シアトル市街から車で30分くらい行ったところにフリーモントという場所は、1990年代、ものすごく治安が悪い場所でした。
そこで治安改善のために、パブリックアートを飾るプロジェクトが始まり、設置されたのが、今では観光名所にもなっている「フリーモント・トロール」
アートの存在が直接治安を良くしたという明確な根拠があるわけではありません。
しかし、芸術とは言語ではなく想像のコミュニケーションであり、芸術家が人と人とのふれあいからクリエティブなものをつくるのだとしたら、アートが街の治安を良くするというのは、何となく分かる気がします。
アートは芸術家の表現の仕方によって、人々の日々のコミュニケーションの方向性を変えることができる。
経営者が美術館によく行くと言われるのも、芸術家の表現を通じて、固まりきってしまった自身のコミュニケーションを別の良い方向へ向けるためなのでしょう。
「心が変われば、行動が変わる。 行動が変われば、習慣が変わる。 習慣が変われば、人格が変わる。 人格が変われば、運命が変わる」という有名な言葉があるように、道を通るたびに接触するアートによって、そこに住む人々の心が少しずづ変わっていったのかもしれません。
芸術家が才能を伸ばすために一番必要ものは「絶望」などと言われますが、そういった意味では、芸術と治安の悪さは相性がいいものなのかもしれない。
アラブのお金持ちが大金を出して、アートを所有したがるのは、アートを持つことが豊かさの象徴であり、心を変化させるすごい力を持っているからだ。
北欧に行った時に、どんな安いホテルでも部屋にアートが飾ってあったのが印象的でした。
根っこから悪い人なんてほとんどない。
その人が悪くなってしまった原因があるとすれば、どこかで、周りの人たちとのコミュニケーションの方向性がズレてきてしまったからだろう。
きっと、アートはコミュニケーションを良い方向に正す力があるんだろうな。