May 26, 2019
矢沢永吉「お金を手に入れてはじめて、お金がすべてではないと言える。」お金の事を小声で話す人ほど、お金の事が大好き。

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昨年、僕はほぼ毎日渋谷の大戸屋で食事をしていました。注文は本当に毎回同じもので、「鳥と野菜の黒酢あん定食」を頼むのですが、ある時期をさかえに料理は全く同じものなのにも関わらず、値段が上がっていたのです。

また、去年はジムや借りているオフィスからも月額料金の値上げ通知が次々と届き、さらには、ガリガリ君まで60円から70円へと値上げに踏み切るなど、ニュースで流し読みするだけではなく、目に見える身近なところで、物価がどんどん上がってきています。




↑生活の質は変わらないのに、物価だけがどんどん上がり始めている。(LC.inc)

お金を銀行に預けても、利子が全くないため預金が増えないのはもう当たり前に聞く話でしょう。

しかし、モノやサービスの値段が上がっている現代では、お金を銀行に預ければ、預けるほどお金はどんどん減っていってしまいます。

これは、もちろん、実際の預金額が減ってしまうという意味ではありません。モノやサービスの値段が上がることに比例して、お金の価値は逆にどんどん下がっていくため、2025年の100円の価値は、2019年の100円の価値よりも低くなっているという意味です。

さらに、厚生労働省の統計によれば、退職金の平均額は年2.5%のペースで減っており、現在35歳の方が定年を迎える25年後にもらえる退職金は1000万円前後になっている予想されています。


↑銀行へお金を預ければ、預けるほど預金は減っていく。

年金に関しても、物価の上昇に合わせて、年金の受取額を政府が上げてくれることなどまず考えられないでしょう。

よく、仕事を定年退職して、年金がもらえる状態になった時に5000万円くらいの貯蓄があれば老後は大丈夫だと言われます。

しかし、仮に3億円あって、毎年1000万円ずつ使いながら90歳ちょうどで亡くなるという計画を立てたとしても、毎年、毎年自分の資産が少しずつ目減りしながら生きていくのは、あまり精神的によくありません。

現在の金融資産構成を見てみると、預金という形で銀行に塩漬けにされ、利子すら全くつかない現金の割合は、日本が52.3%、アメリカが13.9%、ユーロエリアが34.6%と日本が飛び抜けて多く、よく日本人が手元にお金を貯め込むのが大好きだと言われるのはご存知のお通りです。


↑老後のためのお金があったとしても、年々預金が減っていくのは精神的によくない。

一方、債務証券、投資信託、そして、株式などの運用資産の割合を見てみると、日本が15.1%、アメリカが51.2%、ユーロエリアが29.7%と、日本は欧米諸国と比較してお金からお金を生み出す投資を行う割合が圧倒的に低くなっています。

投資とは、簡単に言えば、会社の株式を保有し、自分よりも優秀なアマゾンのジェフ・ベゾスやソフトバンクの孫正義があなたの代わりに働いてくれるということで、そこから得た利益の一部を貰うことができるのです。

特にアメリカでは、投資こそ最大の貯蓄という概念があります。

仮に手元に100万円しかなかったとしても、それをただ銀行で眠らせておくだけではなく、しっかりと運用することで、年利が1%の場合は、30年で100万円が134万円にしかなりませんが、年利3%であれば242万円(2.4倍)、年利5%であれば432万円(4.3倍)、そして、年利10%になれば、1744万円(17倍)と、まさに雪だるま式にどんどん増えていきます。






↑投資とは、優秀な経営者に代わりに働いてもらい、利益の一部をもらうこと。(LC.inc)

もちろん、常に勉強しながら運用していく必要があります。

でも、過去200年の個人投資家の実質トータルリターンは6〜7%だと言われますから、30年間かけていまの資産を4〜5倍にすることは十分可能なことでしょう。(1)

グーグルやアップルに就職することは難しいかもしれませんが、投資家として成長し続けるグーグルやアップルの利益の一部を貰うことは誰にでもできるのです。

以前、俳優で小説家の水嶋ヒロさんが人生を長期的に見て、家族と仕事をしっかりと両立させるために、これでもかというくらいに資産運用について勉強したという記事が出ていました。

