January 22, 2015
年収は「住むところ」で決まる。

通信手段やクラウドツールなどの発展によって、一つの場所に束縛されなくなり、IT業界などでは地理的条件や場所は、もう重要ではなくなったという声が大きくなっきています。

PC一台あれば田舎でも同じ仕事ができると、都心を離れて行った人も多いようですが、むしろ時代の流れはそれと逆行しており、ITの発展が進めば進ほど、都市に移り住む人はどんどん増えてきているように思います。


↑PC一台で仕事はできても、都市の人口はどんどん増え続ける。(Pic by Flickr)

オックスフォード・エコノミックの「出張費に100円投資することが、1250円の収益を生み出す」という調査があるように、人間は対面で顔を合わせた時に、一番クリエイティビティを発揮し、テック・クランチの記事では、旧来の技能はアウトソーシングや機械によって自動化される可能性があるが、クリエイティブな技能はそれが難しく、現在では不況の影響を受けにくい最も安定した仕事だと述べています。


↑人間は対面で顔を合わせた時、一番クリエイティビティを発揮する。(Pic by Flickr)

リンクトインの調査によれば、2011年末までユーザーが自分自身を表現するために最も頻繁に使用した言葉は「クリエイティブ」だったそうですが、最近誰もが頻繁に使う「クリエイティブ」とは一体どういう意味なのでしょうか。

アインシュタインは自分の仕事を「組み合わせ遊び」と表現し、それは情報、知覚、そして材料を取捨選択し、新たに有益な組み合わせを考える作業だと述べ、スティーブ・ジョブズもクリエイティビティとはただの「組み合わせ」で、それは創るというより、新しい組み合わせを見つけるだけの事と定義しています。


↑クリエイティビティなんか、ただの「組み合わせ遊び」(Pic by beforeitsnews)

もしアインシュタインやジョブズの定義が正しく、人間が対面して会話する時、一番クリエイティビティを発揮するのであれば、物理的な場所を共有せず、地方で一人PCに向かって仕事することは、これからの時代大きなリスクなってくるのかもしれません。

グーグルは豪華な福利厚生を提供し、従業員を一つの窮屈な場所に押し込めることでイノベーションを起こし続け、グーグル元CEOのエリック・シュミットはグーグルのオフィスについて、「窮屈で散らかったクリエイティビィティの培養皿のようなキュービクルがところ狭しと並んでいる場所」だと述べていました。


↑グーグルのオフィスは窮屈で散らかったクリエイティビィティの培養皿 (Pic by Flickr)

従って、アウトソーシングや機械の自動化ができないクリエイティビティが経済の中心になる21世紀は、クリエティブな人が物理的な「場所」を共有する必要があり、ゲイや外国人、そして何より「組み合わせパーツ」になりうる変わり者を歓迎する都市が、今後栄えていくの可能性があります。

トロント大学のリチャード・フロリダ教授によれば、クリエティブな人たちは何も仕事がある場所に移住するのではなく、自分のありのままを認めてくれたり、自由でいられる場所を目指してどんどん移動し続け、今日では「どこに勤めるか」よりも、「どこに住むか」が、アイデンティティーの重要な要素になってくると述べています。


↑ゲイや外国人、そして「変わり者」が多い街へ移り住め (Pic by Flickr)

もし、 あなたが自分のクリエイティビティに自信がなければ、まず住む場所を変えることが一番効果的なのかもしれません。

アメリカ史上有数の大がかりな社会実験である「ムービング・トゥ・オポチュニティー(MTO)」は、1994年から1998年の間にアメリカ主要都市の貧しいエリアに住む1788世帯を無作為に選んで、家賃クーポンを渡し、比較的貧困度が軽い地域へ引越しをしてもらいました。

10年後、研究チームがその家庭を訪問したところ、健康状態や幸福度に大きな変化が現れており、貧困度が軽い地域へ引越した人たちは食生活を改善して、よく運動するようになり、肥満、糖尿病、そして抑鬱に悩まされている人の割合が格段に小さかったそうです。


↑「住む場所」が与える影響は思ったより大きい。(Pic by Flickr)

クリエティブな人達に囲まれていると、自分自身もよりクリエティブになり、生産性が上がることは様々な調査が伝えており、ハーバード大学は同医学部の研究者たちが発表した医学論文をすべて洗い出し、共同執筆者たちの研究室の間の距離を調べたところ、それが1キロ未満だと、質の高い論文が書かれている傾向にあることが分かりました。

