June 22, 2015
5,000人のグーグル社員が行う瞑想「何とかなる。それはやることをちゃんとやってる人のセリフ。」

多くの人が夢見た通り、私たちの生活は数十年前とは比べものにならないほど良くなり、基本的なインフラが整ったことで、時間や場所を超えて、世界中の誰とでもリアルタイムでコミュニケーションが取れるようになりましたが、リーマンショック以降、従業員の60%以上が以前より労働時間が長くなったと答えており、スマートフォンなどが普及したことによって、仕事とプライベートの境目もどんどん曖昧になってきています。

さらに、必要なものがすべて揃うと、時代の最先端を行く企業では、当然のことながら、「世界をあっと言わせるアイディア」や「まだ世の中にないサービスや製品」を生み出すことが求められ、ビジネスマンは頭と体をフル回転させながらも、スピードと結果が求められる環境に、日々ストレスを感じていることは紛れもない事実です。


↑常にプレッシャーに追われ、本当の力を出せずにいる (Emilie Barbier)

実際、「ストレスがあるのは、忙しい証拠で名誉なことだ」と考える企業もまだまだ多いですが、グーグルやナイキ、そしてマッキンゼー&カンパニーなど、常に時代をリードする企業では、考え方が少しずつ変わり始めており、最近では、ゴールドマン・サックスがストレス軽減のため、インターンの働く時間を短くしたり、新人アナリストに対して、週末に勤務しないように呼びかけているニュースも見かけます。


↑スピードを落とさず、ストレスを溜めず、どうイノベーションを起こし続けるか (VFS Digital Design)

グーグルでは、2007年に「サーチ・インサイド・ユアセルフ」という「マインドフルネス」のプログラムを立ち上げ、これをきっかけにして、グーグルでは瞑想に興味を持つ社員が増え、今では5000人以上のグーグラーが瞑想を実践するという規模にまで成長しています。

マインドフルネスとは、私たちの頭の中に生じる様々な考えを、それに心を動かされることなく観察する力のことで、研究によれば、瞑想を通じたマインドフルネスは、免疫系の能力を高め、集中力を向上させ、そして脳神経の結びつきを再構成するなど様々な効力があり、ジムでバーベルを上げれば筋肉がつくように、瞑想を実践すればするほど、人間の心は強くなると言います。


↑精神力は、筋トレをするように鍛えることができる (premasagar)

ハーバード大学の発表によれば、人間の心は平均して47%もの時間、目の前の物事に集中しておらず、冷蔵庫に牛乳がない、猫に餌をやったけ、フェイスブックに投稿したポストの反応が気になるなど、心は別のどこかを彷徨っており、このような「心の乱れ」が不幸になる直接の原因になると、フランス人僧侶のマチュー ・リシャール氏は述べています。

心理学者のエレン・ランガー氏によれば、人間の生き方というのは、すべて「心が集中した状態」で行われるか、「心が集中していない状態」で行われるかのいずれかしかなく、キューバの革命家チェ・ゲバラが、「人は毎日髪を整えるが、どうして心は整えないのか」と言ったのはあまりにも有名です。


↑髪型より、心を整えろ (trabajadores)

瞑想は一呼吸ごとに集中のための筋肉が鍛えられていき、スタンフォード大学の調査では、瞑想の練習が人間の苦痛を軽減させることが証明されており、ある会社で7週間、瞑想とマインドフルネスの訓練を受けたあと、通常通りオフィスで仕事をしてもらったところ、従業員たちは日々の仕事に優先順位をつける作業に、より時間を割くようになり、非生産的な活動を遠ざけるのが上手になったと言います。


↑心を整えたことで、非生産的時間は明らかに少なくなった (xamanu)

スティーブ・ジョブズが瞑想を行っていたことは良く知られていますが、アップルが上場した直後、若干26歳のジョブズは、あるアップル製品の熱狂的ファンが集まるイベントに招待されます。

