October 18, 2015
村上春樹というビジネスアスリート「もし忙しいからというだけでランニングをやめたら、間違いなく一生走れなくなってしまう。」

日本は世界屈指の睡眠が短い国として知られ、食事や運動なども含めて、社会が健康よりも仕事を優先させるような雰囲気を作り出しているような気がします。とにかく欧米のマネをしていればよかった時代は、多少、健康を犠牲にしても、何とか根性で乗り切ることができましたが、欧米のマネではなく、常に新しいことが求められ、体よりも脳が資本になる時代には、自分の健康を最優先に考え、常に最大のパフォーマンスが出せるように気を配らなければなりません。

例えば、普通の人は月曜日の朝を100%のパフォーマンスで迎えますが、夕方には70%、夜になれば50%に落ちていき、疲れを残したまま翌日を迎えると、火曜日の朝は70%からスタートで、また疲れを溜め込んで、水曜日の朝は40%からのスタートと、土日にしっかり体を休めるまで、毎日、毎日、仕事のパフォーマンスは落ちていってしまいます。(1)


↑月曜日の朝は100%、火曜日の朝は70%、そして水曜日の朝は40%の状態から始まる。(Andrew Stawarz)

疲れを翌日に残さず、働いた量ではなく、仕事の質を意識するためには、食事の取り方や睡眠の質、そして運動する習慣を持つことが必要ですが、オバマ大統領やビル・ゲイツを食事をあまり取らない超少食派、村上春樹は小説家になって以来、20年以上ランニングを続け、そして、アマゾンのジェフ・ベソスはどんなに忙しくても1日8時間の睡眠を取るようにしており、健康への投資の仕方は人それぞれ違いますが、ただ結果を出す人ではなく、「結果を出し続ける人」は常に明日が試合だと心得て、アスリート並みの健康管理を行うことが当たり前になってきているようです。(2) (3) (4)


↑仕事の質を意識するのであれば、アスリート並みの健康管理を行う。(Phil Roeder)

例えば、私たちの体は何かを食べた時、消化に70%ものエネルギーを使うため、肉などの消化の悪いものを食べれば、無駄に疲れますし、実は空腹を感じてからの3時間は頭が最も冴え、集中力が上がるとも言われており、星野リゾートの星野佳路さんも「体が重いと発想も重くなる気がする」として1日1食、あの日本一働くと噂されていたジャパネットたかたの高田明元社長も昼食のみの1日1食主義だったと言います。(5) (6)

最近では、仕事のパフォーマンスを上げるために、朝食は食べない方がよいとも言われますが、実際、朝4時から昼の12時までの8時間は体の中の老廃物を外に出す時間であり、体が一生懸命いらないものを外に出そうとしている時に、また胃の中に食べ物を放り込んだら、内蔵は混乱してしまいますし、朝起きた時に口の中がネバネバしているのも、体がいらないものを外に出そうしているから起こる現象の一つです。(7) (8)


↑朝4時から昼の12時までは、体内の要らないもの徹底的に外に出す時間。(Armando Sotoca)

また最近では、「カロリーゼロ」、「糖質ゼロ」などをうたった飲食品が増えていますが、カロリーの代わりに含まれている人口甘味料には、余計に甘いモノがほしくなる「甘みの中毒性」や気分が落ち込む「抑うつ」 、そして思考力低下などの様々な副作用が報告されており、コロンビア大学の調査によれば、人口甘味料を使用したソーダを毎日飲んだ人たちは、飲んでない人たちに比べて、脳卒中や心筋梗塞を発症するリスクが43%も高く、「カロリーあり」を飲んだ人たちにはこのようなリスクは見られなかったと言います。(9)


↑カロリーゼロの飲食品の方が、実は体に悪い。

さらに、人間の三大欲求は食欲、性欲、そして睡眠欲だと言われますが、日本人の睡眠時間は世界でも圧倒的に低く、また、イギリスのコンドーム・メーカーが26カ国、2万6000人を対象に行った調査によれば、週一回以上セックスしている人の割合は、日本がダントツ最下位であることも考慮すると、睡眠欲と性欲が満たされなくなった分、脳が食の快楽に暴走し、スナック菓子などを食べる人が最近ではどんどん増えて、日本人の体調は悪化するばかりです。(10)


