February 3, 2017
45歳以下の重役はSNSで自信を持って発言できなければ、もう経営者にはなれない。

突然ですが、あなたは下記の人物がどの企業のCEOか分かるでしょうか?下記の人物は売上規模では全米でトップ10に入る企業のCEOです。


↑米国の売上規模ではトップ10に入る企業のCEO

答えは左からIBMのCEO、Romettyさん、WalmartのCEO、Mcmillonさん、そしてExxonのCEO、Tillersonさんです。

もしかすると、アメリカ企業のCEOなんて分かるわけないでしょ?と思われるかもしれませが、アメリカの若者に同じような質問を投げかけても、どの企業のCEOなのか分かる人はほとんどいません。

では下記の写真はいかがでしょうか?


↑世界一オープンなCEO。(iStock)

欧米でこの写真の人物はどの企業のCEOですか?という質問をして、答えられない人はいません。日本でもご存知の方は多いと思いますが、彼の名前はリチャード・ブランソン、鉄道や航空など様々なビジネスを束ねるヴァージン・グループの代表です。

もし、あなたが新しい時代に顧客を引きつけ、従業員にもしっかりと栄養を与えて、他社とは違ったブランドを築きたいのであれば、上記の3人のCEOのように部屋で黙々と仕事をし、ある特定の場にしか姿を見せない古い時代のCEOになってはいけません。


↑オープンであると同時にWeb上でもの凄い影響力を持つ。(Twitter)

ヴァージンは2000年から2003年の間に、ゼロから1000億円規模の企業を3つ、それも3つとも別々の国で作り上げました。なぜこんなことが可能なのでしょうか?

日本一の事業家と言われた孫さんでもさすがに3年間で3つの1000億円規模の企業を、それも3つとも別々の国で作るのは、なかなか難しいです。ブランソン氏はその秘訣を次のように語ります。

「自分自身が公共の場に顔を出し、しっかり自分のブランドを作れば、無料で広告を打っているようなものだよ。」

「このやり方はもの凄く効率が良いし、もし大企業に挑戦を挑むのであれば、自分自身をブランディングして、”無料広告”のアドバンテージを使わない手はないね。」


↑彼のブランドが様々な事業に付加価値を付ける。(kris krüg: Flickr) (CC)

インターネット社会が進んでいる欧米でさえ、ソーシャル・メディアを使って情報を配信しているCEOは約20%、ツイッターのアカウントを持っているCEOはたった1.8%だと言います。

実際、これだけコミュニケーションが活発に行われている世の中では、CEOの価値を株価だけで判断することはもうすでに不可能であり、株主、従業員、政府、そしてお客様と自由でオープンなコミュニケーションを取っていくことがCEOの価値を決めていきます。

最近ではアップルのCEOが株主に対し、「もし私達の地球温暖化を考慮した経営が気に喰わないのであれば、どこか別のところに投資したらどうですか?」と言ったことに注目が集まりましたが、21世紀型のCEOは自分の想いをオープンに伝えていくことで、企業がブランド化されていくのです。


↑オープンにしていくことで自身がブランド化される。(iStock)

ソーシャルメディアは株主、従業員、政府、そしてお客様とすべての「人」が交わる上で、もの凄い力を持つプラットフォームであり、もちろんこのような現象は
何万年と続く人類の歴史の中でも初めてのことです。

しかし、世間ではまだまだ、「ツイートする暇なんてない。」「うちの業界はソーシャルではないからね。」「費用対効果をどうやって測るんだい?」「リスクがありすぎる。」
と様々な声が聞こえてきます。

確かに上記のような理由はソーシャルメディアを始めてない言い訳にはちょうど良いかもしれませんが、多忙なブラウソン氏ができて、普通のCEOができないはずがありませんし、費用対効果を始める前から考えても仕方がありません。


↑ツイートする暇なんてない?冗談だろ? (YouTube)

これは私の個人的な考えですが言い訳を並べるCEOは、正直ただシャイなだけなのではないでしょうか? もし、そうなのであればブランソン氏の言葉が、そんな「恥ずかしさ」を吹き飛ばしてくれます。

「私が航空ビジネスに参入しようとした時、広告に資金を使うのは嫌でしたが、どうしても新聞のフロントページ(表紙)に載りたかったんです。この話をするとみんな大笑いするのですが、当時わたしはもの凄く恥ずかしがり屋でした。」