主催者とイベント開始10分前まで雑談をしていたジョブズですが、突然、「悪いけどちょっと失礼するよ」と言って姿を消し、ジョブズ登場まであと4分前という状況になってても、ジョブズの姿はどこにも見当たりません。

焦った主催者がバックステージを探し回ると、散らかった舞台裏の一角に、身体をまっすぐに伸ばし、壁を向いて微動だにしないジョブズの姿を見つけました。

その時、ジョブズは自分の人生でもっとも重大な瞬間のために瞑想しており、主催者がしばらくじっと見つめていると、ジョブズは立ち上がって、主催者に笑顔を向けながら、ステージに向かって歩き始めたと言います。(マインドフル・ワーク)


↑本当に大事な瞬間のために、すべてのエネルギーを集中させる (Fabrizio Furchì)

通算11回、チームを全米チャンピオンに導き、プロバスケットボール界で最も成功したコーチと言われているフィル・ジャクソンは禅の考え方を徹底し、すさまじいプレッシャーの中でも、コンマ何秒で決断しなければならない選手のために、呼吸法から思考、そして感情の気づきをもたらすトレーニングまで、様々なことを教えていきました。


↑レーカーズの監督に就任した時、一番の問題点は選手の集中力の短さだった (Bridget Samuels)

ジャクソンは筋力トレーニングや走り込みも大事だが、メンタルの強化も同じぐらい大事だとして、バスケットボール界のスーパースター、マイケル・ジョーダンやコービー・ブライアントにも瞑想の指導をし、最近では最優秀選手賞を4度受賞したレブロン・ジェームズがタイムアウト中に瞑想している姿がYoutubeで人気となっています。


↑トップアスリートはメンタル的にも準備を欠かさない (Youtube)

ストレスや不安は自動反応であり、求めなくても向こうから勝手にやってくるものです。

進化の歴史をさかのぼれば、ストレスはある時期にはとても有効で、サイに追いかけられた時、私たちを走らせてくれるのはストレスのおかげですが、現在の生活の中でサイに追いかけられることは考えにくく、逆に私たちを不安にする情報や周りのプレッシャーばかりが増えているため、瞑想で自分自身をリラックスさせることで、過去や未来を手放し、「現在に存在すること」に集中していなかければなりません。


↑瞑想を極めれば、体をリラックスさせるプロセスが自動的に起こるようになる (Mitchell Joyce)

マッキンゼー・アンド・カンパニーでは、マルチタスクで迅速に情報を処理すれば、より多くのことを成し遂げられるはずだと信じられていましたが、脳は一つのタスクに集中するように設計されており、科学的にマルチタスクが人間の生産性や創造性を著しく低下させることが実証されたため、社内で瞑想への取り組みが進むようになりました。

ビル・ゲイツもマイクロソフトを創業した当時、決して一度に二つ以上のことには取り組まず、必ず一つのことに全力を傾けており、まだビル・ゲイツが有名になる前、エレベーターの中でたまたまジョン・レノンと一緒になった時も、彼の頭には一にも二にもソフトウェアのことで、全く興味を示さななかったと、共同創業者のポール・アレンが自伝の中で述べています。


↑ソフトウェアにすべてを集中させていたビル・ゲイツは、ジョン・レノンを見ても「ふーん。」 (OnInnovation)

アドビのオフィスでも、マインドフルネスは自分のバッテリーを「再充電」することであり、コーヒーで自分を無理やり奮い立たせる代わりに、豊かで長続きする集中力とエネルギーを引き出す方法として、上級プログラムマネージャーのスコット・アンターバーグは次のように述べています。

「ラテを飲んでシャキッとさせ、カフェイン地獄で一日の終わりには神経過敏になって生産性を落とす代わりに、ちょっと休憩して頭をクリアにし、また仕事に戻る方がずっといい。」


↑コーヒーで無理やり元気になっても、長期的なモチベーションとは全くの無関係 (basibanget)