↑日本人は睡眠と性欲が満たされないため、脳が食の快楽に暴走する。

特に欧米では太っていると自己管理ができない人だと見なされ、同じように日本でもカロリーや糖質を気にするビジネスマンも多いですが、太るか太らないかはカロリーの量ではなく、”代謝できるかどうか”によって決まり、代謝とは食べたものを消化・分解して必要な栄養素を体内に取り入れ、不要なものを外に出すという一連の生命活動のことで、代謝できる体さえ整っていれば、カロリーが高く、食べる量が多くても太らないのだそうです。(11)

きれいに代謝される食べ物の黄金比は、米6:野菜3:肉(魚・卵)1の割合で、特に玄米は白米と野菜を一緒に食べているようなものですので、6割玄米を食べていれば、他のおかずはそれほど気にする必要がなく、この黄金比を守った食事が多ければ多いほど、「健康の貯金」ができて、快楽食(あまり体によくない食べ物)を食べたときのダメージを吸収できるということになります。


↑米6:野菜3:肉(魚・卵)1を守れば、守るほど「健康の貯金」が貯まる。(Carol Lin)

また作家や芸術家は食生活が悪かったり、女遊びに明け暮れるイメージがありますが、村上春樹さんは長期小説を書くことは、机の前に座って、神経をレーザービームのように一点に集中する肉体労働だとして、自身の食生活を次のように述べています。(18) (19)

「うちはとにかく野菜と魚が中心です。とくに野菜をたくさん食べます。たまに肉を食べます。ご飯は酵素玄米を食べています。調味料はできるだけ自然素材を使っています。そして腹七分目くらいを量の目安にしています。寝る前の三時間には何も食べないように心がけています(ときどき例外もありますが)。かなりシンプルな食生活ですよ。」


↑村上春樹の食事も米6:野菜3:肉(魚・卵)1の割合に限りなく近い。

もちろん、ビジネスマンであれば、会食などの付き合いもあり、当然スイーツを食べたくなる時もあると思いますが、常に100点満点を取る必要はなく、しっかりと「健康の貯金」を作っておけば、人生を楽しむために自分の好きなものを食べても問題ないですし、従来、日本人は「ハレとケ」という生活のバランスをしっかりと意識していて、冠婚葬祭や年中行事などの特別な日(ハレの日)には、普段は口にしない肉や酒などたしなみ、それ以外の日(ケの日)は、ご飯や味噌汁などの質素な食事で、体内の貯金をしっかりと作っていました。(12)


↑「健康の貯金」を作って、食べる時は、しっかり食べる。(Yuichi Sakuraba)

また、ビジネスでも人は見た目が9割とも言われ、どのような水を飲むかで、その人の見た目が大きく変わると言います。

「ミネラルウォーター」と聞けば、誰でもミネラルを含む水だと思うかもしれませんが、日本産と欧州産のミネラルウォーターとの間では、天と地ほどの差があり、日本の農林水産省はボトルに入れた水をすべてミネラルウォーターとして扱い、ミネラルを含まない水、ミネラルを人工的に加えた水、そして、殺菌剤を加えた水など、ボトリングされた水は、すべてミネラルウォーターと呼んでも問題ないことになっているため、「殺菌処理をした水は体にプラスにならない」と考える欧州産のエビアンやヴィッテルなどの天然水と日本産のミネラルウォーターの間では、栄養素などの部分で大きな違いがあるようです。(13)


↑同じ水でも、日本産と欧州産の水では天と地ほどの差がある。(Antoine K)

土地が変われば水も変わると言って、昔の日本人は飲み水にはかなり気を使っていました。江戸時代の演劇史上に残る名優、歌舞伎役者の坂田藤十郎は、大阪で舞台に立つ時には、自分の生まれた京都の水をわざわざ旅館に届けさせて、その水でご飯を炊かせたと言われており、健康以外にも水は、記憶力や思考力にも影響が出てくるなど、様々なリサーチ結果が報告させています。(14)


↑水は記憶力や思考力にも大きく影響する。(Yuu Kogetsu)

食事と平行してビジネスマンに重要なのが運動ですが、実は一日中「座り続ける」ことは、喫煙よりも体に悪く、世界的に見ると、運動不足で亡くなる人は、喫煙で亡くなる人よりも多いらしいですが、テルアビブ大学の調査でも、長時間座っている人は、脂肪細胞をお尻蓄えてしまうため、お尻が大きく、どうしても一日中座って作業しなければならない人は、20分ごとに2分軽く歩き、血糖値を安定させる必要があると言います。(15)