別に資産家にならなくても、少し余分にお金を持っていれば解決できることも多い。

死ぬ直前まで豊かな気持ちでいるために、財務省出身の柴山和久さんが仰るように「貧しさこそが美徳」でも「金の亡者」でもない、新しいお金との付き合い方を探っていかなければならないのです。

額に汗をかく労働の成長は年2%、脳に汗をかく投資の成長は年5%。



フランスの経済学者、トマ・ピケティは過去200年間におよぶ莫大なデータを15年間かけて調査しました。

その結果、お金からまた新たなお金を生み出す投資などからの資本収益率が年率4〜5%だったのに対して、汗水垂らして働くことで生まれる経済成長率は1〜2%しかないということを突き止めたのです。

つまり、資本主義というルールの中では、「資本家>労働者」という図式が成立し、投資によるリターンは汗水垂らして働く労働のリターンを上回っているということになります。

日本人が持つ金融資産の半分以上が、預金という形で銀行に塩漬けにされている現金であることからも分かるように、とにかく日本では額に汗をかいて働き、しっかりと銀行に貯金して将来に備えるという考え方が身体に染み付いているのでしょう。






↑汗水垂らす労働よりも、投資の方が成長率は高い。(LC.inc)

確かに、投資するためには、貯蓄が必要なのは経済の基本中の基本ですから、そういった意味で、日本人の考えは20世紀の概念としては間違っていないのかもしれません。

しかし、経済がどんどんグローバル化し、世界中の何十億人という人たちが日本人と同じ市場で働くことになる21世紀では、ただ単に額に汗をかく労働の価値は間違いなくどんどん低下していきます。

逆に会社で働く労働者であると同時に、労働で稼いだお金を運用する投資家にならなければ、中間層としての普通の生活を維持することはできないでしょう。

ユニクロを運営するファーストリテイリングの柳井正さんは、今後は年収1億円の社員と年収100万円の社員とが二極化すると述べています。


↑21世紀は会社で働く労働者であると同時に投資家にならなければならない。(LC.inc)

会社で働く労働者であると同時に、投資家になるということは一体どうゆうことなのでしょうか?

経営コンサルタントの鈴木貴博さんの著書「格差と階級の未来」の中に、あるサラリーマンの方が、2009年2月に住宅購入の頭金として用意していた1000万円を投資家としてアマゾンに投資した話が出ており、そのサラリーマンの男性は、アマゾンの生産的なビジネスモデルに目をつけた理由を次のように述べています。

「私はアマゾンが世界で一番、労働者からお金を搾取できる会社だと見込んだのです。私はサラリーマンとしては会社から搾取される立場ですが、今日からは株主として世界中の労働者から搾取をする立場も味わってみたいと思うのです。」

この夢のマイホームを諦めてアマゾンに投資したサラリーマン男性は、アマゾンの株を10年保有し続け、2018年9月の時点で1000万円が3億円超になったのだと言います。


↑日々、労働者として働いているからこそ、投資家としての視点に気づけるのかもしれない。(LC.inc)

もちろん、こんな上手い話は滅多にないことでしょう。

個人資産8兆9000億円を持ち、世界一の投資家として知られるウォーレン・バフェットでさえ、2017年の株主総会でアマゾンがここまで成長することはとても予測できなかったとして、投資しなかったことを悔やんでいますし、恐らくジェフ・ベゾス自身もアマゾンがどこまで成長するかなど、ほとんど理解できていないのではないかと思います。

ただ、ここでのポイントは、会社で働く労働者であると同時に、投資家になることで、自分自身はその企業で労働しなくても、どんどん伸びている企業の成長にあわせて利益の一部を分けてもらうということができるという部分です。

お茶の水女子大学名誉教授であり、自身も投資家である外山滋比古さんは、1960年代に経済的利益を追うだけの動物という意味で「エコノミック・アニマル」と海外から皮肉を投げられた時、将来の物価の上昇や定年退職後、稼ぎが急激に減るという未来をもっと真剣に考えるべきだったとして次のように述べています。(2)

