May 25, 2017
矢沢永吉「20代で苦労した者だけが30代で夢の世界を見ることが出来る」人生の80%は35歳までに決まる。

イラスト by リーディング&カンパニー

アメリカの心理学者、メグ・ジェイさんによれば、20代は人生の中で最も重要な10年間で、人生を決定づける出来事の80%は35歳までに起こり、2/3の収入の伸びは、初めて仕事についてからの最初の10年間で決まってしまうのだそうです。

大抵、20代の人達はとにかく自分の好きなことをやって、30代になってから人生について真面目に考えればいいだろうと思いがちですが、ほとんどの場合、20代で行なっていた事は30代で少し軌道修正される程度で、ほとんど変わりはせず、なにげに過ごしている20代の瞬間瞬間が将来にまで大きく影響し、人生の大部分を決めてしまっていることに多くの人は気づいていません。(1)


↑一生を語る上で、重要な体験のほとんどは20代で起こる。

近年では、不況などの影響もあって、キャリア設定や人生でやりたいことを決めることを先送りする傾向があります。

確かに日本経済の成長が一段落して、比較的時間に余裕ができ、仕事、結婚、そして出産など、人生において大事なことを先送りできるようになりましたが、これは宿題の提出日が3週間伸びても、「よし!時間に余裕があるから宿題のできを3倍良いものにしてやろう」と考えるのではなく、提出日の前日から始めて、むしろ期限のプレッシャーに追われてしまうことで、クオリティーが落ちてしまうのと同じように、人生でも「時間的な余裕=物事を先延ばしできる」というわけではないようです。



現代の若者は「落ち着くのが早すぎた世代」から、「取りかかるのが遅すぎた世代」になりつつある。

冒頭のメグ・ジェイさんによれば、物事の決断を急がず、フリーターなどをしながら、自分の気持ちが高まってくるのを待つことは、将来の可能性をオープンにしているようで、実際には将来の可能性を確実に狭めていると言います。

そして、20代も終わりに近づいてくる頃には、何もやり遂げていない自分に失望して、少しずつモチベーションを失しないながら、周りや世間のプレッシャーに負けて、10年前は夢を語っていた人達も徐々に普通の人になっていくことになります。

実際、厳しい言い方をすれば、自分のやりたいことが分からず、自分探しの旅や様々なセミナーに行くような人達は、自分を変えるために何か具体的な努力をしようとせず、ただ環境を変えることで、自分のやりたいことが石ころみたいに見つかると思っているという考え自体が、極めて幼稚なのだと言わざるを得ないでしょう。(2)


↑物事の決断を急がず、自分探しなどをすることは確実に将来の可能性を狭めている。(Keith Parker_CC)

恐らく、20代を過ごす上で大切なことは、何か大きな結果を残したりすることではなく、何かを真剣に「始めること」です。

日本マイクロソフトの代表を勤めた成毛眞さんは、ついこの間まで空回りしていた人が、35歳ぐらいから急に頭角を現すのは、25歳〜35歳で、24時間仕事×365日×10セットをきちんとやった人の賜物なのだとして次のように述べています。(3)

「たとえば、水に一定量の熱をずっと加えつづけていれば、させる気がなくても、勝手に沸騰する。仕事というものもこれに似ていて、20代のうちというのはたとえ結果が出なくても、とにかくずっと仕事をしつづけてさえいれば、30代になると、自動的に沸点を迎えるのだ。」

「複雑で体系化不可能なものも、量をこなしていくことで要領を得ていく。そのために必要な時間が、25歳からの10年間なのだ。」


↑30代で活躍できるのは、20代で「24時間仕事×365日×10セット」をしっかりやった人だけ。

20代では長期的な目標と短期的な目標を同時平行で考えていく必要があります。

短期的な目標に関しては、もちろん土日を含めた「24時間仕事×365日×10セット」をできるだけ速いペースで繰り返す必要がありますが、長期的な目標に対してはひたすら我慢する必要があり、残念なことに長期的な目標は、どれだけ頑張っても、20代のうちに劇的な結果を得ることはできないことでしょう。

父親のワイン屋を引き継ぎ、売上4億円から50億円に増やし、その後、SNSで最も稼いだ男と言われているゲイリー・ヴェイナチャックは大学を卒業したばかりの女性に次のようなアドバイスを送りました。

