May 7, 2016
原爆が落とされ、次々と人が亡くなっていく中で、みそ汁を飲み続けた人たちが、後遺症も残らず全員助かったという事実。

よく、「海外で◯◯が体に良いことが医学的に証明された。」「ハリウッド女優の◯◯が健康のために毎日◯◯を食べている。」といったニュースや記事が様々なところで出回っては、消えていきます。実際、欧米人と日本人では体質が大きく異なり、食物や気候風土によっても違いが出てくるため、欧米で研究された栄養学が、そのまま日本人に当てはまるとは考えられません。

日本人には、日本人に合った食生活が必ずあるはずなのですが、1945年8月、長崎に原爆が落とされた時、爆心地から1400mしか離れていない聖フランシス医院の内科医長であった秋月辰一郎博士は、病院に次々と運ばれてくる被爆者と病院のスタッフに玄米と野菜、そして、わかめのみそ汁の食事を厳格に守らせたことで、他の病院では何人もの患者が放射能被ばく障害で亡くなったにもかかわらず、秋月博士の病院では一人の犠牲者も出さずに済んだという有名な話があります。


↑欧米の栄養学が、日本にそのまま当てはまることはまずない。

中でも秋月博士が注目したのは、日本古来から伝わる「みそ」で、みそには良質の油脂とミネラルが含まれており、これらが放射能の害から被爆者を守ったことで、その後も原爆症やがんで亡くなった方はいなかったとして、秋月博士は次のように述べています。(1)

「患者の救助、付近の人々の治療にあたった職員に、いわゆる原爆症が出ない原因のひとつは、ワカメのみそ汁であったと私は確信している。放射能の害を、ワカメのみそ汁がどうして防ぐのか、そんな力がみそ汁にどうしてあるのか。…… 私は科学的にその力があると信じている。」


↑原爆症が出なかった一番の理由は「ワカメのみそ汁 」

通常、高いレベルの放射線量を浴びると、体内で新しい細胞が生まれにくくなるため、様々な障害が発生し、大量の放射線を一度に浴びた場合は中枢神経の機能が破壊され、1、2日で死んでしまいますが、みそを食べることで細胞の生まれ変わりが早くなり、原爆での生存率を高めたと考えられます。

このことから、1986年のチェルノブイリ原発事故が起こると、秋月博士の「長崎原爆記」が翻訳され、当時のソ連や欧州の人々が食卓にみそが広がり、日本からのみその輸出量が爆発的に伸びました。


↑みそが細胞の生まれ変わりを早め、放射線からの身を守る。

著名な武将は、いずれも有名なみその産地の出身で、織田信長、豊臣秀吉、そして、徳川家康は八丁みそや三州みそ、武田信玄は信州みそ、伊達政宗は仙台みそなど、歴史に名を残した多くの武将がみその産地で生まれており、徳川家康は日本人の平均年齢が37.8歳であった時代に、75歳まで長生きしましたが、彼は根菜が3種、葉物野菜が2種入った具たくさんのみそ汁を毎日飲んでいました。

広島大学名誉教授の渡邊敦光氏によれば、みそを食べていると細胞の生まれ変わりが早くなり、さらにはみそ汁には脳の新陳代謝に欠かせないタンパク質とビタミンB郡が含まれているため、みそ汁を飲むことで頭の回転がよくなると言います。


↑著名な武将はみその産地で育っている。(jpellgen/Flickr)

みそはすでに1695年に書かれた「本朝食鑑」という本の中でも、医学的にすばらしい食材だとされており、みそは体を温め、通便をよくし、そして吹き出物などが出るのを防ぐなどの効果があるとされています。

また最近では、乳がんの発生率を防ぐ効果もあることが分かっています。みそ汁を1日1杯未満しか飲まない人のガンのリスクを1とすると、1日3杯以上飲む人のガンのリスクは0.6で、単純に考えても、1日3杯みそ汁を飲むことで、乳がんのリスクは40%も下がることになります。(3)


↑もう300年以上前から日本人の健康を支えるみそ。

みそ汁は副腎皮質ホルモンや抵抗物質のようにすぐに効果があるものではありませんが、現在、日本人の食文化が多様化し、みそ汁の栄養素を軽視する人が増えてきています。

実際、みそ汁を食べない理由にみそ汁が嫌いだということは極めて少なく、厳密に言うと、みそ汁を毎日食べるから健康なのか、健康だからみそ汁が好きなのかははっきりしません。それでも、みそ汁と病気にかからないことには重大な因果関係があるとして、秋月博士は次にように述べています。(4)

「味噌は調味というより、変な言い方ではあるが”調味料”といった方がいい。すべての食品の栄養価を栄養価だけ発揮させうる食品というべきであろう。」


↑みそは食品の栄養価を栄養価だけ発揮させる調味料。

また、秋月博士によれば、日本人の食事で一番問題なのは「ミネラル不足」で、欧米人は牛乳からミネラルを摂取しますが、日本人は野菜海藻類からミネラルを摂る必要があり、みそ汁にワカメを入れるだけで、一度に大量のミネラルを摂ることができます。

体質とは、生まれた時に受け継いだものと、私たちが日々創っていく体質との2つがありますが、この「創っていくもの」は環境や食べ物など、その民族が従来住んでいる土地に密接に関係しています。

言い換えれば、みそのようにもう何百年前から食べられている食品は、それだけ尊いもので、驚くほど長い間、日本人の体調を支えてきましたが、戦前はドイツ、戦後はアメリカを師として、日本人は何百年も続いてきた食生活を自ら放棄してしまいました。


↑食生活も政治も、そして文化も、すべきことは欧米から脱却 。

広島大学の渡邊敦光氏によれば、みそ汁を毎日2杯飲むことで、様々な病気のリスクを下げることができると言います。

一生健康でいたいという欲求は誰も望むことですが、がんにならないためには、あれとこれを食べて、高血圧や糖尿病にならないためにはこれにも気をつけてと、毎日考えていては疲れてしまいます。

しかし、「みそ汁を毎日2杯飲むだけよい」と思えば、食べ物に気を使いすぎることなく、もっと創造的なことに時間を使うことで、もっと充実した人生を送ることができるのではないでしょうか。

健康に関して、一度服用すれば、すぐに効果があるものなどありません。もしあったとしても、それは後になって大きな害を及ぼすことが圧倒的に多いですが、人間も「老いる」というプロセスは止められなくても、日々の食事によって長寿を保ち、いつも若々しくいることは可能なのです。

それもたった毎日2杯のみそ汁で。

参考:1.秋月辰一郎「体質と食物―健康への道」(地方・小出版流通センター、1980年)P22-23 2.渡邊敦光「味噌力」(かんき出版、2015年) Kindle P1009 3.渡邊敦光「味噌力」Kindle P546 4.秋月辰一郎「体質と食物―健康への道」P31

/MISO