40年以上にわたりマインドフルネスの研究をしてきたハーバード大学のエレン・ランガー博士は、マインドフルネスは新しいアイディアを促進させると述べていますが、グーグルをはじめとする世界の名だたるIT企業がマインドフルネスの考えを取り入れているのは、当然、創造性を必要としているからであり、グーグルでは役職よりも、アイデアや説得力によって、社内の上下関係が決まるのだそうです。


↑マインドフルネスを取り入れているのは、アイデア勝負の会社 (opacity)

最近では、世界的に有名なアプリ「ヘッドスペース(Headspace)」を使えば、いつでもどこでも瞑想する環境を作ることができますが、実際に瞑想を始める人は本当に少なく、始めた人のごく一部の人だけが瞑想を続け、さらにその中のほんの一部の人が最後まで取り組むと言われています。

「最後」というのは、その人が死ぬ時なのか、心が穏やかになった時なのか定かではありませんが、中には心を鍛えるため、2年ほど隠れ家に隠遁(いんとん)し、1日12時間以上、瞑想している人たちも多いそうで、ジョブズも定期的に隠遁しないと心が落ち着つかず、1997年にアップルに復帰したとき、泥沼のような問題に足を取られて、隠遁の時間が取れなくなったことが、健康問題の原因になったと近い友人に話していたそうです。(ぼくがジョブズに教えたこと)


↑ヘッドスペースはヴァージン航空とコラボ。もう「どうして、自分の荷物だけ出てこないんだ」と怒ることはない。(shinyshiny)

フランス人でありながら、仏教の道に進み、現在もネパールで修行を続けるマチュー ・リシャール氏は、最後に「怒り」を感じたのは25年前だそうで、ダライ・ラマもポルトガルに行ったとき、至る所で建設工事が行われいるのを見て、次のように述べたそうです。

「もし、あなたが居心地の良いハイテクのマンションの100階に住んでいても、内面が酷く不幸だったら、飛び降るための窓を探してしまうでしょう。」


↑内面的な幸せと外面的な幸せ、どちらを優先するか (INDIVIDUELL MÄNNISKO)

多くの人は何十年も学校に通い、教養を身につけ、ジョギングや食生活に気を使って、美貌を維持するためにあらゆる努力をしますが、「心の動かし方」ということには驚くほど無関心で時間をかけようとしません。

瞑想などと聞くと、ちょっと宗教臭い感じがしてしまいますが、万有引力がニュートンに発見されたからといって、それがイギリスのものではないように、仏教が起源であるマインドフルネスは、精神の栄養剤というものではなく、人生のすべての瞬間の品質を決定するものであり、むしろ西洋社会の方が関心が高いのかもしれません。


↑エマ・ワトソンも瞑想アプリ「ヘッドスペース」の愛用者 (UN Women)

ジョブズは素晴らしい発明をしても、1円も儲けられなかった発明家が歴史上数多くいたことを理解していましたし、グーグルの創業者ラリー・ペイジは、自分のアイデアをビジネスにすることができず、無一文で亡くなった科学者ニコライ・テスラの伝記を子供の頃に読み、悲しくて泣いてしまったそうです。(ちなみにテスラ・モーターズの「テスラ」の由来もニコライ・テスラ)

スポーツ選手にも、本番の試合になると急に実力が出せなくなる選手がいますが、本田圭佑選手は、試合前は一切口を開かず、精神を集中させていることは有名ですが、実力や運に加えて、ビジネスやスポーツでも常に結果を出す人たちと、そうでない人の違いは、精神的な部分がかなり大きいのかもしれません。


↑悲しいじゃないか、せっかく発明をしたのに (Scott Beale)

童話ムーミンに登場するミーは、「何とかなる。それはやることをちゃんとやってる人のセリフ。」という名言を残していますが、心の準備まで整えて完璧なのであれば、本来の実力を出せず、かなり損をしているビジネスマンの方もかなり多いのではないでしょうか。

準備万端のつもりでも、実力の7割しか出せていないのであれば、まだまだ準備不足です。

Eye Catch Pic by opacity

参考:「グーグルのマインドフルネス革命」「マインドフル・ワーク」「サード・メトリック」

/MINDFULNESS