ラリー・ペイジとセルゲイ・ブリンが1998年にグーグルを創業した時、彼らに経営の経験はありませんでしたが、逆にそれを強みにして、いくつかのシンプルな原則に従って、新しい21世紀の働き方を作り出してきました。
2001年から2011年までグーグルのCEOを務めた、エリック・シュミット氏は、すでにノベル社で4年ほどCEOの経験がありましたが、グーグルに入社してすぐビジネスとマネジメントを学び直さないといけないと悟ったそうです。
↑グーグルで21世紀の経営を学び直さなければならなかった。(Pic by Flickr)
シュミットはグーグルに入社してすぐ、設備責任者だったジョージに次のように指示ました。
「ちょっと、オフィスを掃除してくれる?壊れた自転車やおもちゃで部屋じゅうゴミだらけじゃないか。」
ジョージは指示通り、ある夜チームを率いて、オフィスを奇麗に掃除しましたが、次の日ラリー・ペイジからメールが届きます。
「僕のゴミをどこへやった?今すぐ元に戻してくれ!」
↑元に戻してくれ!今すぐにだ! (Pic by Flickr)
時代が移り変わるにつれて、経営の根本的な概念がシフトしているのかもしれません。
ミネソタ大学の調査によれば、部屋を奇麗に片付ける人たちは基本的に人間関係がしっかりしていて、健康的な食事を意識したり、慈善事業などにも興味を示す傾向があるそうですが、部屋を散らかしたままにしている人たちは新しいものを作ったり、クリエイティブなアイデアを出す人が比較的多いんだそうです。
↑シュミットはすぐにその意味を感じとった。(Pic by Flickr)
さらに世の中には、ワークライフ・バランスという言葉がありますが、グーグルのように常に世界を変えようと意識し、優秀でやる気のある従業員に対しては侮辱的な言葉に聞こえるのかもしれません。
グーグルの20人目の従業員として入社し、現在はヤフーのCEOを務めるマリッサ・メイヤーさんはグーグルで週168時間のうち、130時間働いたと述べていますが、本当にビジョンが高い企業は、彼女のような良い意味で「働き過ぎる人」が気持ちよく過ごせる職場環境や企業文化を準備しなければなりません。
↑ワークライフ・バランスなんて私の中には存在しない。(Pic by Flickr)
スポーツ施設や食堂など、グーグルの福利厚生はよく話題になりますが、この考え方は創業者の母校であるスタンフォード大学の寮から誕生したもので、すなわち世界トップレベルの学生が1日の大半を死ぬほど本気で勉強するような職場を作りだそうとしていました。
↑130時間(週7日で1日18時間)働きたい人には夢の楽園 (Pic by Flickr)
また、あまり知られていませんが、グーグルには「150フィート・ルール」というものがあり、オフィスのどこにいても150フィート(45メートル)以内に食べ物にありつけるようにオフィスが設計されています。
これは食べ物をフックにして雑談を増やし、そこからイノベーションを起こすという戦略の一つらしいのですが、それは約60年前に行われたあるリサーチを参考にして考えられました。
1950年、マサチューセツ工科大学の寮で、人間関係がどのように構成されていくのかという調査が行われました。
この調査によれば、「親友は誰か?」という質問に対し、約41%の人が隣の部屋の住人だと答え、部屋が遠くなればなるほど、その数は減っていったそうです。この調査によって、次のような結論が導きだされました。
↑人間関係はどのように構成されていくのか。(Pic by Flickr)
「一般に、人が友人になるのは、互いの考え方が似通っていたり、共感できたりするからだと考えられていますが、実際には、人は顔を突き合わす回数が多いと、互いの考え方が似通ってきて友達になるのではないか。」 (Googleの哲学 P183)
このリサーチからグーグルは食べ物をフックにして、同僚といつでも雑談や打ち合わせができる環境を整えているそうです。
↑イノベーションは考えられた仕組みから生まれる。(Pic by Flickr)
グーグル創業者の二人は会社を経営したことがないことを強みだと捉え、ゼロから21世紀の経営スタイルを作り出しましたが、20世紀と21世紀では、求められるモノが違うように、それを生み出す行程が違ってくるのも当然なのかもしれません。
オフィスは散らかっていたほうが良いと言ったり、雑談を勧誘するような仕組みは、年配の人から怒鳴られそうですが、ここ数年で急成長している企業は、どこも新しい「21世紀の経営」にシフトしていっているように思います。
生き残れるのは強い者でも、賢い者でもありません。時代の変化に柔軟に対応できる者だけ次の時代へ進めるのではないでしょうか。
(Eye catch Pic by Flickr)