July 12, 2019
戦争を無くすためにつくられた航空会社「サービスの質を上げる前に、企業ミッションの質を上げろ。」

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政治の世界は問題だらけですが、ビジネスの世界では、もう十分過ぎると言われるほどのモノやサービスが顧客に提供されていて、わざわざビジネスを通じて解決すべき問題はあまり存在しないのかもしれません。

常にいつの時代も、「いま何が欠如しているか」、「いま何が希少化しているか」によってビジネスが大きく特徴づけられ、その欠如を満たしてあげることが大きな利益を生み出すという方程式は変わらないのでしょう。





「新しい車がほしい」、「新しい服がほしい」、「新しいゲームがほしい」と嘆いている人は自分の周りではあまり見かけません。

でも、「働く意義が感じられない」、「人生の目的が見つからない」と毎日呪文のように唱えている人たちは数多くおり、そういった意味では、いまの時代に不足し、希少化が高くなっているものは、モノやサービスなどではなく、「働く意味」や「生きる意味」そのものだとも言えます。



マーク・ザッカーバーグはかの有名なハーバードのスピーチで、「自分の人生の目的を見つけるだけでは不十分。僕たちの世代の課題は、”誰もが”目的感を人生の中で持てる世界を創り出すこと」なのだと言いました。

つまり企業がこれから大きな利益を上げていくためには、すでに飽和状態にあるモノやサービスに必要のない機能を追加して提供するのではなく、「働く意味」や「生きる意味」自体をモノやサービスを通じて提供していかなければなりません。





著作家の山口周さんは著書「ニュータイプの時代」の中で、格安航空会社「ピーチ・アビエーション」のミッションは、ただお客さんを空港から空港へ送り届けることではなく、戦争を無くすことに企業の存在意義を見出しているという例を紹介しています。

確かに若い人達が、頻繁に外国に行って、直接外国の文化に触れながらコミュニケーションを取っていけば、友達のいる国に戦争を仕掛けるなんてバカなことはきっとしなくなるだろう。

アメリカに守られてばかりいないで、日本も自国の安全は自分で守れるようにしないといけないと言いますが、寄りかかる先を減らして自立するのではなく、もっと外国に寄りかかれる先を増やす方が、日本の安全は高まっていくことは間違いありません。







東京大学の安冨歩教授は、自立とは依存することであり、少数に寄りかかることは依存ではなく隷属で、「助けてください」と言えた時、始めて人は自立しているのだと言います。

ピーチに乗ると、機内持ち込みの荷物の制限はうるさいし、機内でも水ひとつ出ない、5年後には機内のトイレまで有料になるのではないかと考えてしまいます。

しかし、ピーチは戦争を無くすという「目的」で、お金がない若い人でも気軽に海外に行けるサービスを提供しているんだと思えば、そのあたりのドケチ経営もあまり気にならなくなるでしょう。

こういった意味が生み出す利益を理解すれば、なぜ当初は登山用具を売って、手っ取り早く儲けようとしたパタゴニアが参院選の投開票日である7/21を臨時休業にするのかがよく分かります。



もしかすると、「イノベーションを起こす」、「人々を幸せにする」というありきたりな「意味のない」ミッションをかかげている企業ほど、必要のない仕事を量産しがちなため、その中で働く従業員もどんどん生きる目的を失っていってしまっているのかもしれません。

いまの時代、モノやサービスはすぐにコピーできるけど、意味や目的自体はなかなかコピーすることができない。

きっと、いま必要とされているのは、面白いモノやサービスを生み出せることではなく、その背景にある意味や目的を生み出せる人なのだろう。

/MISSON_DRIVEN