March 5, 2020
日本の悲しいSNS文化「実名SNSで自分を3倍に盛り、 匿名SNSで人を徹底的に傷つける。」

All photos illustration by Leading Company

2019年、マーク・ザッカーバーグはフェイスブックという会社の方向性を大きく変えると発表しました。

2004年にフェイスブックが立ち上がった時は、まだ自分の実名を写真付きでインターネット上に登録することが、まだまだ稀な時代であったため、オンライン上で人々を繋げるというミッションに異論を唱える人はいませんでした。

しかし、現在では、あまりに関係が近い者同士が繋がり過ぎてしまったことが原因で、以前よりも生きづらい世の中になってしまっていることはほぼ間違いありません。






↑繋がり過ぎてしまった社会が生きづらさを生み出している。

当たり前ですが、日々の生活の中には、良いこともあれば、悪いこともある中で、夫婦喧嘩のことや会社の業績があまり良くないことをフェイスブックに赤裸々に投稿できる人はあまり多くないでしょう。

SNS上では、悪いことはほとんど投稿しない一方で、良いことは何倍にも盛って投稿されるため、それを見た友人たちは、SNS上ではすべての人が自分よりも幸せなのではないかというバイアスがかかってしまいます。

ドイツで600人を対象に行われた調査によれば、3人に1人がSNSにログインした前と後では、ログインした後の方が気分が悪いとお答えており、特にバケーションの写真を見た時にこの傾向が強かったのだそうです。






↑休暇の報告は、友人の気分を悪くする。

ザッカーバーグは、これまでコミュニケーションの中心をオープンな「友達」に置いていたフェイスブックの運営を、閉ざされてプライベートな環境が保てる「グループ」へシフトさせると断言しました。

このオープンからクローズに向かっていく流れは、何もフェイスブックに限ったことではありません。

アメリカやイギリスは自国ファーストを掲げて、グローバル社会やEUから離脱することで、国を閉じ始めている。

WEB上の有益な情報はメルマガやサブスクに移行することで、オープンなものではなくなり、信頼性の高いコミュニティは、今後閉ざされたオンラインサロンにどんどん変わっていくことでしょう。






↑広がり過ぎた世界から、世の中は閉じる方向に向かっている。

アメリカやイギリスが国を閉じることで、自国のアイデンティティーを強めています。

インターネットも圧倒的にオープンなものから、グループを中心とした閉ざされたプライベートにシフトしていくことで、ユーザーが本来の人間の顔を取り戻していけるのかもしれません。

ザッカーバーグは「フェイスブック・グループ」内のコミュニケーションがニュースフィードの上位に来るようにアルゴリズムを変更することで、現在プライベートのグループで質の高いコミュニケーションを生み出している約2億人のユーザーを次の5年で10億人にすると述べています。




↑国を閉じ始めた事で、本当の自国の姿が見えてきた。

開かれた街の真ん中で演説する内容と、閉ざされた自宅のリビングで会話する内容が違うように、オンライン上でも、「オープン」と「クローズ」のバランスが取れることが、より強い人間関係を作り上げていくのだろう。

そういった意味では、過去15年、とにかくオープンな人間関係を目指してきたフェイスブックは、次の15年で、プライベートな密の高いコミュニケーションを強化する方向にシフトしていく。

手塚治虫さんはマンガ「火の鳥」の中で、「過去はすでに起きた未来。未来はこれから起きる過去」という言葉を残しました。

どれだけ世の中が発展しても、昔から人間関係を深める上で1対1のコミュニケーションに勝るものはないのだから、いま一旦オープンに広がった薄く広い人間関係で構築されたSNS文化が折り返し地点を迎えています。




↑オープンな場所とクローズな場所では話すことが違うのは当たり前

SNS上で1,000人、10,000人にリーチして、とにかく友達やフォロワーを増やすことだけに夢中になっていた時代から、これからは、1対1のコミュニケーションを1,000回、10,000回を行うことで、気の合う人達が閉じたグループ内で本音で語り合うのが主流になっていくのだろう。

何十万人のフォロワーを持つ家入一真さんが、ある時、渋谷で一人で飲んでいて、寂しいからツイッターで今から渋谷で一緒に飲んでくれる人を募集しても、誰一人来てくれなかったと、ある本に書いていました。

実名のSNSでは、現実を何倍にも盛った内容を投稿し、匿名のSNSでは、人の悪口や誹謗中傷的な内容を平気でしてしまいがちです。

そういった意味では、いまSNS上に求められているのは、「オープン」と「クローズ」の間、「実名」と「匿名」の間で、もっと深いコミュニケーションが取れる場所なのだろう。


↑1,000人にリーチではなく、1対1を1,000回やる方向にシフトしなければならない。

2ちゃんねるの99.9999%はどうでもいい事という創業者のひろゆき氏は、最近、「ペンギン村」という有料のクローズドのコミュニティを立ち上げています。

フェイスブックも既に閉じた質の高いコミュニティ・グループに参加するための費用として、ユーザーが月額$4.99〜$29.99支払うサブスクモデルをテスト的にスタートさせている。

これまで、ずっと無料だったものが、有料になると少し抵抗感を覚えるかもしれません。しかし、多くの人はネットフリックス、スポディファイ、そして、アマゾンのプライム会員など、日々の生活に欠かせないようなサービスにはほぼ無意識のうちにお金を払っています。


↑無料なサービスに少しお金を払えば、生活の質はかなり向上する。

SNSを有料で使うようになった時、ただ自己欲求を満たしたり、他人の盛られた投稿を見て、自分の生活は全然充実していないと、敗北感を感じることが無くなっていくのかもしれません。

アメリカやイギリスがトランプ大統領、EU離脱を通じて、繋がり過ぎたグローバル社会から離脱したように、SNSも繋がり過ぎた世界から、閉ざされた小規模なグループ型にシフトしていくことで、盛る必要のない本当の自分を出せるようになっていく。

行き過ぎたものは、どこかで必ず折り返しのポイントを迎えるのは、世の中のどのようなことでも同じことなのでしょう。

さて、1対1のコミュニケーションが一番大切だと言うことに、人間が気づくまで、あとどれくらいの時間がかかることやら。

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