幸福に関する研究の専門家、チューリヒ大学のブルーノ・フレイ教授とバーゼル大学のアロイス・シュトゥッツァー教授の調査によれば、通勤に片道23分以上かかる人は、在宅や自営業などの通勤時間が0分の人達に比べて、毎月19%の給料を余分に貰わないと精神的な負担との釣り合いが取れないのだと言います。
東京郊外に住む人の通勤時間は片道約1時間なので、生涯で考えるとトータル2年以上の時間を通勤で使っていることになる。
子供の頃は、お金よりも時間の方がたくさんあり、大人になるにつれて徐々にそれが逆転してくるのと同じように、世の中のスピードが速くなればなるほど、「お金」よりも「時間」の方の価値が高くなってくるのは間違いないでしょう。
↑イギリスでは、18.5%の人が仕事に満足しているにも関わらず、通勤が理由で仕事を変えようと検討している。(LC.inc)
14時間 (1日に自由に使える時間)× 365日(1年) × 50年(あなたの残りの人生) =約260,000 時間
お金であれば、億単位のお金を持っている人は数多くいます。しかし、上記の式で考えると、人生という時間の財布にはどんな人でも26万円というお金しか入っておらず、決して増やすことのできない資源を毎日、毎日14円(1時間=1円)ずつ切り崩して生活しているのです。
時間の価値を上げるためには、どれだけ「正の時間」を増やして、「負の時間」を減らせるかということに尽きることでしょう。
時間を大切にしている人達は、PCの電源は落とさず常にONにしておいたり、マンションの二階に住んで上に上がる手間を無くしたりと、1秒でも「負の時間」を減らそうと努力しているのに対して、通勤時間に一日2時間もの時間を使うことは明らかに時代の流れと逆行していると言えます。
↑どれだけ1秒でも「負の時間」を減らして、1秒でも「正の時間」を増やせるか。(LC.inc)
そういった意味では、今後の移動手段は「どれだけ安く速く移動できるか」ということよりも、「どれだけ快適に移動できるか」ということの方が付加価値が高いのかもしれません。
例えば、関西方面に移動する時でも、パソコンも開けない狭い飛行機より、広くて快適な新幹線で移動する方が時間を有効に使えて、「創造的時間価値」が高いと言えます。
ロンドンでは通勤時間を有効活用するために、「瞑想バス」というものまで登場しました。
アマゾンプライムや家事代行のサービスが普及している背景から考えても、明らかにお金よりも時間の価値が枯渇し、多くの人がどれだけ自由で楽しい「正の時間」を増やして、ただの時間の浪費でしかない「負の時間」を減らそうとしているかがよくわかります。
↑基本的に、楽しくない時間はすべて「負の時間」(LC.inc)
大富豪ウォーレン・バフェットは1セント硬貨を拾って、「これは将来の10億ドルだ!」と叫ぶそうですが、売買することができず、利子も、複利も見込めない260,000時間の中からどれだけ負の時間を減らせるかが、直接幸福度の上昇に繋がっていくのでしょう。
そう考えれば、通勤の時間など、負の時間以外の何でもないのです。