規制強化で、渋谷道玄坂付近のラブホが廃業に追い込まれていると言います。
こういった建物の個性的な外見を残しながらも、ラブホ街一体を地元のアーティストとコラボして、ヨーロッパにあるような「アート・ホテル」をつくるというのは非常に良いアイディアではないでしょうか。
よくヨーロッパなどにある「アート・ホテル」は、宿泊する場所というより、常に変化するアーティストの作品のようなものだと言えます。
現在、ロンドンで一番の観光スポットで街全体が一つの美術館とまで言われるイースト・ロンドンは、もともと貧しい人たちが住むエリアで、ひと昔前まではとても観光客が訪れるような場所ではありませんでした。しかし、安い家賃を求めて若いアーティストが移り住み、新しい文化をつくっていったことで、今ではグーグルがオフィスを構えるようなクリエティブなエリアにまで成長しています。
そう言った意味では、ラブホ街という負のオーラが充満しているエリアだからこそ、芸術を行う意味があり、ラブホ街から感性を刺激するアートが生まれるというストーリーにこそ、価値があるのでしょう。
10〜20年前、ホテルに泊まると、どこへ行っても似たような花や風景の絵がロビーに飾られていましたが、Airbnbが普及し、気軽にローカルの人々とユニークな旅行体験ができるようになったことで、旅行者は普通のホテルに泊まる時も、ただ泊まるだけではなく、何か記憶に残るような体験を求めるようになってきました。
ホテルに着いた時に、どこかで見たことがあるような有名な絵のコピーがあるより、知らないローカルアーティストのクリエティブな作品があった方がインスパイアされますし、SNSや格安航空が普及してグローバルな世の中になれば、なるほど、旅行者はローカルのコンテンツに魅力を感じるようになっていくことでしょう。
また、これから活発的に旅行に出かけるミレニアム世代の若者たちはひと世代前の人たちよりもしっかりとした教育を受けているため、ただのエンターテイメントではなく、ローカルの文化を通じたコンテンツを求めており、旅行者が求めるコンテンツのクオリティーは日に日に上がってきていることは間違いありません。
一部屋を通常の何倍もの手間のお金をかけて、デザインするアートホテルはホテルの経営上、割りに合わないこともあるでしょう。
高円寺にある日本で初のアートホテル「BnA Hotel」では地元の学生アーティストに部屋をデザインしてもらい、宿泊費の15〜20%を還元することで、旅行者とアーティストを繋ぎ、実力のあるアーティストが持続的に収益を得られる新しいホテルの形に挑戦しているようです。
新しい時代に生きる人たちは、アートを収集したいのではなく、アートを通じた経験を「コレクト」したいと思っているのかもしれません。
オセロみたいに街の角の雰囲気がよくなることで、その影響が街全体に広がっていくのではないでしょうか。