March 3, 2015
ソニー黄金期のずば抜けたチームカ「秘書が工場でハンダ付け、技術者はヨドバシカメラで店頭販売」

アメリカは個人主義の国なのに対して、日本は集団主義の組織集団だと言われることが多いですが、様々な国籍やバックグランドを持っている人たちが集まるアメリカほど、チームの大切さを理解している国はないのではないでしょうか。

近代化が進むにつれて、自己の利益だけを優先する人たちばかりが増え、日本はアメリカ以上に個人主義の国になってしまったのかもしれませんが、20世紀がドラッカーが述べるような組織社会だとすると、個人が組織という枠を超えて活躍する21世紀は、「チーム社会」であり、異質や価値観、異質な才能、そして異質な文化を持つ人たちが共通の目的のために助け合うことが絶対条件になってくるのではないでしょうか。


↑20世紀は組織社会、21世紀はチーム社会 (hackNY.org/flickr)

アップルのジョブズとウォズニアック、マイクロソフトのビル・ゲイツとポール・アレン、ソニーの井深大と盛田昭夫、そしてホンダの本田宗一郎と藤沢武夫などは、お互いの短所を補い、どちらが欠けても上手くいかない絶妙なコンビでした。

特にホンダは創業者の本田宗一郎さんだけによくスポットが当たりますが、宗一郎さんの技術や情熱に比べて経営の知識は乏しく、お金はいつもどんぶり勘定だったため、会社は常に不安的な状態が続いていました。

逆に藤沢武夫さんは経営の知識は十分にありましたが、なかなか新しいアイディアを考えることができずにいたところ、宗一郎さんに出会い、「本田宗一郎は技術に専念」、「藤沢武夫は経営」というお互いの短所を補うパートナーシップが生まれることになります。


↑世界に「ホンダ」ブランドを広げたのは本田宗一郎ではなく藤沢武夫だと言われている。

人間関係を保つために、思ってもないことを言ったり、上辺だけのコミュニケーションを取る人も多いですが、レントゲン写真を撮ると病巣が見える人間のように、表面上の数字やコミュニケーションだけですべてを判断するのは難しいのかもしれません。

斉藤ウィリアムさんはオン・ザ・エッジ時代の堀江貴文さんのプレゼンを聴いて、財務諸表は売上、利益、利益率などすべての数字で文句のつけようがないほど立派なものでしたが、従業員やチームのことに対して一切触れなかったことに対し、直感的におかしいと感じたと述べていますが、「あなたの弱点はなんですか?」という質問に対し、上手くごまかそうとせず、正直に答えられる企業だけが長期的に成長していくことができます。


↑企業のレントゲン結果はすぐには出ない。業績が悪化し始めることで、表面化し始める。(Skott Яeader)

アメリカで新しい人を採用する時、「あなたの短所は何ですか?」という質問に対して、すぐに答えられない人は採用しない方がよいと言われますが、人気漫画ワンピースの中で、主人公のルフィもこんなことを述べています。

「おれは剣術を使えねぇーんだ。航海術も持ってねぇし。料理も作れねぇし。ウソもつけねぇ。おれは助けてもらわねぇと生きていけねぇ自信がある!!」


↑ソニーの創業者、盛田さんと井深さん。「誰かに助けてもらわないと生きていけない自信がある。」(japaneseclass)

映画「アバター」の最後のエンドロールには、制作に関わった人の名前がすべて表示されるため、いつまでたっても終わらず、制作費250億円以上をかけたこの映画には、監督に始まり、撮影現場への食事の仕出しスタッフやロケ車の運転手にいたるまで1000人以上の名前が紹介されており、なんらかの形で制作に関わった人はすべて、貢献を公に認められています。


↑関わった人すべてが自分の仕事にサイン(署名)をすることで、最高の作品ができる。(Kempton)

もしあなたがレストランのオーナーで、お店の人気が出てくれば、そのレシピやノウハウなどは一般には公開せず、街のお客さんを独占しようと考えますが、たった人口18万人の街にミシュラン星のレストランが9軒もあるスペインのサン・セバスチャンでは、自分たちのレシピやスキルを独占しようとせず、周りの同業者にどんどん共有することで、世界一の美食都市をたった10年で作りました。


↑ある特定のレストランがお客を独占しても、美食都市は作れない。(Adam Lerner)

チームとは議論や反対を恐れず、「これだけは絶対に譲れないという何か」を持つA級クラスの人がタッグを組むことでイノベーションを起こせる方程式みたいなものかもしれません。

Dragon Ashの降谷健志さんは以前、次のように述べていました。

「俺らすげぇ群れてるイメージあると思うし、ムラっぽいイメージあると思うけど、それはやってることがカッコ良ければどうでもいい話で。やってることがカッコ良いからつるんでいるわけであって。仲間のみんなが同じようなことをやっているわけでは決してないし。クラスメートとは明らかに違う価値観だよね。音ありき、クオリティーありきの仲間のつながりだと思うし。」


↑やってることがカッコ良いからつるむ。クラスメートとは全く違う感覚だよね。(Youtube)

もしかすると、個性が強いチームをまとめるのは、大きな組織型の企業をまとめるよりも難しいのかもしれませんが、Twitterの創業者で、現在いくつもの会社を経営するジャック・ドーシーは、スマホのノート・アプリに「やることリスト」と「絶対にやらないことリスト」を作り、チーム内で共有して、チームの全員が常にそのリストを意識するようにすることが、チーム・マネージメントにはものすごく効率的だと述べています。

「”やることリスト”は本当に簡単に作ることができます。しかし、”絶対にやらないことリスト”にはもう二度やりたくないことを追加していくわけですから、作るのはそんなに簡単なことではありません。」(ジャック・ドーシー)


↑チームを常に健全な状態にしておきたければ、「ノート・アプリ」を使え。(JD Lasica )

楽天の三木谷さん、ソフトバンクの孫さん、そしてファーストリテイリングの柳井正さんなど、日本にはワンマン経営者が多いのは事実であり、日本製品一つ取ってみても、一人の天才プログラマーが8割、9割のコードを書いていることも多いとも言われます。

ソニーの黄金期には秘書課の女性秘書まで、工場でハンダ付けの研修をしていたとも言われ、技術者はヨドバシカメラなどの販売第一線に派遣され、自社製品を売っていたそうです。


↑技術者も秘書も現場の第一線で。(foomtsuruhashi)

日本はサッカーやオリンピックの時期になると「チーム一丸になって頑張る」という言葉が世間を駆け抜けますが、イベントが終わった途端、自己の利益を優先する一個人に戻ってしまうところが、日本企業の弱いところなのかもしれません。

組織よりチームが重視される時代は、何もかも完璧にこなそうとする人より、「おれは助けてもらわねぇと生きていけねぇ自信がある!!」と自覚する人の方が強者なのではないでしょうか。

Eye Catch Pic

/THETEAM