May 8, 2020
年収よりも、毎日ランニングしている人の方が、融資やローンが受けやすい時代になる。

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現在、中国では、街中にゴミを捨てたらマイナス◯点、車で割り込みをしたらマイナス◯点、献血をしたらプラス◯点、寄付をしたらプラス◯点などと言った形で、最新のAIを搭載した監視カメラを街中に導入し、信用スコアによって、人を評価しているのだと言います。

もちろん、中国政府に常に監視されているという意味では、かなりネガティヴに考える人達が多いことでしょう。

しかし、信用スコアが高い人達は、敷金・礼金が必要なかったり、シンガポールのビザが取りやすくなったり、結婚相手を決める時に信用が高くなったりと、信用スコアが普及したことで、中国のマナーが格段によくなったのも事実のようです。






↑信用スコアが導入されて、中国のマナーは格段によくなった。

日本やアメリカでも、信用スコアが少しずつ普及し始めていますが、中国の信用スコアは、その人の過去のデータから「現在」の信用を予測するものでした。

それに対して、日本やアメリカの信用スコアは、その人の過去の思考パターンや行動パターンから、その人の「未来」の信用を予想するものになっていきます。

例えば、現在では、買い物の履歴から、ランニングをした距離、その人の読書量、そして、本のどの部分に注目しているかなど、様々なデータがデジタル上に記録されている。


↑過去の行動パターンからその人の未来を予想する。

銀行に行って、ローンを組んだり、融資を受けたりする時、信用を一番証明してくれるのは、年収や勤務先でしょう。

しかし、ビル・ゲイツやジョージ・ソロスなど、独自のアイディアで富豪になった人達に言わせれば、お金は稼ぐよりも、正しい使い方をすることの方が何倍も大変なのだと言います。(両者とも大量の寄付をしている。)

そう言った意味では、年収と平行して、クレジットカードやデジタル決済の履歴から、その人が、これまでどのようなお金の使い方をしてきたかを見れば、5年後、10年後にどういった思考パターンや行動パターンをするかは何となく予想することができます。


↑お金を稼ぐより、正しく使う方が何倍も難しい。

仮にいまは誰もが知っているような大企業に勤めていて、年収1000万円をもらっていたとしても、企業の寿命が短くなり、個人の寿命がどんどん伸びていく時代においては、現の年収と勤務先だけで、その人の将来を予測するのはあまりにも危険過ぎる。

逆に、今は年収300万円だったとしても、iPhoneやApple Watchに蓄積された購買履歴、運動量、睡眠の質、読書量などの様々なデータを科学的に分析すれば、その人が将来年収1000万円になる可能性を事前に予測することは可能なのかもしれません。

「明日から毎日5キロ走ります!」より、「過去5年間、毎日3キロ走ってきました!」の方が100倍信用できる。



例えば、アメリカの調査では、普段からしっかりと運動をしていて、常に身体がアクティブな状態にある人は、運動をしていない人に比べて、年間250万円ほど余分にお金を稼ぐことができる可能性があるのだと言います。

読書に関する調査でも、一般的な20代、30代のビジネスパーソンは、1ヶ月平均0.26冊の本を読むのに対し、30代で年収3000万円を超える人は、平均9.88冊の本を読んでいるそうです。

また、しっかりと自己管理ができていない人は、睡眠の時間が少なくなってしまいがちですが、iPhoneに記録されている睡眠のデータを見れば、その人の将来の健康状態が何となく予想できることでしょう。




↑読書量を見れば、大体のアイディアが生まれる比率がわかる。

日本のシンクタンクの調査によれば、一回風邪をひいたことで、仕事がはかどらない時の社会的な損失は平均4万4270円にのぼるのだと言います。(1)

さらには、長期的な睡眠不足は脳のサイズ自体を縮めてしまうのです。

もし、自分が睡眠不足であるならば、明日からしっかり8時間寝ればいいと思うかもしれませんが、一つの習慣を身につけるためには、平均66日間連続して、その行動を続ける必要があると言いますから、失った睡眠サイクルを取り戻すはの簡単なことではないのです。(2)




↑睡眠の質を見れば、その人の健康状態は大体予想できる。

お金に関しても、年収や貯金だけではなく、過去どういったお金の使い方をしてきたかという「お金の履歴書」を見た方が、その人の習慣がよく分かります。

例えば、変化の速いWEBやテクノロジー関係の仕事をしている人であれば、いま稼いでいる年収以上に、常に最新のPCやスマホにお金を投資しているかどうかで、その人の未来は大きく変わってくるでしょう。