「でも何とかしてそれを克服する必要があった。そこで何とか機長の格好をして登場したところ、新聞のフロントページに取り上げられました。その時、自分自身を使ってブランディングしていくこと学んだですよ。」

透明性と人間味がすべてを物語る。



マイクロソフトはコンピューター、コカコーラはソフトドリンク、ナイキはシューズ、しかし、携帯電話、航空、鉄道、銀行、宇宙産業、そしてオリジナルのコーラまで販売してしまうヴァージンを
一言で定義することは不可能です。

ザッポスやスターバックスのCEOが自分達は靴やコーヒーを売る企業ではなく、文化とストーリーを売る企業だと繰り返し述べているように、様々な形でコミュニケーションが取れるようになった現在、もうあなたが何を売るかのかはあまり重要ではないのかもしれません。


↑スターバックスが営んでいるのはPeople Business。

オープンなCEOや企業を定義する上で一番大事なことは透明性です。「透明性」とは企業のトップであるCEO自ら、自社のストーリーを”自分の言葉”で伝え、それを実行することであり、カナダ大手の銀行TangerineのCEO、Peter Aceto氏は次のように述べています。

「金融危機の後、人々はどのように情報を仕入れるか、誰を信用するかを再度考え直しています。」

「もう企業やビジネスリーダーは声は人々の視野に入っていません。従って、企業やビジネスリーダーはオープンであることと、透明性を意識し、”従業員”と”顧客”に選ばれる立場にならなければなりません。」


↑誰に対してもオープンで透明性を持たせ、そして自分の言葉で。(James Demetrie by Flickr) (CC)

ブランソン氏が24時間休むことなくソーシャルメディアを使って、”自分の言葉で”情報を配信しているのには自分自身をブランディングすると同時にすべての”人”に対して栄養を与える行為だと
述べています。

「人は植物と大して変わらないよ。水をあげたり、励ましたりすることで彼らは成長するんだ。常に”人”に栄養を与えることがリーダーの役割だと思うよ。」

中には忙しいという理由で、代理人を使ったりPRチームにソーシャルメディアを任せてしまうリーダーも多いですが、成功しているリーダーに共通していることはすべて
自分の声で情報を配信していることです。


↑本物のリーダーは自分の声で。(Shinsuke Ikegame) (CC)

世間とのコミュニケーションを専門に取り扱う企業、Weber Shandwick社の調査によれば、ソーシャルCEOはコミュニケーション・スキルが高く、リーダーという役割にはふさわしいという調査結果を出しており、Weber Shandwick社のLeslie Rossさんは
次のように述べています。

「ソーシャルCEOを持つことで従業員は心地よくなり、企業に対して忠実になります。最終的にそれがビジネスの結果に繋がってくるのです。あなたは”今すぐ”ソーシャルCEOにならなければいけません。明日では遅すぎるのです。」

ソーシャル進化論=変わらなかければ滅びるだけ。



近代でも最も影響力のある「進化論」を唱えたイギリスの学者、チャールズ・ダーウィンは生物が進化する過程を事細かく研究した結果、「変化に強い者」だけが生き残ることができるという結論に至り、進化論の中で次のように書き残しました。

「この世に生き残る生き物は、最も力の強いものか。そうではない。最も頭のいいものか。そうでもない。それは、変化に対応できる生き物だ」


↑ダーウィン:”変化”に強い者だけが生き残る。

もちろん、この「進化論」は21世紀の現在でも当てはまり、様々なデータを調べていくと奇妙なことに気づきます。

ハブスポットCEOのBrian Halligan氏によれば、1983年にアメリカのフォーチュン1000に選ばれた企業1000社は、10年後の1993年にも約800社選ばれていますが、2003年にフォーチュン1000に選ばれた企業1000社は、10年後の2013年にはたった250社しか残っていません。

このデータは、この10年間でインターネットにレバレッジをかけて企業が台頭し、変化の対応に遅れた企業が後退していることを見事に証明しています。


↑変化に対応できない企業は去るのみ。

実際には近代のIT企業の重役でも、CEOの役割は人々とコミュニケーションすることではないと主張する人もおり、グーグルXの共同創業者であるSebastian Thrunさんは、「CEOは基本的には人とソーシャルすべきではない。