「自分の手にするお金にこだわりの少ない俸給生活者たちが、本当に〈アリ〉型の人間なのか。実は、老後の備えを疎かにする〈キリギリス〉型の人間ばかりになっていないか、ということを一人ひとりが考えてみるべきだったのだ。真剣に考えれば、会社を勤め上げるだけで、あとは悠々自適の老後が送れるというのが幻想だと気が付くはずである。」




↑額だけではなく、脳にもしっかり汗をかいて、成長企業の利益の一部をもらう。(LC.inc)

確かに古い考え方が残っている田舎に行けば行くほど、「お金の話をするのは恥ずかしい。」という考えが強い気がします。

きっとお金のことを小声で話そうとするのは、実はお金が大好きことの裏返しで、お金の話を避けようとする人ほど、お金への執着心が強く、お金が好きで好きでたまらない人たちなのでしょう。

広島からお金持ちになりたい一心で上京し、1978年には長者番付歌手部門第1位になりながらも土地取引を巡り、34億円の借金を抱えて全額返済した矢沢永吉さんは以前、「素人社長会議」というトークショウの中で、「お金を手に入れてはじめて、お金がすべてではなかったと言うことができる」と述べていました。


↑お金を手に入れて始めて、お金がすべてではないと断言できる。(イラスト by LC.inc)

別に自分の富を見せびらかす必要はありませんが、資本主義の中で、人生を長期的に考えて豊かに生活したいのであれば、いま以上に真剣にお金のことを考える必要があることでしょう。

そして、矢沢永吉さんのような飛び抜けた才能がなく、グーグルのような成長する企業を自分自身でつくれる気がしないのであれば、企業で働く会社員であると同時に投資家になることが、お金の問題から自由になれる一番の近道なのです。

ビットコイン、ZOZO、ライザップ「急成長するものは、急降下するリスクも同等にある。」



ただ、世界一の投資家ですら、アマゾンの急成長を見抜けなかったわけですから、経済に疎い一般人にそれができるわけがありません。

Uberなどに出資したことで知られるエンジェル投資家のジェイソン・カラカニスは、スターバックスやマクドナルドのような原子でできてるビジネスの成長率は、ビット(ソフトウェア)できているビジネスとは比べものにならないとバカにします。(3)

つまり、フェイスブック・メッセンジャーは5年で10億人のユーザーを獲得したが、スターバックスが10億人の顧客を獲得するためには、何万店舗ものお店を出して、一日平均500〜700杯のコーヒーを売らなければならず、マクドナルドが今すぐ100万ドル(約1億円)の利益を上げるためには、一つにつき利益が10セント(約10円)のハンバーガーを1000万個売る必要があるから、成長規模としては比べものにならないという意味でしょう。

しかし、ビットコイン、ZOZO、フェイスブック、そして、ライザップなどを見ても分かるように、急成長する可能性があるものというのは、逆に急降下する可能性も同等の確率であるという意味です。

社長の発言一つで、自分の資産が10%も減ってしまう資産運用では夜も眠れず不安で精神的によくありません。




↑急成長する企業は急降下するリスクも同等にある。(LC.inc)

そう言った意味で、お金に不自由しないお金持ちになるだけであれば、株価の変化に一喜一憂するような急成長に投資しなくても、年平均数%のリターンがあれば十分なのでしょう。

冒頭で申し上げた通り、手元に100万円しかなくても年利5%で30年運用すれば、432万円(4.3倍)になりますし、投入する資金が増えれば増えるほどリターンも雪だるま式に大きくなってきます。

さきほどの世界一の投資家、ウォーレン・バフェットが保有する株は、コカ・コーラ、アメリカン・エキスプレス、そして、バンク・オブ・アメリカなど、誰でも知っているようなものばかりで、マネをしようと思えば誰でもマネをすることができます。




↑年に数パーセントの成長でも、数十年確実に成長すれば資産は莫大に増える。(LC.inc)