20分ごとに立ち上がって歩いていたら、集中できないと思う人も多いかもしれませんが、クリエイターの高城剛さんはiPad Miniを持ち歩き、歩きながら原稿を書くことも多いらしいですし、むしろ創造力を必要とする知的作業であれば、定期的に歩いた方が生産性が上がり、スウェーデンでは立って仕事をするために、机の高さを自由に調節できる電動昇降デスクが国内75%のオフィスに導入されています。


↑まだ座って仕事をしてるの?(Juhan Sonin)

村上春樹さんは33歳からジョギングを始める前は、一日60本もの煙草を吸っていたそうですが、ジョギングと小説を書くという作業は、基本的に「勝ち負け」がない自分との戦いで、ジョギングや小説を書くモチベーションに関しても、それは外部に求めるものではなく、確実に自分の中に持っておくものだとして、次のように述べています。(16) (17)

「もし忙しいからというだけで走るのをやめたら、間違いなく一生走れなくなってしまう。走り続けるための理由はほんの少し しかないけれど、走るのをやめるための理由なら大型トラックいっぱいぶんはあるからだ。僕らにできるのは、その”ほんの少しの理由”をひとつひとつ大事に磨き続けることだけだ。」

「体力が落ちてくれば(これもあくまで一般的に言えば、ということですが)それに従って、思考する能力も微妙に衰えを見せていきます。思考の敏捷性、精神の柔軟性も失われてきます。」


↑走るのをやめる理由なら大型トラック一杯分ぐらいある。(Ed Yourdon)

また最近の研究によれば、脳内にある海馬でニューロンが生まれる数は、ジョギングや水泳などの長期的な有酸素運動を行うことによって飛躍的に増加することが分かっていますが、新しく生まれたニューロンも、そのままにしておくと、28時間後には何の役に立つこともなく消滅してしまうため、その生まれたばかりのニューロンに知的な刺激を与え、それを活性化させて、脳内のネットワークに結びつけることで、普通ではない独創的な発想を生み出すことができるようになります。(20)

「つまり肉体的運動と知的作業との日常的なコンビネーションは、作家のおこなっているような種類のクリエイティブな労働には、理想的な影響を及ぼすわけです。」(村上春樹)


↑肉体的運動と知的作業の日常的なコンビネーションが新しいものを生み出す。(Paul)

そして、何だかんだで一番軽視されやすいのが睡眠ですが、日本大学医学部の内山真教授の研究によれば、睡眠不足からくる日本の経済損失は年間約3兆5000万円で、医療費を含めると5兆円以上になると推測されており、科学誌サイエンスのリサーチでも、睡眠不足の人が毎日もう1時間睡眠を取るようにすれば、収入が600万円増えた時よりも幸せになれるということが明らかになっています。(21) (22)

カフェインは約8時間ほど体内に残るため、寝つきをよくするためには、午後2時以降、または就寝8時間前はコーヒーなどを飲まないようにすることが大切です。

さらに最近大きな問題になっているのが、9割の人が就寝1時間前にPCやスマホの画面を見ていることで、これらの電子機器の発光はメラトニン分泌量を最大20%抑制し、寝つきを確実に悪くします。(23) (24)


↑就寝前にスマホのスクリーンを見続けると、睡眠の質が下がる。(Alexander Rentsch)

村上春樹さんは小説家にとって、一番重要な素質は「才能」だと述べていますが、これは自身ではなかなかコントロールすることが難しいとして、次に重要なものを自分の持っている限られた量の才能を、必要な一点に集約して注ぎ込める「集中力」だと指摘しており、小説家になって午後10時には就寝し、朝5時前に起きて、集中して小説を書くようになったことで、ナイトライフなど、人々の誘いを片っ端から断らなければならず、人間関係が悪くなったことについて次のように述べています。(25)

「本当に若い時期を別にすれば、人生にはどうしても優先順位というものが必要になってくる。時間とエネルギーをどのように 振り分けていくかという順番作りだ。ある年齢までに、そのような システムを自分の中にきっちりこしらえておかないと、人生は焦点を欠いた、めりはりのないものになっ てしまう。(中略) 僕の人生にとってもっとも重要な人間関係とは、特定の誰かとのあいだというよりは、不特定多数の読者とのあいだに築かれるべきものだった。僕が生活の基盤を安定させ、執筆に集中できる環境を作り、少しでも質の高い作品を生み出していくことを、多くの読者はきっと歓迎してくれるに違いない。」


