April 17, 2017
ジョブズにはなれない。でも、もう一人の創業者、ウォズニアックには努力次第で99%の人達がなれるだろう。

アップルの共同創業者であるスティーブ・ウォズニアックの「はたらいて、笑おう」のキャンペーンは、ウォズニアックが本当に人の役に立つことに喜びを感じ、裏も表もなく、働くことが心から大好きだと言う感じが彼の表情から伝わってきます。

日本を含めた世界中の人は、ウォズニアックではなく、アップルのもう一人の共同創業者、スティーブ・ジョブズからクリエイティビティの本質を学ぼうとしますが、ほとんどの人は、刺激的なエピソードや格好のいいところだけを真似るだけで、世の中には、「ジョブズっぽいが、ジョブズではない人」がどんどん増えてきています。(1)

よく、「1%の才能と99%の努力」の逆説的な意味として、1%の才能がなければ、99%の努力が水の泡になってしまうと言われ、かのビル・ゲイツもジョブズの美的感覚は自分には真似できない、ジョブズの考えの応用はごく一部に限られるとして次のように述べています。(2)

「スティーブのようになりたいという人は、だいたい、くそ野郎部分は実現するんですよ。足らないのは、天才の部分です。」

同じアップルの創業者で、名前は同じスティーブでも、ストレスまみれの生活を送りながらも時価総額世界一の企業を作ってしまうジョブズと、誰かに仕事を頼まれれば、いつでもジョークを飛ばしながら無償で手を貸したウォズニアック、今から考えれば、どちらの人生が幸せだったのかは分かりませんが、別に世界なんて変えなくても、仕事に対していろいろな価値観があってもいいのではないでしょうか。

ウォズニアックも自分とジョブズとの違いはしっかりと分かっていたのでしょう。(3)

「最終的にアップル1ボードになるものを作り始めたころ、同じに日に死ぬ二人の男のことが頭に浮かんだ。片方は成功者。会社を経営し、いつも目標の売上げを達成し、利益を出し続けるんだ。 」

「もう一人はのらりくらりとしてて、お金もあんまり持ってない。 ジョークが好きで、世の中でおもしろいと思うこと、変わった装置とかテクノロジーとか、なんかかんかを追っかけ、ただただ笑って人生を過ごすんだ。」

「物事をコントロールする人より、笑って過ごす人のほうが幸せだって、僕は思う。それが僕の考え方なんだ。僕は、人生で一番大事なのは幸せであり、どれだけ笑って過ごせるかだと思うんだ。 頭がちょっといかれたようなヤツのほうが幸せなんだ。僕はそういう人間だし、そうなりたいとずっと思ってきた。」

ウォズニアックはジョークが大好きですが、ユーモアのセンスとは、夢と現実のギャップから生まれると言いますし、イギリスのミュージックであり、映画監督でもあるドン・レッツも「遊びが仕事になったとき、文明の最高峰に達したということだ。」という言葉を残しています。(4) (5)

別に時価総額世界一の会社を経営しなくても、遊びが仕事になって、働くことで笑うことができるのであれば、すでに人類の文明化では最高峰に達したということなのでしょう。

日本人が本当に見習うべき人は、ジョブズではなく、ウォズニアックなのかもしれません。

■参考書籍

1.成毛 眞「成毛眞のスティーブ・ジョブズ超解釈」ベストセラーズ、2012年 P14 2.ブレント・シュレンダー/リック・テッツェリ「スティーブ・ジョブズ 無謀な男が真のリーダーになるまで(下)」日本経済新聞出版社、2016年 Kindle 3.スティーブ・ウォズニアック「アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝」ダイヤモンド社、2008年 4.スティーブン・ピンカー/ マルコム・グラッドウェル/ マット・リドレー「人類は絶滅を逃れられるのか―――知の最前線が解き明かす』明日の世界』」ダイヤモンド社、2016年 Kindle 5.ベン・タロン「夢とスランプを乗りこなせ――ぼくがクリエイターとして生きていく方法」英治出版、2016年 Kindle

/WOZNIAK