April 17, 2017
17時半に退社すれば利益は倍増「日本の会社の97パーセントは、これだけ働いても、4000万円の利益すらあげられない。」

Mary Lock/Flickr

日本の労働時間が他の先進国に比べて圧倒的に長いことはよく話題になりますが、仕事の生産性に関しても、日本は1994年以降、先進7ヶ国の中では最下位となっており、あののんびりしているイタリアや、プライベート第一で鮮やかに遊んでいるイメージがあるフランスよりも生産性が低いという現実を知ると少し悲しくなってしまいます。

また、年間の生産性は、グーグルが従業員一人あたり1259万円なのに対し、日本の大手企業であるパナソニックは300万円、日立製作所は311万円と4倍近くの差があり、意味合いは違いますが、世の中で最も無駄がない組織が生死をかけて戦う軍隊なのであれば、無駄が多く、生産性が低い日本企業は本当の戦争であれば、とっくに全滅してしまっているのかもしれません。(1)


↑生産性だけではなく、明らかに「人生の質」という面でも、日本は敗北し続けている。

現在、日本には約965万社の企業があり、政府が以前公開していた「高額所得法人」の中で、「この会社は儲かっている」という会社の基準は年間4000万円以上の利益を出している会社に限られるのだそうです。(2)

実際、この基準を満たす企業は、全体の3パーセント(8万社)しかなく、有給休暇以外の休日数が日本一多く、一日の労働時間が7時間15分と労働時間が日本一短いと言われる未来工業の山田昭男さんはこの件について次のように断言しています。(3)

「今、『日本の法人税は高すぎる』と税率を引き下げる話が出ているが、ほとんどの会社はそんなこと関係ないよ。97パーセントの会社は、たった4000万円も儲けられていないんだから。つまり、ほとんどの会社は、たいして儲かっていないということだ。」

「もし、みなさんが会社を経営している(起業を考えている)なら、そういう“儲からない会社”と同じことをしたって儲かるわけがない。」


↑4000万の利益を上げれない97パーセントの会社が、法人税高いなんてよく言えたもんだ。

恐らく、労働時間が長く、未だに多くの日本人が幸せになれない根本的な理由は、経営者が頭を使わず、従業員が必死で作り出した世界一クオリティの高い日本の商品やサービスを世界一割の合わない安値で売りまくっていることが大きな原因なのではないでしょうか。

当たり前のことですが、性能や品質が高いものには、それなりのコストがかかり、それを安くしてしまったら、従業員は残業や時間外労働など自分の時間を切り崩して仕事をしなければならないため、労働時間は必然と長くなって、生産性が落ちてくるのは当然です。


↑世界一良いものを、世界一割に合わない価格で売ってしまっていることが日本人が幸せになれない根本的な原因。

例えば、よくスーパーのチラシで、「サンマ特売1本100円」などというのを見かけてますが、実はチラシを出した時点では、スーパーはサンマを仕入れておらず、仕入れる時にスーパーが卸業者を値切り、値切られた卸業者は自分の利益を確保するために漁師を値切らなければならないため、最終的な安売りのしわ寄せは従業員と同じように生産者にふりかかってきます。(4)

消費者の目線から考えれば、商品が安ければ安いほどありがたく感じられますし、売り手の目線でも安くした方が売れるというのが一般的な考え方です。

しかし、その安売りは回り回って、労働者の首を締め、最終的に労働者は、自分の「時間」を切り売りするしかないという悪循環にどんどんハマっていってしまい、モノやサービスに真っ当な価格をつけて、企業がそれを求めている人達にきちんとと届ける努力をしなければ、世の中が真っ当な場所になることは決してないでしょう。(5)


↑安売りは大罪「回り回って、従業員の首を締めることになる。」(Stephan Geyer/Flickr)

「最大の競争対策は、競争がない状態に自らすることだ」と言ったのはセブンイレブンの創業者である鈴木敏文さんですが、ペイパルの元CEOであり、シリコンバレーで最も影響力を持つひとりであるピーター・ティールも、市場を圧倒的に独占し、競争を避けることがカネ以外のことを唯一考える方法だとして、次のように述べています。(6) (7)

「競争的な生態系は人々を追い詰め、死に追いやることもある。グーグルのような独占企業は違う。ライバルを気にする必要がないため、社員やプロダクトや広い社会への影響を考える余裕がある。」

「カネのことしか考えられない企業と、カネ以外のことも考えられる企業とでは、ものすごい違いがある。独占企業は金儲け以外のことを考える余裕がある。非独占企業にその余裕はない。完全競争下の企業は目先の利益を追うのに精一杯で、長期的な未来に備える余裕はない。 生き残りを賭けた厳しい闘いからの脱却を可能にするものは、ただひとつ ─ ─ 独占的利益だ。」


↑4000万の利益を上げられない97パーセントの日本の会社に、カネ以外のことを考える余裕はない 。(opacity_CC)

市場の独占や差別化ができない企業は、低粗利な取引先や商品をどんどん増やしていくことでしか会社を維持することができず、低い利益率は労働時間を増やすことで補っていかなければなりません。