↑質の良い作品を生み出すために人間関係を犠牲にする。読者はきっと歓迎してくれるだろう。(kоnstantin)

とは言っても、食事、運動、そして睡眠と今まで何十年も続けてきた生活習慣を変えることは、そんな簡単なことではありませんし、食べ物にしても、今食べたものが自分の体のコンディションに出始めるのには、約半年という時間がかかります。(26)

昨日、引退を表明したボクシングの亀田興毅さんが、引退直後のインタビューで「早く焼肉が食べたい」と言っていましたが、村上春樹さんが言うように「思考」も立派な肉体労働であり、早起きやジョギングも良いものを作るためのプロセスなのであれば、新しい時代のビジネスマンにも、アスリート並みの体調管理は間違いなく必要ですし、ただ根性にまかせてひたすら働き続けるという古い概念は早くどこかでリセットする必要があります。


↑人生は短い。疲れたまま目をかけている時間はおそらく必要ない。(WorldSeriesBoxing)

ただ、食べ物や生活習慣を変えることは、あくまで手段に過ぎず、真の目的は、もっと良い親になること、もっとクリエイティブなアーティストになること、そしてもっとパワフルで有能な経営者になることだということを忘れてはいけません。

村上春樹さんが言うように、忙しいというだけで、不健康な生活を送っていたら、一生不健康のままですし、ベッドはお金で買えても、睡眠は買えず、食べ物はお金で買えても、健康は買えませんし、当然のことながら、高いジムのメンバーシップもお金で買えるかもしれませんが、運動量を買うことはできない、そう考えれば、人生で本当に大切なものは全部タダ、ある意味、人生というのは、本当によくできています。

※主な参考
1.(一流の人はなぜそこまで、コンディションにこだわるのか?/上野啓樹・俣野成俊) Kindle P211 2.(できる男は超少食―空腹こそ活力の源 !/船瀬 俊介) Kindle P24 3.(走ることについて語るときに僕の語ること/村上 春樹) Kindle P145 4. (なぜ一流の人はみな「眠り」にこだわるのか?/岩田 アリチカ) Kindle P195 5.(ハイパフォーマー思考/上野 啓樹) P23 6.(できる男は超少食―空腹こそ活力の源 !/船瀬 俊介) Kindle P16 7.(ハイパフォーマー思考/上野 啓樹) P44 8.(一流の人はなぜそこまで、コンディションにこだわるのか?/上野啓樹・俣野成俊) Kindle 739、760 9.(カロリーゼロにだまされるな―本当は怖い人工甘味料の裏側/大西 睦子) Kidle P492 10.(ポテチを異常に食べる人たち~ソフトドラッグ化する食品の真実~/幕内秀夫) P134〜P135 11.(好きなものを食っても呑んでも一生太らず健康でいられる寝かせ玄米生活/荻野 芳隆) P23 12.(好きなものを食っても呑んでも一生太らず健康でいられる寝かせ玄米生活/荻野 芳隆) P18 13. (正しい水の飲み方・選び方―100歳まで元気に美しく生きる鍵/藤田 紘一郎) P50〜P52 14. (体をつくる水、壊す水 ~10年後に差がつく「水飲み”腸”健康法」30の秘訣~/藤田 紘一郎) P89-90、P161-163 15. (座らない! 成果を出し続ける人の健康習慣/トム・ラス) P56 16.(職業としての小説家/村上春樹)  P170 17.(走ることについて語るときに僕の語ること/村上 春樹) Kindle 999 18.(走ることについて語るときに僕の語ること/村上 春樹) Kindle1080 19.(村上さんのところ コンプリート版/村上 春樹) Kindle 34589 20.(職業としての小説家/村上春樹)  P171 21.(サード・メトリック しなやかにつかみとる持続可能な成功/アリアナ・ハフィントン) Kindle P1295 22. (なぜ一流の人はみな「眠り」にこだわるのか?/岩田 アリチカ) Kindle P275 23.(シリコンバレー式 自分を変える最強の食事/デイヴ・アスプリー) P162 24.(座らない! 成果を出し続ける人の健康習慣/トム・ラス) P140 25.(走ることについて語るときに僕の語ること/村上 春樹) Kindle 564 26.(一流の人はなぜそこまで、コンディションにこだわるのか?/上野啓樹・俣野成俊) Kindle P234

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