May 31, 2018
努力の9割は約5年後に報われる。だから、「努力」は「夢中」には敵わない。

9割が挫折すると言われる営業、英語、ブログ、起業、そして、ダイエットなどを始めようとする時、どうしても「すぐに効果出る」という言葉にすぐ飛びついてしまいがちです。

その理由は、どれだけ「努力は報われる」という言葉を信じて頑張ってみても、成果というものは2倍努力したところですぐ2倍の結果がついてくるわけではないため、結果が出ないまま、どんどん精神的な体力だけが消耗していく日々は、誰でも一度は経験したことがあるでしょう。

特に起業などは、会社を設立した瞬間、フェイスブックに「◯月◯日に会社を設立させていただきました!!」と華々しいデビューを飾り、「おお!ついに!」、「すごい!」などというコメントがエンドレスに並びます。

まるで、すでに成功して上場でもしたかのような雰囲気につつまれますが、残念ながら起業というのは創業した瞬間から出血が始まり、努力すればするほど成功から遠ざかる日々が何年も続くことになるのです。



何でも大抵の場合、努力のリターンというものは毎年確実に少しずつ実るものではなく、下記の「Jカーブ」のようにスタートした当初は、努力すればするほど結果の出ない深みにハマっていき、あるポイントを超えると一気に急上昇して止まらない勢いで成長していくのだと言います。

これはもちろん、起業だけではなく、英語、ダイエット、そしてブログなど、すべての挫折ビジネスにも言えることですが、ほとんどの人は「努力すれば、必ず結果が出る」と信じて物事をスタートさせ、一ヶ月、半年、一年と結果が出ないことにどんどんやる気を失い、「浮上期」を迎える前に諦めてしまうのでしょう。



もちろん、努力を開始してすぐ諦めてしまう人は論外だと言えます。

しかし、興味深いことに、人々が一番諦めてしまいやすい時期というのは、急成長が直前に見えているのにも関わらず、それまでの苦労が溜まりに溜まって限界に近づき始めている「浮上期」なのだそうです。

「浮上期」は「あと、ちょっとでマネタイズできる!!」、「もう数ヶ月頑張れば結果出る」と周りにいくら伝えても、「いい加減そんなプロジェクト終わりしろ!いくらお金を使ってると思っているんだ!」と批判も最高潮に達している時期でもあるため、この時期に諦める人が多いというのは十分納得がいきます。



実際、10社中9社は潰れると言われるスタートアップ企業のほとんどは、この「浮上期」を迎える前に、ゴールが見えないキツさや精神的な疲労が原因で途中で諦めてしまうことでしょう。

ペイパルの元CEOで、現在はシリコンバレーの投資家でもあるピーター・ティールは一般企業の企業価値の2/3は10年から15年後に生じてくると述べており、Twitter、Airbnb、そして、Facebookなどの企業価値が75%〜85%になるのは2024年以降だと指摘しています。

実際、ティールは1998年に創業したペイパルの価値が最大化されるのは2020年頃だと予測しました。



世の中には勢いでスタートして20代の時は全然結果が出ず空回りしていたのに、30代になってあるポイントを超えて「浮上期」を迎えると、次々の成功を重ねて止まらなくなる人がいますが、やかんに入れた水と同じように、努力の費用対効果はとにかく熱を加えて熱し続ければ、いつか自動的に沸点を迎えて沸騰するものなのでしょう。

実際、アップルを甦えらせたと言われているiPodやiMacはアップルが倒産寸前とまで言われた時期に開発されていたもので、努力の深みが深ければ深いほど、「顕在期」を迎えた時の跳ね返りは大きいとも言えます。

基本的に努力を始めた当初、努力すればするほど深みにハマって苦しくなる「潜上期」「下降期」「ボトム期」を耐え切って、努力すればするほど結果が出る「顕在期」を迎えるためには、一番生産性の高い自分が好きだと思えることをやっていくしかありません。

Airbnb、Facebook、そして、Paypalなど「顕在期」を迎えて、止まらない勢いで成長している企業に共通していることは自分の好きなこと、もしくは自分が本当にほしいと思うものをつくるために無我夢中で取り組んだからでした。

20世紀は相手、つまりお客さんが喜ぶものをどうつくるかを考えることが大事でしたが、21世紀は自分の好きなものをどう創り続けていくかを考えることが「顕在期」を迎えて、努力をスケールさせる一番のポイントだと言えるでしょう。

「努力」が「夢中」に叶わないというのはまさにこのことなのかもしれません。



恐らく、会社経営、営業、ブログ、そして英語など、9割の人が途中で諦めてしまうことをやり抜いた経験がある人は、少なからずとも、どこかで「Jカーブの法則」の存在を感じ取っているのではないかと思います。

2倍の努力が2倍の結果になってすぐに返ってこなくても、時間軸を通じていま行っている努力がいつ実かが法則として分かっていれば、ゴールが決まっているマラソンのように努力し続けるモチベーションを保つことができます。

努力のスタート時は、運命が努力しようとするあなたに味方をしてビギナーズラックをくれますが、残念ながらその後は努力をすればするほど、どんどん苦しくなっていく期間がしばらくは続くことでしょう。



イチローはサントリー『ザ・プレミアム・モルツ』のインタビューで、「努力は報われるますか?」という質問に対して次のように答えています。

「報われるとは限らないですね。もっといえば、努力と感じている状態は、まずいでしょうね。その先に行けば、きっと人には努力に見える。でも、本人にとってはそうじゃない…という状態が作れれば、それは勝手に報われることがある…ということだと思います。」

勝手に報われることがある。まさに努力とは「Jカーブ」が示すように熱を与え続ければ、いつか勝手に沸騰するお湯のようなものなのかもしれませんね。

参考書籍

▪︎野崎美夫「普通の人が天才になれる! Jカーブの法則」フォレスト出版、2010年 ▪︎トーマス・ラッポルト「ピーター・ティール 世界を手にした『反逆の起業家』の野望」飛鳥新社、2018年 ▪︎スティーブ・ウォズニアック「アップルを創った怪物―もうひとりの創業者、ウォズニアック自伝」ダイヤモンド社、2008年

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