バフェットは、テクノロジー企業のように急成長しているものではなく、年に数%しか成長しないけれど、何十年間も安定している少数の企業に集中投資しており、次のグーグル、次のアップルを探して、一括千金を狙っている人たちからしてみれば、「こんな企業に投資して本当にお金持ちになれるのか?」というぐらい退屈な企業ばかりです。

何十年も人々の生活に密着しているソフトドリンクや日用品などの生活必需品は、一度強いブランド力を築いてしまうと、ライバル企業はそう簡単には太刀打ちできなくなってしまうため、年数%のリターンを半永久的に受け取ることができます。

特に、バフェットが9.3%の株式を保有し筆頭株主でもあるコカ・コーラは、「コカ・コーラ」という名前のブランド価値が時価総額の40%を締め、ほかの飲料メーカーが全く同じものを作っても市場シェアを奪えないのは、コカ・コーラが持つブランド力があまりにも強力すぎるからなのでしょう。

バフェットが築いた資産の大半は、彼の50年近くの投資人生の中での、「4〜5回の大きな投資判断」が成功して築き上げたものです。


















↑コカ・コーラはもうすでに消費者の心の一部を所有しているため、同じものをつくってもライバルはなかなか太刀打ちできない。(LC.inc)

将来企業が生み出す価値を判断して投資することは、芸術的な作業なのだとして、辛抱強く半永久的に利益を生み出す企業を探しては、勇気を持って一気に巨額のお金を投資し、ずっと株を保有し続けるのがバフェットのスタイルなのです。

バフェットは一日500ページの書籍や新聞、そして、財務表などに目を通し、海外旅行に行く時はプライベートジェットにダンボール一杯の書籍を積んで出かけます。

バフェットからすれば、一度株を購入したら何十年も売却せず保有し続けることを前提にしているため、株を購入する際は、その分野に関して一本論文を書けるぐらいでなければ購入しない方がいいのだとして、投資家を目指す学生に対して次のようにアドバイスをしました。(4)

「学生のみなさんは、卒業するときに切符を20枚手にすると思ってください。そして投資について決断を一つするごとに、その切符を一枚使うのだと考えてください。素晴らしい投資のアイデアが浮かんだときのために切符を取っておくようにすれば、この20枚を使いきってしまうことはないでしょう。」




↑徹底的にリサーチをして、自分が数十年保有できる自信がある企業だけを購入する。(LC.inc)

投資の一般的な原則としては、複数の銘柄や不動産などに投資し、「こっちの銘柄が下がったら、あっちの銘柄が上がる」と言ったように、シーソーの真ん中に立つことでリスクを分散させていきます。

しかし、一度株を購入したら何十年も保有し続けることを前提にしているバフェットからすれば、分散投資とは、自分が投資に関して、無知であることをカバーするための投資戦略であり、分散すれば、するほど、生み出す長期的な利益はどんどん少なくなっていってしまうのです。

少なくても、10年〜20年、長期的に保有する自信がない株などは、購入しない方がよいのでしょう。

本気でいいと思ったものを勇気を持って大量に買うことが大切なのです。

「もう少し安くなってから」では、ずっと始められない。株を始めるタイミングはパフォーマンスに影響しない。



アマゾン、グーグル、そして、新規の上場株などメディアが盛り上げ、魅力的に映る銘柄はたくさんあります。

ところが、人間というのは心理的に株価が上がっている時は上機嫌で保有しますが、株価が下がり始めると不安になって一気に売りに出してしまうのです。

それをさせないためにも、たっぷりと時間をかけて企業をリサーチし、周りを説得できるほどの論文を一本書くぐらいの気持ちで、自分の売りたい心理を「売らない」ように説得していかなければなりません。


↑お金持ちになりたければ、その企業について論文が書けるぐらい徹底的にリサーチする。(LC.inc)

実際、どれほどの優良株でも10年に一度ぐらいは大きく暴落します。

その時に、「自分の資産がどんどん減っていくのをくい止めなければ!」と考えるのではなく、「いい株が安値で買えるまたと無いチャンスだから、どんどん買い回そう!」と考えられるかどうかが、投資家として命運を別けていくのでしょう。

