僕たちは、どこかのお店に行く時、別に店員さんの笑顔を見るために行くわけではなく、何か買い物をしたり、食事をしたりするためにお店に行きます。
でも、人間とは不思議なもので、常に他人との心の触れ合いを求めており、お店の人の温かい気持ちに触れてはじめて、「このお店は良いお店だな!」、「また来たいな!」と感じるものなのです。
食事の後にサービスでコーヒーを出したり、お店の家具や照明などに気を遣うことで、顧客満足度を上げることはできるかもしれませんが、最終的にそのお店が印象に残るか、残らないかは、どれだけお店の人の温かい心に触れられたかにかかっていると言ってもいい。
そういった意味では、商品が一定のレベルに達したら、次は間違いなく「人」に投資していかなければならないのでしょう。
人間は仕事ができるから給料が高くて、毎日が幸せなのではなく、毎日が幸せだからこそ、お客さんにも親切にできて、売上も上がっていくのだとしたら、経営者は従業員満足を上げることによって、顧客満足度を上げていく必要がある。
スターバックスはコーヒーの豆にかかる費用よりも、従業員に支払う健康保険の費用の方が高いと言いますが、従業員がお客さんに対して温かい気持ちで接してほしいのであれば、福利厚生などを通じて、従業員が不安に感じるようなことをできるだけ取り除いてあげることが重要なのだろう。
2009年にアマゾンに約1200億円で買収された米国の通販会社ザッポスでは、従業員のペットの里親探しの費用を会社が負担し、従業員がマラソンに挑戦したければ、会社がエントリー料を負担するのだと言います。
ある研究によれば、スターバックスに行く人たちに対して、一つのグループには、「あらかじめお金を用意しておいて、注文は手際よく。必要以上に店員と話さないようにしてください」とお願いしました。
もう一つのグループには、「店員とちゃんと交流するように。笑顔でアイコンタクトをとって、短い会話を交わしてください」とお願いしたところ、後者の人たちの方が幸福度が圧倒的に上がっていたのです。
学生時代の卒業アルバムの写真を使って行った調査では、卒アルで笑っていない人は、満面の笑みを浮かべている人と比べて、離婚率が5倍も高かったのだと言います。
また、メジャーリーグ選手の写真を使った調査でも、写真で笑っている選手は7歳も長生きだったそうです。
どんな人でも、顔だけは常にヌードであることを考えれば、顔とは自分の感情がすべて正直に出てしまう一番恥ずかしい部分なのかもしれない。
きっと、「美しい顔」の人よりも、「いい顔」をしている人の方が何倍も幸せなのだろう。
セールフォースの調査によれば、一度企業と取引をした顧客のうち、58%の顧客は、二回目の取引しないのだと言い、笑顔を含めた優れた顧客体験を提供している企業に対しては、より多くのお金を使うのだと言います。
あるお店では、高額の防犯カメラを設置しても減らなかった万引きが、アイコンタクトと笑顔を徹底したことによって、3ヶ月で激減したのだそうです。
笑顔をつくるのにお金はかからない。
やはり、誰でも真似できるけど、ほとんどの人がやっていないことを徹底している企業こそが、何十年、何百年と続いていく企業なのだろう。