毎日、世界中で約20億杯のコーヒーが飲まれていますが、意外にも、仕事をする場所ということで考えると、約80%の人たちがカフェよりも自宅で仕事をすることを好むのだと言います。
恐らく、カフェはわざわざ行くのが手間だったり、ガヤガヤしていて落ち着かないから、リモートワークをするなら自宅が一番と考える人が多いのでしょう。
しかし、ハーバード・ビジネス・レビューに掲載された記事によれば、カフェの少しざわざわしたぐらいの雑音がある方が、脳が刺激されて、人間はより創造的になるのだそうです。
カフェの雑音を表す70デシベルぐらいの環境が一番脳のパフォーマンスに良く、50デシベルでは少し静か過ぎで、85デシベルではちょっとうるさすぎるのだと言う。
↑カフェのザワザワ感が人間の創造性を刺激する。(Pic by LC)
ピカソ、ボブ・ディラン、岡本太郎、そして、村上春樹など歴史に名を残すような偉人の最高の作品は、カフェで創作されたものも多い。
ハリー・ポッターの作者であるJ・K・ローリングはまだ無名であった1990年代前半、生活保護を受けながらカフェに居座って、ハリー・ポッターを執筆し続けました。
カフェの中では人が常に行き来きをし、疲れたら周りを見渡したり、他人の話に耳を傾けたりすることで、小さな刺激が伝達され、脳が活性化していきます。
カフェの小さな刺激は意思決定の能力を上げる効果もあるのだと言う。
また、2016年の研究では、ジムで他人が運動をしているとモチベーションが上がるように、隣で真剣に仕事をしている人がいると、その刺激は周りにも伝達されることが分かっています。
↑カフェからは数えきれないほどの歴史的名作が生まれている。(Pic by LC)
カフェは会社のオフィスと大学のキャンパスがブレンドされたようなもので、匿名性を維持したまま、周りの人たちが「密やかな安心感」を与えてくれるのだろう。
大抵の人は「一人」は好きでも、「孤独」は嫌いなのだ。
若者やクリエイターからすれば、毎日渋谷のオシャレなオフィスに通勤するより、自宅の近くのカフェで仕事をする方が何倍も魅力的なのでしょう。
↑オシャレなオフィスより、カフェの方がよっぽど魅力的。(Pic by LC)
カフェで提供されているコーヒーや軽食、もっと言ってしまえば、飲食店で提供されている大抵のものは、自宅でも食べることができます。
そう言った意味では、カフェや飲食店が提供すべきものは、他のお客さんを見ながら仕事をしたり、考え事をしたりできる「自宅では味わえない雰囲気づくり」なのだろう。
カフェが考えるべきは、何人の人が来るかではなく、どんな人たちが来るか。
いずれ、すべての外食産業は「カフェ化」していくのだろう。
参考書籍
■楠本 修二郎『ラブ、ピース&カンパニー これからの仕事50の視点』日経BP、2015年 ■高井 尚之『20年続く人気カフェづくりの本――茨城・勝田の名店「サザコーヒー」に学ぶ』プレジデント社、2017年 ■榊淳司『ようこそ、2050年の東京へ 生き残る不動産 廃墟になる不動産』イースト・プレス、2020年 ■田坂 広志『直観を磨く 深く考える七つの技法』講談社、2020年