もちろん、これと逆のことも起こりえます。イェール大学のジェーソン・フレッチャー氏の調査によれば、社交範囲内に喫煙者が10%増えると本人の喫煙率も3%上昇するそうで、良くも悪くも私たちは、「物理的な距離」に大きな影響を受けていることになります。


↑優秀な人と物理的な場所を共有することで実力は自然と上がる。(Pic by Flickr)

ベンチャーキャピタルの世界でも、この物理的な距離を重要視しており、オフィスから車で20分以内に所在していない企業には投資しない「20分ルール」というものがあります。

ある研究によればベンチャーキャピタルと新興企業の地理的な距離が広がれば広がるほど、投資される確率は急激に落ち込んでいくらしく、シリコンバレーに移住してくることが投資の条件という場合も多いようです。


↑投資家の20分ルール「物理的な場所共有することが投資の条件」(Pic by Flickr)

性別、人種、国籍、ゲイ、そして変わり者が同じ物理的な場所を共有することで、様々なものが組み合わさり、イノベーションが起きていく。

21世紀は工場のような物理的資本が多くあったり、天然資源の豊富な地域が発展していくわけではなく、多様性にあふれ、クレイジーな人にオープンな都市、または地域に人が集まり、そこからのイノベーションが一番の経済価値になっていきます。


↑クリエティブな人は猫の群れのように自分を認めてくれる街へと移り住む。(Pic by Flickr)

トロント大学のリチャード・フロリダ教授は次のように述べています。

「シリコンバレーが特別なのは、スタンフォード大学があるからでも、気候が温暖だからでもなく、クリエティブで異質な、正真正銘の変人に対してオープンであり、協力的な環境があったからこそ、シリコンバレーは特別な場所となったのである。シリコンバレーは風変わりな連中を集めることに成功した。彼らを追放することも、彼らの希望の芽を摘み取ることもしなかった。」


↑正真正銘の変人に対してオープンな場所だからこそ、リスキーで新しいことがどんどんできる。(Pic by Flickr)

もしかすると、次の時代の起業家の役割は偉大な企業を作ることではなく、偉大な「地域」を作ることなのかもしれません。

2009年にアマゾンに約1000億円で買収されたザッポスのCEO、トニー・シェイは衰退しつつあるラスベガスの再建に乗り出しました。

トニーはザッポスの従業員にできるだけオフィスの近くに住んでほしいと、多額の資金を投じて周辺地区有数の高層ビルと50戸のマンションと賃貸契約を結び、住宅手当を支給する形で従業員にマンションを貸し、小型ジェット機のレンタル会社と提携してコンピューター技術者や起業家がシリコンバレーからラスベガスに移動しやすいようにインフラを整えました。

そして、「街中のバーやレストランは、社外の会議室 となり得る」として、地元のベンチャー企業もできるだけ近くに固め、アートフェスティバルなどにも積極的に投資して、クリエティブな人たちを世界中から呼び寄せています。


↑本社を作 ろうという考えから、街を作ろうという考えへ。(Pic by Flickr)

「フラット化する世界」を書いたトーマス・フリードマンは、ITネットワークやツールが発達して、世界中どこにいてもイノベーションに参加できると述べました。

しかし、古代ソクラテスの時代から、変わり者の人間が同じ場所を共有し、衝突し合うことでイノベーションが生まれ、人類を先の時代へ進めてきたことを考えると、人間の本質はそんな簡単には変わらないのではないでしょうか。


↑変わり者の頭脳が衝突し合うことで、人類を先に進めてきた。(Pic by Galleryhip)

チームラボの猪子さんも頭脳の衝突を大切にしており、「ヤフーも辞めたでしょ。ノマドなんて辞めようよ」と述べていますが、インターネットが教えてくれたことは直接顔を合わせて、頭脳と頭脳を衝突させる重要性を再度認識させてくれたことでしょう。

直接会っても、スマホに目がいってしまっては意味がありませんが、本当に物理的な場所の障壁がなくなるのは「どこでもドア」ができる22世紀まで待たなければならないのかもしれません。

今回の記事はリチャード・フロリダ氏の「新 クリエイティブ資本論」「クリエイティブ・クラスの世紀」、そしてエンリコ・モレッティ氏の「年収は住むところで決まる」を参考にしました。

どれも興味深い本なので、是非読んでみて下さい。

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