November 24, 2014
5年後、上司はいなくなって、あなたは複数の会社に属することになる。

多くの人たちが薄々気づいていることなのかもしれませんが、「企業」というものが経済の中心になる時代は終わりに近づいているのかもしれません。

実際、1970年には約50年あった会社の寿命は2008年には10.3年、現在では確実に10年を切っていると言われており、日本のトップマーケッターとして知られる神田昌典さんは、2024年までには会社という組織は無くなるだろうと述べています。(2022- これから10年、活躍できる人の条件 P147)


↑もうすぐ会社組織は「20世紀」の遺産になる。(Pic by Flickr)

企業の中でも「人材」と「人財」という言葉を使う人がいます。

人材とは費用であり、人財とは資産のことですが、「人件費が高騰して大変だよ。」と、社員を人材として管理し、何とか上手くマネージメントして、結果を出させようとしているところが、「失われた20年」という終わりなき不況から抜け出せない一番の原因なのかもしれません。

実際、まだまだ日本の企業の多くが、「20世紀の工業社会モデル」を21世紀の知識社会型の世の中に無理矢理当てはめようとしており、タイムカードで勤怠を管理したり、部署ごとに部長、課長と机を並べ、隣や前を見えるようにすることで無駄話をしていないかなどを厳しく監視することに時間とコストを使っています。(知られざる職種 アグリゲーターP47)


↑ついでに「管理すること」も20世紀の遺産リストに追加。(Pic by Flickr)

小学生や中学生なら授業をしっかりと聞いているかどうか、厳しく監視する必要があるのかもしれませんが、常に業界のトップを走り続ける企業は、「社員を初日から大人扱い」するのが当たり前であり、「じゃあ何時から何時まで働いて下さいね。」とか、「君の席はここです」、「有給は何日です」などは一切決めていない企業もどんどん増えているそうです。

スティーブ・ジョブズは次のように述べています。

「本当のチームワークとは監視をせず、それぞれの人がそれぞれのパートを責任を持ってやり遂げることを言います。彼なら絶対にできると信用することが本当のチームワークなのです。」


↑監視をせずに最高のモノが生み出されるエコシステム、それが本当のチームワークだ。(Pic by Flickr)

「社員をサーフィンに行かせよう」で有名なパタゴニアの創業者、イヴォン・ シュイナード氏は従業員が一番商品に厳しい消費者であることが必要と考えており、社員を管理するという概念は創業当時からなかったそうです。

「もの凄く賢くて、”自立した人”を雇う。これは非常に大切です。ある時、心理学者がパタゴニアを調査してこう言ったんです。”あなたの会社の従業員は自立心が強すぎて、他の企業では絶対に採用してもらえないでしょう”ってね。人を雇ったらトレーニングなんて必要ありません。彼らの好きにやらせましょう。良い波が来たらサーフィンに行く。次の休日じゃあダメなんです。」(イヴォン)


↑行きたい時に行こう!次の休日ではダメなんです。(Pic by Flickr)

20世紀の工業社会モデルの中で個人とは企業に「属する」ものでしたが、21世紀の企業は、「個人を支援してくれる器」になっていき、優秀な人が入りやすく、さらに出ていきやすい環境を作っていくことが本当の企業価値になっていきます。

さらに個人も大学卒業という免許で一生食っていこうと考えるのではなく、常に努力し、緊張感を持って企業や同僚の期待に応えていかなければならないため、優秀な人を引きつける企業文化と常に期待に応える個人がお互いを尊重しあえる環境が21世紀の職場には必要ではないでしょうか。(知られざる職種 アグリゲーターP47)

企業が個人を支援する器になり、個人が企業という枠を超えて様々な場所で活躍する世界では、「私は○○のプロフェッショナルです。」という言葉はもうお守りに過ぎません。

「自分がプロだ」と信じるあまり、時代の変化を直視できず、突然仕事を失ってしまうことがいつ起きても不思議ではない世界に現在シフトしつつあります。


↑企業をは「個人を支援してくれる器」になっていく。(Pic by Flickr)

逆に考えれば、一つの企業や業種に縛られず、いち個人が自由な表現をできる時代になったとも言えます。

マイクロソフトの最高技術責任者(CTO)であったネイサン・ミアポルドさんは料理の世界に転職しましたし、世界のリゾートの概念を大きく変えたスリランカ人建築家のジェフリー・パワは、もともと弁護士で建築家に転職したのは38歳の時でした。(高城剛 21世紀、10の転換点 P43)

