September 23, 2016
スタートアップが失敗する確率は93%「僕らはゆっくり40年間働く代わりに、4年間限りなくハードに働く」

イラスト:リーディング&カンパニー

不況が深刻になればなるほど、安定的な仕事を求めて大学に進学する傾向が強く、アメリカの名門校、プリンストン大学、ハーバード大学、そしてイェール大学などへの申し込みは過去最高になっているそうですが、大手企業でただ毎日、エクセルのファイルを見ているだけのホワイトカラーの仕事は、どんどん無くなっていくのは間違いありません。

ペイパルの共同創業者で億万長者のピーター・ティールは、20歳以下の起業家20人に対して、もし自分のアイデアを追求するために大学を辞めれば、約1000万円の助成金を与えるという制度を設立しましたが、イェール大学在学中にKikoというサービスを立ち上げ、eBayへの売却に成功したジャスティス・カンは、「大学で身に付けた知識とスキルのうち、現在IT起業家として役立てているのは、ごくわずかだった」と述べています。


↑大学で教わったことで、起業家として役立ったことはあまりなかった。(Flickr_hackNY.org)

リーマンショックを経て、企業から個人にパワーがシフトし始めており、スタートアップなどを起業するのは、時代の流れなのかもしれません。しかし、アメリカの起業家養成スクール「Yコンビネーター」の創業者、ポール・グレアム氏によれば、スタートアップの成功は7%しかなく(成功の定義は最低40億円以上の企業価値をつけること)、DropboxやAirbnbなどのように大化けする確率は0.3%ほどしかないそうです。


↑スタートアップが成功する確率は7%、大成功する確率は0.3% (Flickr_EFFIE YANG)

大学をドロップアウトしたり、就職せずにスタートアップに参加することは成功率から考えればかなりのリスクを負うことになり、30倍働いても30倍の報酬がもらえることは当然なく、30倍働いてもらえる報酬はゼロから1000倍の間のどこかになることが予想されます。

アマゾンの創業者で現在は投資家や世間の批判など笑って受け流すジェフ・ベゾス氏でさえ、アマゾンを創業する前、資金を提供してくれる両親に対して、成功する確率は30%しかなく、70%の確率でお金が返ってこないリスクを正直に伝えたと言います。


↑30倍働いてもらえる報酬は、ゼロから1000倍の間のどこか。(Flickr_hackNY.org)

最近、「スタートアップ」という言葉は最近よく聞くようになりました。しかし、これは何も新しい概念ではなく、中世の大航海時代に資本家がスポンサーとなって、新しい大陸を探しに出たことと同じで、スタートアップの創業者は一生分の労働期間を数年間に圧縮する必要があり、ゆっくり40年間働く代わりに、4年間限りなくハードに働く気持ちで創業しなければなりません。

例えば、普通の企業に入って、「10倍働くから10倍の給料をくれ」と言っても通じませんし、国家や両親は40年かけてゆっくり働くことを勧めるかもしれませんが、スピードを意識しないことには技術革新が遅くなるだけではなく、資本や人材、そしてモチベーションを一箇所に集中させ、短期間でレバレッジをかけてアクションを起こさないと、「革新」自体が起こらなくなってしまう可能があります。


↑ゆっくり40年間働く代わりに、4年間限りなくハードに働く。(Flickr_hackNY.org)

ベンチャー企業は経済的にも、自分の自由のためにも、「もっと働きたい」と主張する手段であり、会社を立ち上げたら「どれだけの時間働く必要があるか」は競争相手が決めることになりますが、最終的に行き着くところは「できるだけ多くの時間働く」しかないのではないでしょうか。

Yコンビネーターの創業者、ポール・グレアム氏は次のように述べています。

「これまでに成功したスタートアップはみな、一切脇見をしないチームだった。寝る、食う、運動する以外はプログラミングし通しだった。」


↑ポール・グレアム「当たり前のことかもしれないが、成功する7%に入りたければ、寝る、食う、運動する以外はプログラミングの時間なんじゃないのかい?」(Flickr_JD Lasica)

またドロップ・ボックスの創業者、ドルー・ハウストンは若手の企業家が集まる夕食会で、成功するスタートアップについて言いそびれたことがあったと、次のように話し始めました。

「ブラブラしないこと。成功するスタートアップはミートアップには行かない、アドバイザーたちと話すために走り回らない。ひたすらコードを書き、顧客と話す。」


↑ドロップボック創業者「くだらないミートアップに行って、”タグ”られている暇があったらコードを書け。」(Flickr_JD Lasica)

あるシリコンバレーの起業家は、2ヶ月間で休みが「1日」ではなく、「1回」しかなく、2ヶ月前の日曜日に寝坊して、その日は7時間しか働けなかったことを、みんなの前で恥ずかしそうに話したと言います。

ナイキの創業者フィル・ナイトは、「レストランを開きたいと思っても、厨房で、23時間働く覚悟がないのだったら辞めた方がいい。」と述べていますし、スターバックスCEOのハワード・ショルツは、企業が上手くいかない理由は「市場に負けるのではなく、みずからに負けるからだ。」と断言しているところを見ると、海賊の目とゴキブリのような精神力をを持ち、7%の成功を信じて働き続けるしかないのではないでしょうか。


↑スターバックスCEO「ほとんどの場合、市場に負けるのではなく、みずからに敗北することで事業が上手くいかなくなる。」(イラスト_L&C)

1970年代にスタンフォード大学で、子供の自制能力を研究する実験が行われました。

研究者は子供にマシュマロを与え、「食べるのを我慢できたらもうひとつあげる」といって部屋を出て行き、マシュマロを食べるのを自制できた子供は、その後、大人になっても上手くやっていくことができたという結論が出ています。

恐らくスタートアップを始めるにしても、本当に優秀な人には高額な給料、ストックオプション、そして福利厚生など様々な企業からオファーが届きますが、 今、大きな組織に入ってマシュマロを一つ食べるか、数年間死ぬほど働いて成功し、より多くのマシュマロを手に入れるか、その人のビジョンによって考え方が大きく分かれるのかもしれません。


↑目の前のマシュマロを取るか?それとも数年後、より多くのマシュマロを取るか?(Youtube)

成功する確率は7%、つまり失敗する確率は93%もあるのに、寝る、食う、そして運動する以外はずっと働かなきゃならないし、気休めにセミナーやミートアップに参加することもできない。なぜこのような過酷な状況に立ち向かう人たちがいるのでしょうか?

ある起業家はツイッターの共同創業者であるエヴァン・ウィリアムズやグーグルの初期メンバーが集まる夕食会に参加した時のことを次のように書いています。

「こうした素晴らしい集まりに出席すると、どんなに確率が低くても、やはり成功のチャンスはあるのだと希望が湧いてくる。ごく論理的にいえば、これは偏った考えだ。この夕食会に出席した成功者ひとりに対して、何百人もの失敗者が存在するのだ。しかし、ときには単なる統計を忘れて、自分が何が何でもこれをやりたいからやるのだという気持ちを奮い立たせることも必要だ。」


↑素晴らしい人たちに会うと、どんなに確率が低くても、やはり成功のチャンスはあるのだと希望が湧いてくる。(Flickr_Olaf Janssen)

僕は大学を卒業した後、2つのベンチャー企業に従業員として参加しましたが、現在その二つの会社はもうありません。

そして今度は自分が会社の創業者になりました。「海賊のような目とゴキブリ並の精神力」でどこまで頑張れるのか、20代後半をかけた良い実験になるのではないかと思っています。

来年の今頃も同じことを言える事を信じて。

/UP_TO_YOU