ハーバード大学の意思決定センターという機関の調査によれば、「希望」という感情は「絶望」という感情の後にしか生まれないのだと言う。(1)
流産の悲しみを経験し、それをしっかりと受け止めた人ほど、人としての深みが増し、目に見えない強いメッセージのようなものを受け取れるようになるのだと言います。
スポーツの世界では、これまで試合に勝って喜びを爆発させたり、思ったような結果が出ずいつまで悲しんだりしているのは、あまり良い事とはされていませんでした。
しかし、最近では、イメージトレーニングの効果が重要視されるようになってきており、自分のイメージ通りのプレーができた時は思いっきり感情を爆発させ、イメージ通りのプレーができなかった時は、しっかりと悲しみを味わっておくことが、イメージトレーニングの効果を劇的に高めることにつながっていくのだと言います。(2)
↑イメージ通りのプレーができたら、正直な感情を表現しておく。
また、ある調査によれば、性欲を抑えようとすれば、さらに性欲が増すのと同じように、悲しみから無理に逃れようとすればするほど、悲しみは長引くのだと言う。
進化心理学者ポール・W・アンドリューは、これだけ人類が進化しても、悲しみという感情が無くならないのは、人間の認知面でメリットがあるからなのだと言います。(3)
悲しみという感情があることで、自惚れや見たくない物事から目を背ける可能性が低くなっていくため、長い目で見れば、しっかり悲しんでおくことが、様々な面でプラスに働いていくのだとも言える。
一番良くないのは、悲しみをしっかりと消化せず、希望を見出せないままズルズル行ってしまうこと。
↑しっかりと悲しんでおかないと、悲しみは長引くことになる。
ある心理学者は、「いまのあなたの悲しみの80%は親のせい、20%は自分のせい」なのだと言います。(4)
つまりは、自分の中でしっかりと消化しなかった悲しみは、次の世代に引き継がれるという意味ですが、元を辿れば、親のせいである80%のうちの80%は親の親(祖父母)のせいと言うことにもなるため、自分の世代でしっかりと悲しみを消化し、希望に変えておかなければ、悲しみの感情は世代を超えてどんどん長続きしていってしまいます。
よくお金と幸せ・成功が結びつけて考えられますが、どれだけ大金があったところで、悲しみから逃れることはできないという意味では、人生は上手く設計されているのでしょう。
悲しみを知らないのは未完成の人生とも言われます。確かにその通りなのかもしれません。
Note
1.ノ・ジェス『心感覚』イースト・プレス、2021年 2.前嶋 孝『成功するためのイメージトレーニング』ゴマブックス株式会社、2005年 3.アーサー・C・ブルックス『人生後半の戦略書 ハーバード大教授が教える人生とキャリアを再構築する方法』SBクリエイティブ、2023年 4.池川 明『胎内記憶が教えてくれた この世に生まれてきた大切な理由』青春出版社、2020年
参考書籍
◾️オリバー・バークマン『ネガティブ思考こそ最高のスキル』河出書房新社、2023年 ◾️加藤 諦三・ドロシー・ロー・ノルト『子どもを伸ばす魔法の11カ条 アメリカインディアンの教え』扶桑社、2020年