新規の営業にしても効率は圧倒的に悪いですが、長時間頑張っていれば、一定の割合で受注が取れるため、とにかく人よりも長く働くことでしか会社の存在を維持できないというのが多くの企業の本音なのでしょう。


↑低粗利な取引先を増やして、会社の存在は維持できても、労働時間は右肩上がりに増えていく。

先程の日本一短い労働時間と言われる未来工業の山田昭男さんは、値切ることしか考えていないお客さんは神様どころか最大の敵だとして、「 未来工業さんの製品は高いけど、使わざるをえないよ」と言われるのがビジネスマンにとっての最高の褒め言葉だと述べています。(8) (9)

アーティストやクリエイターという職業でもいったん安い価格で仕事を受けてしまうと、そのサービスの価値は急落し、お金への妥協は仕事と生活の質を大きく下げてしまうことになることになるため、常に意識して、良いモノをより高く売る努力をしなければ、一生長時間労働から抜け出すことはできません。


↑お金に対して妥協すると、結局、長時間働からなければならなくなる。

ビジネスとは忙しいこと(ビジー”busy” + ネス “ness)を意味し、「忙しい」という字は、「心が亡びる」と書きますが、もし今あなたが長時間労働から抜け出せないのであれば、徹底的に差別化された独占手なスキルを持っていないか、自分の価値をしっかりとクライアントに示すことができていないかのどちらかでしかないでしょう。

クリエイターの高城剛さんは、2017年2月17日付けのメルマガの中で、X Japanとの仕事が始まった経緯を次のように述べています。

「以前、東京ドームで開催されたX Japanの復活ライブで、お亡くなりになったHideの立体ホログラフィーをライブに登場させたのは、その技術を日本で僕しか持っていなかったからなんです。 いまの屋外ドローン編隊飛行のように。 特殊な技術開発を行うと、市場を『独占』できますので、あとはもっとも高値で取引してくれるクライアントと仕事がはじまります。 『ありがたいです』よね。」


↑高値で取引することで、初めて長時間労働から抜け出すことができる。

もちろん、グーグルや高城さんのように市場を独占するのは簡単なことではありませんが、差別化の基本は「人マネ」に少しプラスアルファを加えたことであり、星野リゾートを運営する星野佳路さんは、数字で管理するのは会社の売上や作業の結果ではなく、会社が持っているノウハウや、ノウハウを身につけるための「プロセス」だとして次のように述べます。(10) (11)

「ノウハウが年々進化していれば、たとえ売上げや件数が伸びていなくても心配しない。件数や売上は、後からついてくるからだ。オーナーは、当然のことながらノウハウが優れている会社に運営を任せる。 」

「ノウハウが進化していないのに営業力を活かして案件を取ってきても、運営先がいたずらに増えていくだけで、満足なサービスは提供できない。 結果、どの施設も成果が出せなくなっていく。そのためノウハウの数値が向上しているか否かは意識して見ている。」


↑数値化するのは、売上ではなく、差別化するノウハウを身につけるプロセスである。

そして、市場の独占や差別化と平行して、なぜ自社の商品やサービスが他社に比べて圧倒的に優れているかをしっかりと「説明できる能力」が今後はもの凄く重要になってきます。

売上利益率が約50パーセントと他のブランドよりも限りなく多くの利益を出しているアウトドアメーカー、スノーピークの製品は、他社のテントが9800円、1万9800円という中で、16万8000円という10倍近い価格で勝負しており、スノーピークの山井太社長は、良いものを作るというのは仕事の半分ぐらいで、その良さをしっかり「説明」できなければ、ビジネスとしては成り立たないのだと言います。(12)

「私は何事も『美しい』ことがとても好きなので、バランスシートにおいても美しさにこだわっている。これまでの決算で一番『美しかった』 のが、総資本が15億8000万円で自己資本が15億円だったときだ。」

「(中略)つまり、これだけ財務体質がしっかりしていたため、無理な販売をするという企業文化がない。 だから、『どれだけ待っても当初の見込みほどマーケットが広がらない』ケースがあったとしても、その製品を半額で売ったりすることはめったにない。そんなことをしたら、時間をかけてつくってきたブランドの価値や意味が変わってしまう。」


↑良い商品を作る時間が半分、残りの半分はそれを説明するための時間に使う。 (EYE OF GREAT7/Flickr)

ピーター・ドラッカーによれば、成果を上げる人はすぐに仕事をスタートせず、まずは、借りる、雇う、そして購入することが絶対にできない時間という資源をどう有効に使うかを考えるところからスタートするのだと言います。(13)

つまり、現在の日本の状況で言えば、野球の試合のように、制限時間に限りがない中でひたすら仕事をしているため、いつまでたっても「どうやったら生産性が上がるか」、「どうやったら付加価値を高められるか」ということを深く考えようとせず、1時間当たりの仕事の生産性はひたすら下落していってしまうことでしょう。


↑野球のように制限時間のない試合に参加していては、いつまで経っても効率は上がらない。(Riyadh Al-Balushi/Flickr)