政治家やセレブがファンを必要としていることは分かるがCEOにファンは必要ない。」と主張しています。

しかし、
49%の印象は人々がどのようにCEOを見るかによって決まるという調査
やブランソン氏が世界中を飛び回り、ソーシャルメディアを通じて計り知れない利益を出していることからも分かるように21世紀型のCEOは世間から離脱して得することはありません。


↑CEOが発する言葉の意味は大きい。(iStock)

ダーウィンの進化論によれば、新しい環境に対応しなかった生物、もしくは対応できなかった生物は絶滅しており、デロイト・トーマスのCEO(オーストラリア)、Giam Swiegersさんは
次のように述べています。

「45歳以下の重役で、ソーシャルメディアで自信を持って発言できないようであれば、あなたはもうリーダーになれないだろう。なぜなら世界はあっという間に変化するのだから。」

近年、デジタル進化論はビジネスに影響し、
その状況は加速するばかりです。一昔前のアメリカフォーチュン500企業の寿命は75年でしたが、最近ではその寿命がたった10年に縮まっており、「変化に対応する企業」と「対応できない企業」との差が明確になってきています。

日本は良い意味でも悪い意味では昔ながらの伝統を現代の社会に上手く適合させながら暮らしている民族です。


↑45歳以下の重役で、SNSを自信を持って使えないようであれば、もうリーダーにはなれない。

ソニーのウォークマンは音楽を持ち歩けるものにし、任天堂はテレビゲームを娯楽に変化させ、パナソニックや日立は「テレビを見る」ということを再定義し、世界中の人のライフスタイルを変化させました。

そう言った意味では、戦後の時代の変化に上手く対応した、世界でも稀に見る優等生だったことは間違えありません。

しかし、新しい世紀を迎えてもう16年が経とうとしていますが、まだまだ僕たちはテクノロジー時代の新しい変化に対応できていないように思います。

これは生物、企業、そして人類すべてに共通して言えることかもしれませんが、歴史は「変化に対応できなかった者」に対しては、もの凄く残酷です。


↑歴史は変化に対応できなかった者には残酷。

CEOが奥の社長室で難しい顔をしながら帳簿を見たり、PRエージェントに自分のイメージを作ってもらう時代はもう終わりました。

恥ずかしがらず、これも仕事だと思って、Webで自分の想いを素直に語り会社の付加価値を少しずつ上げていきましょう。

まとめ

最近の成功している企業に共通して言えることですが、CEOのイメージと企業のブランドイメージは面白いほどリンクしています。

リチャード・ブランソン氏、マーク・ザッカーバーグ氏、そしてジェフ・ベゾス氏、彼らは毎日毎日、新聞やテレビに取り上げられるわけではありませんが、インターネットを自由に使いこなす次世代の消費者、そして従業員はソーシャルメディアを通じて企業を理解し、透明性によってブランドをサポートします。


↑企業とCEOのイメージは面白いほどリンク。(Steve Jurvetson) (CC)

最近ではさすがに少なくなりましたが、少し前までは自分の食べた夕食を毎日SNS上にアップしてインゲージメントを狙っているCEOの方がいました。

ブランソンさんは16歳で高校を中退し、初めて立ち上げた事業が”Student”という雑誌のメディア産業でした。50年近く前のことをブランソンさんは次のように振り返っています。

「気の合う友達とStudentマガジンを運営していた時は本当に楽しかった。でも私は常にメッセージ性の強い言葉で伝えることを意識していたんだ。」


↑あなたの食べた夕食など誰も興味ない。(Gilberto Cardenas) (CC)

ソーシャルメディアを情報収集のツールとして使っているCEOはかなり多いですが、まだまだメッセージの強いものは彼からは聞こえてきません。情報がこれだけ溢れている世の中で、正直あなたがどんな事業を営んでいるかはあまり重要ではありません。

なぜなら、インターネットで検索すれば「代わりの人」はいくらでも見つけられるからです。

あなたがCEOとして何をやっているかを宣伝するよりも、あなたがどんな「想い」で何を考えながらビジネスをやっているかを正直な自分の言葉で伝えいくことが多くのファンを獲得し、最終的にそれがビジネスに良い結果をもたらすのではないでしょうか。

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