財務省、マッキンゼーで働き、常に数字を見ることになれていた柴山和久さんでさえ、比較的早い時期に「グーグルの将来性を理解しているのは自分だけだ!」とグーグルの株を購入しながらも、一時的に株価が下がり始めると怖くなって売ってしまったと著書の中で述べています。

普通に考えれば、企業の価値が数ヶ月で30%〜40%も増えたり、逆に減ったりすることはないのでしょう。

コカ・コーラの株価が数ヶ月で3割下がったとしても、急にコカ・コーラが提供するソフトドリンクを飲む人が3割減るわけではありません。




↑メディアが盛り上げる企業に投資してしまうと、株価が下がると不安ですぐ手放しなくなってしまう。(LC.inc)

つまり、何か短期的な問題で株価が一時的に下落することはあっても、多くの場合、長期的な企業価値にあまり変化はないのです。

経済の素人が「バーゲン価格で売られている株がどこかに無いだろうか?」と必死になって探さなくても、自分が信じて何十年間も保有できるスーパースター企業の株をいくつか保有しておけば半永久的に利益を生み出してくれるのでしょう。

バフェットも次のように述べています。(5) (6)

「普通の会社を非常に魅力的な価格で買うよりも、非常に魅力的な会社を普通の価格で買ったほうが何倍もいい。」

「模造宝石を100%所有するよりは、スミソニアン博物館にあるホープダイヤモンドを数パーセント所有するほうがはるかにいい。」




↑偽物の企業をいくつも所有するより、本物の企業を一部所有した方が100倍いい。(LC.inc)

多くの人が、株に興味を持ち始めると、「もう少し安くなってから買おう」、「暴落を待ってからにしよう」と考えてしまいがちです。

でも、経済がどう変化するかなどは誰にも分かりませんし、投資とは長期的に考えれば、スタートするタイミングがパフォーマンスに影響することはほとんどないのだと言います。

よく、人生で一番若いのが今だと言われるように、何か物事を始めるのに「今」以外の適切なタイミングはないのかもしれません。

まとめ「世界一の資産家の99.5%の資産は52歳以降につくられた。ゆっくりとお金持ちなる人が一番の幸せ者。」



学生に貧乏旅行でスイスに行った時、何か理由はよく分からないけど、「ここは豊かな場所なんだな」と感じたことを今でも覚えています。

人生で起こる大きな問題の3つは、健康、人間関係、そして、お金だと言われますが、スイスの一人当たりのGDPは日本の2倍以上であり、お金とは使い方を間違えなければ、やはり豊かな人生を送るためには必ず必要なものなのでしょう。

日本人が持つ預金が銀行で眠ってしまっているのとは対象的に、スイスは世界の投資銀行として、お金からお金を生み出し高収益を稼ぎ出しています。




↑豊かな人生を送るためには、お金は必ず必要なものだ。(LC.inc)

会社員である以上、なかなか給料が上がらないから、金銭的に豊かになるためには、独立して起業するしかないと言われますが、果たして本当にそうでしょうか?

アマゾンのCEOであるジェフ・ベゾスがウォーレン・バフェットとランチを共にした際、ベゾスがバフェットに対して、「なぜ、あなたの投資哲学はシンプルでわかりやすいのに、誰もそれをマネしようとしないんですか?」と質問をすると、バフェットは次のように答えたそうです。

「誰もゆっくりとお金持ちになりたいなんて考えていないよ。」

ビル・ゲイツやマーク・ザッカーバーグ、そして、日本で言えば孫正義さんなどは、事業を成功させ、すでに30代で大金持ちになっていました。

バフェットの資産は2018年の時点で9.2兆円で世界第3位ですが、ここで興味深いのは、この資産の99.5%が52歳以降に作られたということです。


↑バフェットの資産の99.5%が52歳以降につくられた。ゆっくりお金持ちになる人が一番の幸せ者。(LC.inc)

慈善事業に熱心だったバフェットの奥さんは、1980年代、バフェットに対して、「自分の資産を増やすことばかり考えていないで、人を助けることにもお金を回してよ。」と迫りました。