「オレは自分の20代のすべてを仕事に捧げた。想像してほしい。明日からの8年間、何も楽しいことがなく、どこにも行かないという苦痛の日々を。もちろん、土日も含めての話だ。それをオレはやり遂げた。毎日15時間働いて、ワインのことだけを考えていた。」

「先週の土曜日と日曜日、あなたが働いていない時間は何分あった?本当のことを言ってくれ。たくさんあっただろ?そう、あなたの先週の土曜日と日曜日の休憩時間は、オレの20代の10年間の休憩時間をすべて合わせた休憩時間時間よりも長いんだ。」

「一つだけ頼みがある。もしあなたが本当に成功したくて、8年後にニューヨークに来て、オレと握手がしたいのなら、こうすべきだ。まずは周りの人がどうだとか、誰が何を持っているとか考えるのはやめろ。」

「次の10年ひたすら働け。新しい車、スーツケース、ジュエリー、旅行、イベント、新しいスニーカーはなどはすべて諦めて働け。働けば、そんなもんはいくらでも手に入れてられる。そうゆう余分なものを気にすればするほど、あなたの目標達成はどんどん遅れていく。」


↑あなたの週末の休憩時間は、オレの10年間の休憩時間よりも長い。(Gary VaynerchukのYoutubeより)

望みの人生を手に入れるために、20代で目標に向かって動きだせば、30代でスタートするよりも安易に目標を達成できます。

ところが、20代にすべきことをたくさん残してそのままにしておくと、30代では巨大なプレッシャーがのしかかってきてしまい、矢沢永吉さんも「20代で苦労した者だけが、30代で夢の世界を見ることが出来る」とした上で次のように述べています。

「20代頑張ってない奴は、パスポートもらえないんだよ。パスポートにちゃんと判をぴたっと押してもらわないと、30代入れないから。だから、オレ『泣くなよ』っていうわけ。

「泣かないためにはやっぱり、パスポートもらえるようにね、申請出せるようにしないといけないし。オレはね、自分でパスポートもらえたかなって思ったときにね、やっとどうにかもらえたんじゃないかなったと思うわけ。」


↑「だから、オレ『泣くなよ』っていうわけ。」イラスト:リーディング&カンパニー

現在は景気が悪く、不況なため、大学を卒業しても大きな決断をせず、少し自由な時間を取った方がいいと言われることもありますが、不況だからこそ、弱者にもチャンスがあり、不況時に育まれたアイデアは景気が回復した時に大きな影響を及ぼします。(4)

逆に、景気が良い時にはすでに満たされたニーズを追求する優れたアイデアがいくつもあるため、優れたアイデアや独創的な考えを持った人にチャンスはなく、アップルの共同創業であるスティーブ・ウォズニアックも次のように指摘しています。(5)

「おかしいのは、アップルをよみがえらせたって言われている製品—— iPodとかiMacとかは、全部、アップルが低迷していた時期 に設計されていた製品だったってことだ。デザイナーのジョナサン・アイブも、そのころから関与していた。」


↑不況の時に生まれたアイデアは、景気が回復した時に大きな影響を及ぼす。

芸人の枠を越えて、絵本作家や上場会社の顧問など様々な領域で活躍するキングコングの西野亮廣さんはクリエイターの信用は相手を楽しませることであり、マネタイズのタイミングを後ろにズラすと「面白い」の可能性は増えると述べていますが、ある程度、充実した人生を送るためには、20代の時に何か自分の将来をかけられるものに自分の時間を1万時間投資し、目に見える成功や結果が得られなくても、周りの人がマネできない飛び抜けたスキルを最低一つは身につけなければなりません。(6)

ただ、20代はエネルギーに満ちあふれているため、次から次へといろいろなものに手を出してしまいがちで、結局、中途半端な努力は何の結果にも結びつかず、大切な20代の時間を浪費してしまうことになるでしょう。

シリコンバレーの起業家育成スクールとも言われるYコンビネータは数多くの優れた若者、数百の数のスタートアップに出資し、出資した会社の価値を合計すると100億円ドルにもなります。

しかし、その価値の3/4はDropboxとAirbnbのたった2社が占めており、20代の中途半端な努力は世の中に正式にリリースさせる前に「市場にクビにされてしまう」という厳しい現実を理解しておく必要があることでしょう。(7)


↑20代は富を隠し、猛烈に働き、身体を鍛えろ。(Img_hackNY.org_CC)

