まだ、ネットが普及しておらず、情報へのアクセスが限られていた時代、人々は長い年月をかけて脈々と受け継がれている物語の中で、自分を幸福にしてくれる物語を一生懸命探し、その物語の一部になろうとしたのだと言う。(1)
スマホが当たり前に行き渡ると、「これからは、企業に属さなくて良い時代だ」、「ネット環境さえあれば、世界中どこでも自由に生きていける」などと言った、自分を喜ばせる都合の良い物語ばかりを信じるようになっていき、チープな物語が暴走し始めます。
↑ネットがなかった時代、人々は脈々と受け継がれる物語の一部になろうとした。(Pic by LC)
断片的に見れば、確かに、グローバル化は加速し、会社に属さなくても、一人で仕事をこなしていける時代になってきていることは事実なのだろう。
しかし、世の中の変化が大きければ、大きいほど、目先の都合の良い物語よりも、長い年月をかけて脈々と受け継がれている物語が大切になってくるのではないか。
15世紀からはじまった大航海時代は、現在と同じように、これまで触れたことのない人や文化に触れ、世界の視野が一気に広がった時代でもありました。
ところが、大航海時代には、むしろ、こういった新しいものに触れた時に生じた異文化とのズレが、自分たちのアイデンティティを見つめ直すきっかけとなり、自身のルーツである神話を希求する行為につながっていったのです。
↑世界が広がれば広がるほど、神話を希求する。(Pic by LC)
イギリスの歴史学者、アーノルド・J・トインビーは、「自国の神話や歴史を学ばなくなった民族は、100年以内に必ず滅びる。」と言いました。
GHQが神話教育を禁止したのが、1945年頃だと考えると、2045年まであまり多くの時間は残されていません。
数理物理学を専門とする保江邦夫さんは、日本独特の湿気こそが、神のエネルギーの密度であり、外国から日本に帰ってきた時に、「ああ、帰ってきたなぁ」と感じるのは、湿気を通じて、日本人が神の存在を認識しているのだと言います。(2)
↑神話を学ばなくなった民族は100年以内に必ず滅びる。()
100年続いてやっと「文化」と認識され、「ギリシャ神話」がヨーロッパの精神文化の古典とするならば、1300年ものの古事記を再インストールすることが、現在、進行中の日本の様々な問題を解決するキッカケになっていくのかもしれない。
世界が広がれば、広がるほど、自身のアイデンティティのズレを埋めるために、神話を求めるはず。
そう言った意味では、本当の意味での国際人などは、日本にほとんどいないのかもしれません。
Note
1.鴻上尚史「世間ってなんだ」講談社、2022年 2.矢作 直樹, 保江 邦夫, 迫 恭一郎『「からだ」という神様 新時代における心身の癒し方』ビオ・マガジン、2019年
参考書籍
■楠木 建『室内生活 スローで過剰な読書論』日経BP 日本経済新聞出版、2023年 ■吉野敏明『ガンになりたくなければコンビニ食をやめろ!』青林堂、2022年