June 2, 2017
「型」にはまらない奴に「型破り」なことができるわけない。個性なんて捨てて、さっさと「型」にはまれ。

Image_Creative Commons_Flickr_GmanViz

世の中に必要なモノやサービスが行き渡ると、何とかそのまま続けて商品を買い続けてもらおうと、「差別化」や「ブランド」の重要性が語られます。

また、人も同様に個性豊かな人、型にはまらない人材などが求められ、特に若者の人達は、どんどん個性を活かしたクリエイティブな仕事をしてみたいと嘆く人達も多いことでしょう。

しかし、「人と違うことをしたい」「人と違うように見られたい」と、手っ取り早くどこかで流行っているようなやり方をマネて、それを個性だと思っていること事態が、自分は何一つ個性なものを持っていないと認めてしまっている証拠にもなります。

ファッションにしても、自分は個性的な格好をしているつもりでも、世の中には雑誌などが作り出す「これが個性的なファッションです」というファッションの型が存在していて、それをただそのままマネることで、小手先の個性を発揮したつもりになっているだけなのではないでしょうか。


↑多くの若者たちが、「これが個性的だ」という型にハマっているだけ。

「個性」というものは何かを徹底的に追求する過程で、もともとの人間性の違いが発想力やアイデアの違いになって表面に現れ、他とは違う部分が様々な形で滲み出てくることを指すため、人や企業が意識的に「個性」を出そうと思って、出せるものではありません。(1)

かのジョブズも、小手先の個性を許しませんでした。アップルの従業員がジョブズと会う時は、「ジョブズがその人を見たいように見れるように」するため、個性を感じさせるものは絶対に身に付けてはいけないのが大前提で、アップルに入ったばかりのある従業員は、上司から次のように言われたそうです。(2)

「ユニフォームとは、まずデザイナーものでないジーンズ。リーバイス、ギャップ、ラングラーまでならOK。プレーンな白シャツで、カジュアル感を出すために袖をまくる。襟ボタンはいちばん上だけ外して、下にはTシャツ。腕時計は地味で機能的なもの。靴はローファーかスニーカー。」

「革靴は避けたほうが無難で、フォーマル系は絶対にだめ。靴下は履いても履かなくてもいい が、けばけばしいものは避ける。メガネは目立たないもの。アクセサリーは付けず、コロンもなし。会議に持ち込んでいいのは、最新のマックブックだけ。」

個性を捨てて、型にはまれ。破る型があるからこそ、「型破り」なことができる。



仕事にしても、基礎や型がない若者がいきなり独自のやり方を追求してオリジナリティを求めたところで絶対に上手くいかないでしょう。

野茂英雄選手のトルネード投法、イチロー選手の振り子打法、そして、王貞治さんの一本足打法にしても、どれも型破りなオリジナリティがありますが、これは基礎となる「型」を完璧に身に付けているからこそ、「型破り」なことができるわけで、破るべき「型」がない人に型破りなことなど決してできるはずがありません。

「ドラゴン桜」などで知られる漫画家の三田紀房さんは著書「個性を捨てろ! 型にはまれ!」の中で、普通の仕事をすること、普通の収入を得ること、そして普通の家庭を築くことがどれだけ難しいかを指摘していますが、現在はいきなり仕事でオリジナリティを求めたり、いきなり高収入を求めたり、いきなり子供に個性を育む教育をしたりするなど、自己中心的なオリジナリティを求めすぎて、世間一般で「普通」と呼ばれている、当たり前のことができていないからこそ、様々な問題が発生しているのではないでしょうか。(3)


↑破るべき「型」があるからこそ、「型破り」なことができる。(Image_CC_Flickr_Stefan Ogrisek)

野茂英雄選手にしても、イチロー選手にしても、王貞治さんにしても、「見よ!これが私があみ出したトルネード投法だ!」と自身のオリジナリティを世間に見せつけたのではありません。

独自のフォームとは野球というものを徹底的に追求する過程で、もともとの人間性の違いや発想力の違いが、どうしようもない形で滲み出てきたもので、オリジナリティとは自分で主張するものではなく、他人が判断することなのでしょう。

大人や組織が個性を抑えつけるなんて言われますが、自分しか分からず、他人に理解してもらえない個性など、所詮その程度のものでしょうし、特に誰かが何かをしなくても、個性なんて勝手に育っていくものなのです。

むしろ、大人や組織が次の世代の人たちにしてあげなければならないことは、いきなり個性やオリジナリティなどは求めず、しっかりと「型」にはめて上げることです。

自分で、「型」を破って、自ら「型破り」な人になれるように。

参考書籍
◆1.渡邉 格「田舎のパン屋が見つけた『腐る経済』」講談社、2013年 Kindle ◆2.フィリップ・デルヴス・ブロートン「なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか?」プレジデント社、2013年 Kindle ◆3.三田紀房「個性を捨てろ! 型にはまれ!」コルク、2009年 Kindle

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