一代で8兆円近くの資産を築いたウォーレン・バフェットはある日、仕事熱心で、飛行機の運転手以外にもっと大きな夢があるという自身のプライベートジェットのパイロットに対して、ものごとを成功させる3つのステップを次のようにアドバイスしました。(8)

1. 仕事の目標を25個、紙に書き出す。

2.自分にとってなにが重要かをよく考え、もっとも重要な5つの目標にマルをつける(5個を超えてはならない)。

3. マルをつけなかった20個の目標を目に焼きつける。そして、それらの目標には、今後は絶対に関わらないようにする。なぜなら、気が散るからだ。よけいなことに時間とエネルギーを取られてしまい、もっとも重要な目標に集中できなくなってしまう。


↑努力を分散させて、20代の大切な時間を無駄にしたら、取り返しがつかない。

1940年にハーバード大学で行われた調査で、体格や基礎体力の違いを考慮した上で、20歳の時に「何分間走れるか」が、その後の人生の成功を大きく決めることが分かりました。(8)

基礎体力を考慮した上で、どれだけハードなランニングに耐えられるかは、有酸素容量や筋肉の強さだけではなく、「どれだけ苦痛に耐え切れなく前にやめてしまうか」というその人の意思の強さを示しており、アメリカの大統領が80年代、スピーチで何度も引用した「人生で成功する秘訣の80%は、めげずに顔を出すこと」という言葉はやはりそれなりに正しいということなのでしょう。


↑20歳の時に「何分間走れるか」かが、その後の人生の成功を大きく左右する。

20代でやりたいことが分からないと起業家の講演会やセミナーに足を運んでしまいがちです。

起業家の話なんて、エナジードリンクと同じで、その場でのモチベーションはちょっと上がりますが、実際は、自分の手をしっかり動かして実力をつけなければ、ただの「意識高い系」の30代になってしまうことでしょう。

ビル・ゲイツとヴァージン・グループの創設者であるリチャード・ブランソンはある横浜で行われた講演会の控え室で、次のような会話をして、ゲラゲラと笑っていたそうです。(9)

「今日、 俺たちの講演会を聞きに来 ている人たち、何人いるの?」

「3000人だって」

「3000人!?バカだなあ、今日ここに来てる奴らは、成功なんてできるわけないよな」

「そうだよね、成功したいんだったら、俺たちの話を聞いている暇なんてなんてないよね。俺だったら、会社に戻って今すぐ働くな」


↑講演会などには参加せず、ひたすら自分の手を動かして「24時間仕事×365日×10セット」を繰り返す。

夏休みの宿題でも、最後の日に徹夜するよりも、夏休みの初日に徹夜した方が気持ち的に圧倒的に楽なように、どれだけ寿命が伸びて、世の中が決断を急がせないものだとしても、20代にやり遂げたい計画は、「早すぎるぐらいでないと、遅すぎる」ぐらい認識で進めていかなければ、とても終わらせることはできないでしょう。

以前、誰か「桜が美しいと気づいたのは30代になってからだった」と言っていましたが、何か大きなことを成し遂げる人の20代とは本当にそんなものなのかもしれません。

20代とは人生で最も大切な10年間であると同時に、桜の美しさにも気付かないほど忙しい10年でもあるのです。人生の先輩に聞いてみて下さい。きっとそうなんじゃないかと思います。

参考書籍

1.メグ ジェイ「人生は20代で決まる TEDの名スピーカーが贈る『仕事・結婚・将来設計』講義」早川書房、2014年 Kindle 2.速水 健朗「自分探しが止まらない」SBクリエイティブ、2008年 P62 3.成毛 眞「成毛眞のスティーブ・ジョブズ超解釈」ベストセラーズ、2012年 P168 4.ティム・ブラウン「デザイン思考が世界を変える」早川書房、2014年 P217 5.スティーブ・ウォズニアック「アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝」ダイヤモンド社、2008年 Kindle 6.西野 亮廣「魔法のコンパス 道なき道の歩き方」主婦と生活社、2016年 P88 7.アレクサンドラ・ウルフ「20 under 20 答えがない難問に挑むシリコンバレーの人々」日経BP社、2017年 Kindle 8.アンジェラ・ダックワース「やり抜く力 GRIT(グリット)――人生のあらゆる成功を決める『究極の能力』を身につける」ダイヤモンド社、2016年 Kindle 9.成毛 眞「勉強上手」幻冬舎、2012年 Kindle

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