April 22, 2020
タバコよりも一日中座っている方が何倍も身体に悪い。アップルCEOが「座ることは、次の時代のガン」だと断言。

All photos illustration by Leading Company

アップルのCEO、ティム・クックは「座って仕事をすることは、次の時代のガンを生み出す」として、本社1万2000人の従業員全員に対して、スタンディング・デスクを用意しました。

1日8時間座って仕事をしていたとしても、毎日ジムに行って運動をしているから大丈夫だと言う人も多いかもしれません。

しかし、アメリカのフレーダート病院が、2223人の参加者の1日の座っている時間と心肺機能などを調査した結果によれば、座る時間が1時間増えるごとに、運動の効果は16%も減少してしまうのだと言います。


↑運動しても、座っている時間が長ければ、その効果は薄れてしまう。

ペニングトン生物医学センターのマーク・ハミルトン博士も「運動すること」と「座ること」は別の概念だと述べ、むしろ、健康に関して意識しなければならないのは、「運動している時間」よりも、「座っている時間」なのは間違えなさそうです。

現代の社会では、一般的な人は一日9.3時間座り、これは寝ている時間よりも座っている時間の方が長いことになります。

もともと、人間の身体というのは、座るようにはデザインされておらず、狩りや作物を収穫したりするなど、常に動き回っていることを前提に身体がデザインされてきました。




↑人間の身体は常に動き回るようにデザインされている。

100年前の暮らしであっても、水を飲みたければ外出しなければなりませんでしたし、誰かと会話をしたければ、近所の家まで出向く必要があったことでしょう。

しかし、21世紀に入って、リモートワークが当たり前になり、さらにはアマゾンやUberEatsなどで買い物をすることも日常化してくると、ほぼ一日中座っているという日常が当たり前になってきます。

世界では、平均約41%の人達が一日中座りっぱなしの生活をしているのに対して、日本人はその割合が65%とかなり高く、これも長い間、日本企業の生産性が上がらないと言われる大きな要因であることは間違いないのでしょう。(1)(2)

ステッパーを使って、太ももとふくらはぎを刺激すると、集中力が高まって、記憶力が25%も上がる。



オーストラリアのビクトリア大学が、8950人の女性を対象に行った調査によれば、一日7時間以上座っている人は、一日4時間以下の人に比べて、うつ病にかかる確率が47%も高いのだと言います。

また、アメリカン疫学ジャーナルの調査でも、毎日座って仕事をし続けることで、糖尿病、心臓病、そして、肥満になる確率が18%も上がるのだそうです。

さらに、イギリスの調査では、もしイギリス人が毎日立って仕事をしていれば、イギリス全体の死者の約11.6%にあたる6.9万人が亡くならずに済んだだろうと言われるくらいですから、座ることが想像以上に様々な病気に広がっていくことがよく分かります。


↑立って仕事をすれば、様々な病気のリスクを減らせる。

1950年には、勤務時間の9割を座って過ごすバスの運転手を対象にした調査も行われました。

バスの運転手と歩きながら観光地を案内するツアー・コンダクターの健康を調べたところ、バスの運転手の方が、心臓発作になる確率が2倍も高いことが発覚。

こういった調査を見ると、なぜアップルウォッチが1時間おきに「軽く動いて下さい!」とわざわざ通知してくるかがよく分かります。


↑座り続けることは次の時代の癌。

スタンディング・デスクと合わせて、足下で簡単な有酸素運動ができるステッパー を組み合わせて使うと、さらに生産性を上げることが可能です。

人間の第二の心臓とも言われる太ももとふくらはぎの筋肉を刺激することで、脳に血液がどんどん送られ、集中力が高まっていく。

イリノイ大学の調査では、単語を覚える前に10分程度の軽い運動をすると、記憶力が25%も上がるという結果が出ており、実際、自分も毎日ステッパーに乗りながら英単語を覚えていて、以前よりも集中力が上がるのは身をもって感じているところです。

結局、何をするにしても、世の中が平和で自分の身体が健康でなければ始まりません。

ビジネスマンは1回の風邪をひくだけでも、4万4000円の損失が出るという調査もありますが、そういった意味では、自分の健康を1%でも高めてくれるものは、躊躇せずにどんどん投資していくべきなのだろう。(3)


↑ステッパーで第二の心臓を刺激する生産性はどんどん上がっていく。

大体、人間の悩みとは、お金、人間関係、健康の3つしかありません。

たとえ、お金持ちになれなくても、健康な身体さえを持っていれば、一生お金には困らない事と同等の価値があるものだと考えれば、健康への投資に躊躇する理由は見つからないでしょう。

リモートワークの習慣化まで、60日「もう、立って仕事をする快感が忘れられなくなる。」



アップル以外にも、ゴールドマンサックス、オラクル、HP、グーグルなどの様々な企業がスタンディング・デスクを取り入れ、スタンディング・デスクの売上は近年どんどん伸びています。

ウィルスが世界中に広がり、働き方が強制的に変化していく中で、効率がいいのは分かっていたけど、色々と理由をつけて実行されてこなかったリモートワークやZOOM会議などが急にOKになり始めている。

2ヶ月間、同じ行動を続けると、それが一つの習慣になるという調査がありますが、自宅待機の期間が長くなり、リモートワークが当たり前になれば、通勤、スーツ、そして、自宅で立って仕事をするという快感は忘れられなくなっていくことでしょう。


↑2ヶ月間リモートワークをすれば、それが日常になる。

アップルのように時代に合わせて、少しずつ働き方を変えていければ、それに越したことはありません。

しかし、とにかく一つの目標に向かって、一致団結することが得意な日本企業にとっては、いい意味でも、悪い意味でも、外部の強い圧力がなければ、なかなか変わることはできないのだろう。

iPhoneでも、iPadでも、導入するのは、企業よりも個人の方が圧倒的に速いのですから、スタンディング・デスク一つにしても、会社よりも先にどんどん自宅で試していくべきなのです。

きっと、働き方改革とは、政府や企業が実行するものではなくて、個人が自宅で実行していくことだったのでしょう。

参考書籍

■1.坪田一男『1日6時間座っている人は早死にする!』(ベストセラーズ、2013)P104 ■2.佐々木さゆり『座りっぱなしが、あなたの健康を蝕む 本当は怖いデスクワーク』(日本実業出版社、2016)P10 ■3.裴英洙「一流の人はなぜ風邪をひかないのか?――MBA医師が教える本当に正しい予防と対策33」ダイヤモンド社、2018年

/JUST-GET-UP