18ヶ月に2倍の速度で、CPUが賢くなると言われる時代に、古いPCで仕事をし続けることは、錆び付いた武器を持って戦争で戦うようなものです。

仮に、同じ年収300万円の人がいたとして、一人は全身ユニクロだけど、PCやスマホは常に最新のモデルにアップデートして、時代の変化について行こうとしている人。

もう一人は、外見には、たくさんのお金をつかいながらも、PCやスマホは5年前から一切アップデートしていない人がいたとしたら、将来成功する確率は前者の方が圧倒的に高いと言えるでしょう。




↑年収よりも「お金の履歴書」を見た方が、その人の事を理解できる。

アメリカの保険会社では、SNSのタイムラインを参考にその人の思考パターンや行動パターンを分析しています。

例えば、SNSにロック・クライミングの写真を定期的にアップしていれば、健康的なライフスタイルが想像できるため、病気などの保険料は少し低く設定しても大丈夫でしょう。

逆に、外食ばかりしているSNS投稿が多い場合は、病気になるリスクを考慮して、保険料は少し高めに設定する必要があると考えるかもしれません。


↑SNSにも、その人の行動パターンは自然と出てくる。

日本でも、LineやYahoo!が信用スコアのサービスを始めています。

ユーザーの検索エンジンの履歴を見れば、普段どういったものに興味を持っているのかという思考パターンが分かるでしょうし、人間は行動する前には必ず多くの情報を仕入れると言いますから、どういったニュースを読んでいるかを見れば、行動パターンが何となく分かってきます。

現在であれば、起業家が投資家に出資をお願いする時は、海外などで成功している事例を適当に並べて、あとは根性論で「死ぬほど働いて絶対に成功させます!」と言ってごまかしていたのかもしれません。

しかし、定期的にランニングする習慣がない人が、100キロマラソンを完走できないのは誰にでも分かるように、「明日から毎日5キロ走ります!」と言うよりも、「過去5年間、毎日5キロ走ってきました!」とApple Watchのデータを見せた方が信用されるのは言うまでもないでしょう。

きっと、これからは嘘はつけないけど、着々と努力している人には、どんどん可能性が広がっていく時代なのだろう。

100年時代は、嘘はつけないが、小さい努力が確実に報われる時代。



いま、人類の寿命は10年間に2年ずつ伸びています。

現在の若い世代の人達は、間違いなく親の世代よりも長く生きることになるでしょうし、さらに、その子供たちは、100年を超える人生が当たり前になっていくでしょう。

人生が長くなれば、なるほど、新しい分野の事に挑戦したくなるのは間違いありません。

50歳までずっと商社一筋で働いてきた人が、急にWEBのサービスを作りたいと思ったり、飲食店を開きたいと思った時、これまでであれば「あなた、プログラミングできないですよね?」、「飲食業界で働いた経験ないですよね?」と言われて、銀行や投資家には、全く相手にされなかったことだろう。




↑人生が長くなれば、2つ、3つのキャリアを持つことは当たり前になる。

運動、読書、そして、睡眠などの様々なデータから、その人の思考パターンや行動パターンを予測できる時代には、「この人は、プログラミングの経験はないけれど、過去10年間、毎日かかさずランニングをし続けているから、IT事業も何とかやり切れるかもしれない。」、「読書量が多く、ハイライトしているポイントも鋭いから、もしかすると、これまでにはない画期的なやり方で、事業を成功させるかもしれない。」といった感じで、未来の可能性を作り出せる時代になっていく。

ボクサーや歌手など、仮に自分が望む道で成功できなかったとしても、一度何かに本気になれた人や、ランニングや読書など、持続的に一つのことに取り組める人というのは、仮に挑戦する分野が変わったとしても、物事に取り組む思考パターンや行動パターンは変わらない。

近い将来、年収1000万円より、毎日欠かさずランニングしている人の方が、信頼できるという時代になってくるのかもしれません。

Note

1.裴英洙「一流の人はなぜ風邪をひかないのか?――MBA医師が教える本当に正しい予防と対策33」ダイヤモンド社、2018年 2.中島聡「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である」文響社、2016年

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