全く別の業界に転職しなくても、「作家」+「料理人」や「営業職」+「農家」など2つ以上の仕事を組み合わせたり、同時平行して進めていくことで、それが他社にはマネできない競争力を生み出したり、業界全体のイノベーションに繋がっていくことは十分に考えられます。


↑マイクロソフトCTOから料理の世界へ。(Pic by Flickr)

良くも悪くも、ルーチンワークを言われた通りに行っていたり、夜遅くまで残っているだけでは、「こいつは頑張っている」と評価される時代は終わり、これからの時代は仕事を「見つける」のではなく、自分で仕事を「発明」していかなければなりません。

かつて岡本太郎さんは「芸術」と「芸時」の違いを述べていたそうですが、「芸術」とは、ほかの人が受け入れてくれるかどうかを気にせず、新しさや自らの主張そのものを尊重するのに対し、「芸時」は、過去に正しいとされた形を継承していく姿勢を大事にしているそうです。(知られざる職種 アグリゲーターP84)


↑「芸術」とは自らの主張そのものを尊重するもの。(Pic by Yahoo blog)

21世紀に生きる人たちは当然のことながら、「芸術」を提供していく必要がありますが、明日、突然会社から「好きなようにやってみろ!」と言われたところで、ルーティン業務を中心にこなしていた体をどう動かしたらよいのか分からない人も多いのではないでしょうか。

これからは企業ではなく、個人の時代だと言われますが、企業が社員の凝り固まっている筋肉を柔軟体操でほぐし、多様な分野で活躍できるところまで持っていくことで、その「人」を中心に外部から新しい風がどんどん入ってきます。


↑鈍りきったから体を企業がどうほぐしてあげられるかが本当に重要。(Pic by Flickr)

自分の理想やビジョンを掲げてひたすら前進しようとする人にとっては、素晴らしい世の中になりつつありますが、ルーチンワークや言われた仕事を淡々とこなしてきた人達は大きな変化に直面せざるをえません。

昨日発売されたMr.Childrenの曲の中にこんな歌詞がありました。

「今という時代は言うほど悪くない。また一歩。次の一歩。靴ひも結び直して。」

今まで何十万円とかけて作っていたものが、インターネット上で無料で公開され、何気なくやっていた仕事は賃金の安い海外に流れていったり、ロボットや機械に代行され始めています。

「20世紀の工業社会モデル」という明らかに靴ひもがほどけた状態で歩き続けるのは危険かもしれませんが、靴ひもを結び直して、「21世紀の知識型社会」を歩こうという覚悟を持つことができれば、それほど悪い時代ではないのではないでしょうか。


↑靴ヒモを結び直せば、今という時代は言うほど悪くない。(Pic by Youtube Capture)

フランス大統領の特別補佐官を務めたジャック・アタリは、ロンドン、ニューヨーク、そしてアムステルダムのように世界の中心として存在し続ける都市があると述べ、このような都市と比較して東京の可能性についても触れています。

アタリ氏は東京に関して、「世界に共通する普遍的な価値を創造する力が弱い」と指摘しており、「日本人は、個人の自由に対する意識が弱いため、結果的に活発に活動できる場所ができない。」と述べています。(知られざる職種 アグリゲーターP96)


↑ジャック・アタリ「日本人は意識が弱いから都市が発展しない。」(Pic by Flickr)

どれだけ医学が発展しようと僕たちは永遠に生きることはできませんが、歴史という資産は次の世代に受け継がれ、都市は永続していきます。

その時代に生きた人が投資したり、周りから受けたインスピレーションを文化として次の世代に引き継いでいかなければ、建物や商業施設は残っても、都市としての価値はどんどん衰退していくことは過去の歴史が証明しています。

Mr.Childrenが歌を通じて伝えようとしているように、今という時代は言うほど悪くはありません。新しい時代に向けて靴ヒモを結び直して、次の世代に引き継ぐことができる普遍的価値を生み出していく必要があります。

幕末の同志、戦後の先輩たちがそうしてきたように。

(Eye Catch Pic by Flickr)

/FASTEN