によれば、今後プロフェッショナルの間の意思決定はどんどんソーシャル化していき、伝統的なアプローチはどんどんソーシャルメディアによって邪魔をされていきます。「うちはBtoBのビジネスモデルだから」とWebマーケティングを軽視してきた企業こそ、力を入れていく必要があるのではないでしょうか。

ソーシャルメディア市場で大きなお金が動くのはBtoCではなくBtoB、これからの時代のトレンドになりそうです。

世間に対して言いたいことがあるBtoB企業はソーシャルメディアを使え。

どんな企業でもお金さえあれば、グーグル・アドワーズは買えますが、あなたが所属する業界の動向や専門的なサービスの話は誰でも語れるわけではありません。特にBtoBの市場で情報収集をする人達はクオリティーの高いコンテンツに飢えており、広告を使ってユーザーを集めるのではなく、レベルの高いコンテンツを配信し、そのコンテンツに共感してもらうことでユーザーを
「獲得」していかなければなりません。


↑ユーザーは質の高いコンテンツに飢えている。

BtoCの意思決定は基本的に感情によって決めれますが、BtoBの場合は論理的に意思決定が行われるため、SNSなどを使って栄養を与え続け、意思決定を簡単にしてあげなければなりません。価値の高いコンテンツを提供していくことはもちろんですが、BtoB間であっても個人的な関係をしっかりと築いていくことが大切なのはリアルの世界でもWebの世界でも同じことです。ゲイリーさんはBtoBのソーシャル・メディアの使い方について次のように述べています。

「決済権を持っている人をツイッターやリンクトインでフォローするんだ。そしてグーグルやフェイスブックを使ってその人の趣味や興味のあるものを徹底的に調べる。もし彼がデトロイト・ピストンズの大ファンであることが分かったなら、チームTシャツのリンクを送って上げたり、試合の勝算を祈るメッセージを送って関係を築いて行け。」

「それはクライアントをゴルフや食事に連れて行ったり、家族とフロリダに旅行に行くの同じことだ。コンテンツやストーリーを通じてしっかりとした関係を築いていくことが最終的にセールスに繋がるんだ。」


↑コンテンツを提供することはクライアントとゴルフに行く事と同じ。

あるメディアではこのように個人同士の関係が強くなってくると、従来のBtoBマーケティングが終焉を迎えるのではないかと指摘しています。ソーシャル・メディアを通じてどんどん個人が親しくなっていくと、「会社対会社」という意識はどんどん薄れてゆき、個人的なリレーションによって仕事が進んでいくようになります。

BtoBのマーケティングはBtoCとは大きく異なり、たくさんの人にリーチすることを目的としません。重要なのはGEのマーケティング・ディレクター、Linda Boffさんが指摘する通り、正確な自分の目的に合った人にしっかりリーチすることなのです。

BtoBはリンクトイン、そしてグーグル・プラス

Webマーケティングの業界では、フェイスブックやツイッターなどすべてのSNSプラットホームが「ソーシャルメディア・マーケティング」と言う枠で囲われていますが、フェイスブックやツイッター、そしてリンクトインなど、それぞれに明確な違いがあり、BtoBやBtoC、自分がターゲットにするユーザー、そして提供するコンテンツによってプラットホームを上手く使い分けていく必要があります。

Hubspotのリサーチによればリンクトインのユーザーの50%が会社で決済権を持っているユーザーで、ユーザーの平均年収は約830万円、フォーチュン500に選ばれた会社の重役が唯一アクティブに活動しているプラットホームでもあります。しかし、ビジネスライクの人が多いのは事実ですが、そこでアクティブに活動すれば売り上げが自動的に上がるわけではありません。フェイスブックとリンクトインとの大きな違いはユーザーの属性(リンクトインはビジネスライクのユーザーが集まる)だと思われがちですが、一番の大きな違いはコンテンツのクオリティーです。


↑リンクトインの強みはコンテンツの質。

リアルの世界では人と人とのリレーションがビジネスを生みますが、まだ「人」としての関係がしっかり築けていないオンライン上の関係では、あなたの作るコンテンツの質が信頼を作ります。クオリティーの高いコンテンツを作る以外にもリンクトインでは随時ユーザーがビジネス上で困っていることや解決策を質問しており、その質問を「キーワード検索」して自分なりのソリューションを提供すること、ビジネスに繋がることも多いようです。

例えば、あなたがクラウドストレージを販売している会社であった場合、まずクラウドストレージに関するリンクトイン・グループを作り、そのグループ内でなぜクラウドストレージがビジネスオーナーにとって重要なのかを伝えていくことで仕事に繋げたり、もしくは「浜松市のビジネスオーナー」という形でグループを作り地域単位であなたの存在感をアピールすることもできます。


↑何かを売る前に相手に価値を与える。これはもうWeb業界の常識。

さらにリンクトインのコンテンツはグーグルのページランクに繁栄され、SEOにも効果があり、BtoBを中心としたターゲティング広告を出すことができるめ、問い合わせをもらう確率がフェイスブックに比べて277%も高かったという調査もあります。

