イギリスで2000人を対象に行ったパワポの調査によれば、22%がパワポを使ったプレゼンを聞くと6分以内に聞く気が失せ、10分後には、48%がプレゼンとは関係ない食べ物や他のプライベートのことを考え始めるのだと言います。
加えて、ニューサウスウェールズの調査によれば、パワポに既に書いてあることをもう一度口頭で喋って、聞き手に伝えようとすると、聞き手の理解度が下がるのだそうで、ハーバード大学の調査でも、パワポでプレゼンをすることは、会社のブランドイメージを下げることに繋がるのだそうです。
世界では毎日3000万回のパワポを使ったプレゼンが行われていますが、パワポに頼れば頼るほど、相手に何かを伝えようという気持ちの本気度は下がっていく。
アップルの社員がスライドを使って説明しようとすると、1分もしないうちに、ジョブズが「スライドが必要なのは、自分の話していることが分かっていない証拠だ。」と怒鳴りつけたのは有名な話です。(1)
↑パワポのプレゼンは6分で聞く気が失せる。(Photo by Flickr_Mike Murry)
パワポの使用を禁止したアマゾンのジェフ・ベゾスは、「この決定は、恐らく、これまでの中で最もスマートな決定だった。」と述べている。
パワポが登場した頃は、プレゼンを効率良く進めていくという意味で、画期的なツールでしたが、説得される側も進化してきており、もうキレイなビジュアルやグラフを見ても一ミリも感動しなくなってしまいました。
むしろ、本気度を示すためには、パワポで下手なリスクヘッジをしようとせず、自分が本気で惚れ込んでいることを、素の言葉で、一瞬の隙もく表現しなければなりません。
幻冬舎の見城徹さんは、20代の頃、憧れの石原慎太郎さんの仕事をするために、『太陽の季節』と『処刑の部屋』の全文を暗記し、初対面の時、石原さんの前で暗唱することで、自身の本気度を伝えたのだと言います。(2)
↑パワポでリスクヘッジをせず、本気で惚れ込んでいることを、素の言葉で。(Photo by Flickr_TEDxIHEParis)
ジャパネットたかたの高田明さんは、電子辞書を売る際に、リンカーンの演説を暗唱したところ、30分で一億円近い売上が上がったのだそうです。(3)
また、パワポ嫌いとして知られるイーロン・マスクは、パワポのプレゼンを聴いて仕事をした気になっている企業の幹部達に対して、「自社のプロダクトやサービスを最高のものにするために、現場に行け。会議室に行くのは悪いことが起きた時だけだ。」と批判している。
ITツールは使い方を正しく理解していないと逆に効率を落としてしまいますが、パワポは仮に正しい使い方をしたとしても、聞き手に悪影響を与えるツールなのかもしれません。
Note
1.桑原晃弥『amazonの哲学』大和書房、2019年 2.見城徹、藤田晋『憂鬱でなければ、仕事じゃない』講談社、2013年 3.高田明『伝えることから始めよう』東洋経済新報社、2017年
参考書籍
■木谷哲夫『成功はすべてコンセプトから始まる』ダイヤモンド社、2013年
Eye Catch photo by Flickr_TED Conference