しかし、バフェットは迫る妻に対して、「もう少し、待ってくれ。 もっと後になれば、もっと増えるから」と言ったそうです。

2006年にバフェットは、自身の資産の99%をビル&メリンダ・ゲイツ財団を含む5つの慈善団体に寄付することを公言しており、アインシュタインが「宇宙で最強の力」、「人類最大の発見」と呼んだ複利の力を最大限に活用して、寄付の額を何百倍にも増やしていきました。

「私は人を助けて、その笑顔を見ることが喜びなので、お金には興味がありません。」という若い人たちがいます。

だけど、世界一慈善活動をして感謝されているのは、ビル・ゲイツやバフェットであり、なぜ彼らが世界一の慈善家なのかと言えば、彼らが世界一のお金持ちだからなのでしょう。




↑世界一のお金持ちだからこそ、世界一の慈善家になることができる。(LC.inc)

だから、あなたの人生の目標が何であるにせよ、豊かな生活を送り、人々から感謝させる人生を送るためには、ある程度のお金が必要になってくるのです。

人間の生きる目的は血液をつくることではないけれど、人間は血液がないと死んでしまうのと同じことですね。

きっと、自分よりもバカな人たちがビットコインなどを通じて、急にお金持ちになっていく姿を見るの中々我慢し難いことでしょう。

だけど、30〜40年単位でお金持ちになるために本当に大切なことは、まだ誰も目をつけていないスタートアップに投資することでもなければ、仮想通貨を始めることでもなく、バフェットが言がうように、「くっつきやすい雪」と「最も長い下り坂」を探すことなのだろう。

ひたすら、坂を降って大きくなり続けていくスノーボールを。

参考・引用

◆1.バフェット太郎「バカでも稼げる 『米国株』高配当投資」ぱる出版、2018年 ◆2.外山 滋比古「お金の整理学」小学館、2018年  ◆3.ジェイソン・カラカニス「エンジェル投資家 リスクを大胆に取り巨額のリターンを得る人は何を見抜くのか」日経BP社、2018年◆4.ジャネット・ロウ「バフェットの投資原則―世界No.1投資家は何を考え、いかに行動してきたか」ダイヤモンド社、2008年 P57 ◆5.ジャネット・ロウ「バフェットの投資原則―世界No.1投資家は何を考え、いかに行動してきたか」ダイヤモンド社、2008年 P95 ◆6.グレン・アーノルド「ウォーレン・バフェットはこうして最初の1億ドルを稼いだ――若き日のバフェットに学ぶ最強の投資哲学」ダイヤモンド社、2018年

その他参考にした書籍

◆アリス・シュローダー「スノーボール ウォーレン・バフェット伝」日本経済新聞出版社、2014年 ◆鈴木貴博「格差と階級の未来 超富裕層と新下流層しかいなくなる世界の生き抜き方」講談社、2019年 ◆メアリー・バフェット、デビッド・クラーク「史上最強の投資家 バフェットの財務諸表を読む力 大不況でも投資で勝ち抜く58のルール」徳間書店、2009年 ◆ジョン・シュウギョウ「世界一やさしい 株の練習帖 1年生」ソーテック社、2017年 ◆リンダ・ロッテンバーグ「THINK WILD あなたの成功を阻むすべての難問を解決する」ダイヤモンド社、2017年 ◆トーマス・ラッポルト「ピーター・ティール 世界を手にした『反逆の起業家』の野望」飛鳥新社、2018年 ◆テイラー・ピアソン「THE END OF JOBS 僕たちの20年戦略」TAC出版、2017年 ◆杉村 太蔵 「バカでも資産1億円:『儲け』をつかむ技術」小学館、2014年 ◆グレッグ マキューン「エッセンシャル思考 最少の時間で成果を最大にする」かんき出版、2014年 ◆柴山 和久「元財務官僚が5つの失敗をしてたどり着いたこれからの投資の思考法」ダイヤモンド社、2018年 ◆嶋 聡「孫正義2.0新社長学 IoT時代の新リーダーになる7つの心得」双葉社、2016年 ◆村上 世彰

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