Social media Agencyという組織の代表を務めるJason Steinは、リンクトインで5万円の求人広告を出したところ、4日で約400通の履歴書が送られてきて、その中の7人を採用したそうですが、フェイスブックで50ドルの広告費をかけたところ4通の履歴書が届き、その中の1人を採用したそうです。

リンクトインと並んでBtoBの市場で注目を集めているのがグーグル・プラスです。なんと言ってもグーグル・プラスを使う一番のメリットはオーガニック検索でページランクを大きく左右させ、ブログに「1プラス」が付き、グーグル・プラス内でシェアされることでSEOに大きな影響を与えます。さらにグーグル・プラスではビジネス用のページも作ることができ、グーグル・プラスはフェイスブックよりはBtoB向きのプラットホームのような印象を受けます。


↑圧倒的なリクルーティング力を持つリンクトイン。

グーグル・プラスと平行してSEO効果が高いのがGeotaggingで、グーグル・マップとホームページを連動させ、住所を特定させることで、価値の高いページと判断されページランクが上がります。

グーグル・ハングアウトはグーグル・プラスの中でもBtoBマーケターに人気の機能でウェブカメラさえあればリアルタイムの動画デモンストレーションをオンライン上で行なうことができます。ソーシャル・エキスパートのCaria  Froggattさんは次のように話しています。

「時間は本当に貴重だし、忙しいスケジュールの中で時間を調整するのは大変でしょ。もし一度でもそんな経験があるんだったらグーグル・ハングアウトはあなたにピッタリね。」


↑グーグル・ハングアウトは使い方次第ではもの凄く有効なツール。

残念ながら、日本ではリンクトインやグーグル・プラスはフェイスブックやツイッターに比べてまだまだ人気のあるプラットフォームとは言えません。特に欧米人はリンクトインを日々の日常で当たり前のように使い、毎日、数多くのBtoB間のコラボレーションが実現してします。日本の場合、リンクトインを本格的に使い始めると転職を考え始めたと思われ、社内からの視線が変わるといった記事を読んだことがありますが、そんなガラパゴス的な考えは今すぐ脱却しなければなりません。

リンクトインの創業者のホフマンさんによると、リンクトインはセルフプロモーションや職探しをするために機能するものではないと指摘します。自分のプロフィールを公開することで、あなたは会社の顔になり、外部からアプローチしたいと考えている人への貴重な接点になります。その一例として、ホフマンさんはリンクトインのアイデアを思いついた時のエピソードを次のように語っています。


↑リンクトインは職探しのために使うものではない。

「当時、PayPalを日本でローンチするための助言をいただきたくて、MITメディアラボの伊藤穰一さんにコンタクトを取ろうとしたとき、彼とつながるまでに何週間もかかってしまいました。その経験から着想を得て、リンクトインを作りました。いまなら同じことが1〜2週間くらいで可能なはずです。」

リンクトインの普及が日本の非効率な体育会系の営業に取って代われば、営業マンのストレスも減り、もっとクリエイティブなことに時間を使えるようになるのではないでしょうか。フェイスブックも当初、日本人は実名でSNSを使う習慣がなく日本では浸透しないと言われていましたがあっと言う間に広がり、今ではみんな当たり前のように使っています。テクノロジーは一瞬で環境を変え、弱者と強者の立場を一転させることを常に頭の中に入れておかなければなりません。

常に新しいプラットホームに注目し、すぐに使い方を見つけ出してマーケティングに取り入れていくことが、この変化の速い時代を攻略する唯一の対処方法なのかもしれません。

まとめ


↑2020年までに、本当のグローバルの流れに滑り込め。

ソーシャルメディアで世界一稼いだ男、ゲイリー・ヴェイナチャックさんは「信仰者」になることが一番手っ取り早く事業を
失敗させる方法だと述べました。つまり、自分たちの成功しているビジネスモデルがいつまでも続くと思っている「信仰者」はこの速い時代の流れについていけず衰退していくことを意味しています。

欧米では一般の人々がリンクトインをフェイスブックのように使い始め、SNS上でBtoBの取引がどんどん成立し始めています。日本には日本のビジネスのやり方があると頑固になるのは簡単なことですが、今後の日本の国内市場はどんどん狭くなり、どんなに遅くても2020年までに、日本はグローバルの流れに滑りこまなければなりません。

僕たち日本人はフェイスブックを使いこなし、世界中の人達と友達になりました。次のステップとして、友達になるだけではなく、世界中の人達とビジネスをしていかなければならないのではないでしょうか。


↑世界中が日本人の参加を待っている。

最近、僕は海外のマーケティング会社やアプリ会社とやり取りをすることが多いのですが、フェイスブックで友達申請が来ることはほとんどありません。やはりBtoB、ビジネスプロフェッショナル同士の関係はリンクトインで友達申請が来ることが圧倒的に多いです。

フェイスブックを通じて世界中の人と友達になったところで何も始まりません。世界中の人達と本格的なプロフェッショナルとしてビジネスをしていくことで、世界がどんどん豊かになっていくのではないでしょうか。

Eye Catch Pic by Youtube

/BTOB_IS_MUCH_MORE_SEXY_THAN_BTOC_ON_SNS