逆にサッカーのように制限時間を決め、働く時間は1日8時間としてしまえば、ルーティンの仕事はマニュアル化、コンピュータやアウトソーシングできるところは片っ端から置き換えようとするでしょうし、そうすることによって社員は社員にしかできない仕事に集中できるため、製品やサービスの質はどんどん上がって、他社との差別化は明確になっていきます。

実際、大手商社の伊藤忠商事は24時間働いて当たり前の商社の世界で、20時以降の残業を原則禁止し、2016年3月期決算では三菱商事や三井物産を抑えて商社ナンバーワンになりましたし、スウェーデンの職場では、1日の労働時間を8時間から6時間に短縮したことで、仕事の生産性が上がり従業員の意欲も高まったという事実がいくつも報告されています。(14)


↑サッカーのように制限時間を設けることで、やっと生産性について考えることができる。(Aleksandr Osipov/Flickr)

そもそも、若者の比率が高く、高齢者の比率が非常に少ない人口構造である「人口ボーナス期」と、支えられる側の高齢者が支える側である若者の数よりも多くなってしまう「人口オーナス期」では世の中の働き方は大きく変わってきます。(オーナスとは重荷、負担という意味)

日本で言えば、1960年代半ばから1990年代半までが「人口ボーナス期」にあたり、この時期は、市場はまだモノやサービスに飢えていて、作ったら作っただけモノは売れていくため、長時間の労働はそのまま会社の業績に繋がりましたが、少子高齢化で人口に占める働く人の割合が低くなっていく「人口オーナス期」では、働く人達の時間当たりの単価が高騰するため、できるだけ短時間で働く企業が大きな結果を出すことができるようになっていくでしょう。(15)


↑働く人の割合が低くなっていく時代には、できるだけ短時間で働く企業が大きな結果を出す。

仕事の無駄を一つ発見して、仮にそれが5分の短縮にしかならなかったとしても、6つ無駄を見つければ毎日30分も早く帰れますし、毎日30分早く帰れれば、一年で7200分(5日分)、仮にもう30年働くならば、3600時間、つまり約半年分の自由時間があなたの人生に追加されることになります。(16)

現役時代に仕事でどれだけ実績を上げたとしても、会社を離れてしまえば、そんなもの何の価値もありませんし、むしろ残業ばかりして、家庭や趣味、そして友人に対して時間を使ってこなかったツケは、定年後、必ず自分の身に降りかかってきます。(17)

恐らく、人生の最後を迎える段階で、もっと会社に居ればよかった、もっと残業しておけばよかったと後悔する人はいないと思いますが、本当にそう思っているのであれば、今日ぐらいは、こんな記事をダラダラ見ていないで、7時間労働でしっかり17時には会社を出ましょう。

人生を充実させるためにも、仕事以外にもっとやることがたくさんあるはずです。

■参考書籍

◆1.ピョートル・フェリークス・グジバチ 「世界一速く結果を出す人は、なぜ、メールを使わないのか グーグルの個人・チームで成果を上げる方法」SBクリエイティブ、2017年 Kindle◆ 2.山田昭男「稼ぎたければ、働くな。」サンマーク出版、2012年 Kindle ◆3.山田 昭男「日本一社員がしあわせな会社のヘンな“きまり” 」ぱる出版、Kindle ◆4.勝川 俊雄「魚が食べられなくなる日」小学館、2016年 Kindle ◆5.渡邉 格「田舎のパン屋が見つけた『腐る経済』」講談社、2013年 Kindle
◆6.緒方 知行・田口 香世「セブン-イレブンだけがなぜ勝ち続けるのか」日本経済新聞出版社、2014年 P60 ◆7.ピーター・ティール/ ブレイク・マスターズ「ゼロ・トゥ・ワン 君はゼロから何を生み出せるか」NHK出版、2014年 Kindle ◆8.天外伺朗「日本一労働時間が短い“超ホワイト企業”は利益率業界一!山田昭男のリーダー学 」講談社、2014年 Kindle ◆9.山田 昭男「ホウレンソウ禁止で1日7時間15分しか働かないから仕事が面白くなる」東洋経済新報社 、2012年 Kindle ◆10.山田 昭男「ホウレンソウ禁止で1日7時間15分しか働かないから仕事が面白くなる」東洋経済新報社 、2012年 Kindle ◆11.星野 佳路「数値で管理すべきは結果よりプロセスである DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー論文」ダイヤモンド社、Kindle ◆12.山井 太「スノーピーク『好きなことだけ! 』を仕事にする経営」日経BP社、2014年 Kindle ◆13.P・F. ドラッカー 「プロフェッショナルの条件―いかに成果をあげ、成長するか 」ダイヤモンド社、2000年 Kindle ◆14.小室淑恵「労働時間革命 残業削減で業績向上! その仕組みが分かる」毎日新聞出版、2016年 Kindle ◆15.小室淑恵「労働時間革命 残業削減で業績向上! その仕組みが分かる」毎日新聞出版、2016年 Kindle ◆16.山田 昭男「山田昭男の仕事も人生も面白くなる働き方バイブル」東洋経済新報社、2015年 Kindle ◆17.吉越 浩一郎「君はまだ残業しているのか」PHP研究所、2012年 Kindle

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