August 29, 2015
松本人志「笑いは人間だけが許された特権」1回の笑いでガン細胞が100個も消滅し、糖尿病も生活習慣病も治る。

イラスト by リーディング&カンパニー

よく考えてみれば、不思議なことですが、地球上で「笑うこと」ができるのは人間だけで、どんなに動物好きな人でも、笑うハトや笑う金魚は見たことがないと思いますが、実は笑うことは、人間の長い進化の過程の中で、生きていくために欠かせないものとして生まれ、引き継がれてきました。

最近では、副作用がない薬として、「笑い」が医学的にも認められ、ガンを治したり、脳を活性化させたりすることはもちろんですが、生活習慣病やエクササイズ効果もあるなど、笑いが健康に良いということが、決して「笑い事」ではなくなってきています。


↑笑いの健康効果は決して「笑い事」ではない。

一般的に4歳の子供は、1日300〜500回ほど笑いますが、大人になるとその数は10〜15回に激減し、大人になればなるほど、非人間的な社会に引き込まれて、笑う回数が減っていきます。

しかし、日本の「笑いの療法」の第一人者である伊丹仁朗さんによれば、人間の体内にある細胞もそれぞれが、豊かな感情を持っており、私たちが憂鬱な気分になったり、悲んで落ち込んだ気分でいると、これらの細胞の機能も同じように低下していきます。

若くて健康な人でも、毎日3000〜5000個ものガン細胞が発生しており、それは私たちの体内にあるナチュラルキラー細胞が退治してくれますが、体内の遺伝子で常にアクティブに活動しているものは、たった3%しかないため、残りの97%をどう呼び覚ませるかで、体の精神力や抵抗力は大きく変わっていきます。(1) (2)


↑子供は1日300〜500回笑うが、大人は10〜15回しか笑わない (Gavin White)

筑波大学の村上和雄さんと吉本興業が組んで行った実験によれば、19人の糖尿病患者に500カロリーの寿司を食べてもらい、その後、大阪の有名な漫才師B&Bの公演を聴いて、大爆笑してもらった後、血糖値を測ってみると、漫才を見る前は、平均上昇率が123mg/dlだったものが、漫才を見た後では、77mg/dlまで大幅に下がり、別の「なんばグランド花月」で行われた実験でも、3時間大いに笑った後、血液成分を調べたところ、体に悪影響を及ぼす物質を退治してくれるナチュラルキラー細胞の働きが活発化していました。(3)


↑大いに笑えば、血糖値が下がって細胞に活発に動きだす (toyohara)

この実験以外にも、大きな声で心から笑うと、病気に抵抗する時に必要な白血球が30%増えたり、入院している患者がコメディ映画を見て、10分間、腹を抱えて笑うと、少なくとも2時間は痛みを感じずに眠れる”効能”が報告されているほか、1日15分笑うと40カロリーを消費するため、これを続けると1年で2キロの脂肪が減り、30分のお笑いビデオも腹筋運動12回に相当するなど、笑いにはエクササイズの効果も少なからずあるようです。(4) (5)

また、ストレスが溜まると、脳が興奮し、酸素を消費するため、脳細胞への酸素供給量が不足し、脳の働きが低下してしまいますが、笑うことによって、体中に酸素が大量に入り、新鮮な血液が脳へどんどん送られるため、笑った後は、集中しやすく記憶力もアップするとも言われています。(6)


↑「笑うこと」でエクササイズと同じような効果がある (Roberto Sassano)

「病気になったら病気を治すな。己れを治せ。」という言葉がありますが、これは言い換えれば、「あなた、そんな生活をしていていいのですか。もう一回考え直したら。」というメッセージとしても取ることができます。

122歳まで生き、史上最年長と言われているフランス人のジャンヌ・カルマンさんは、タバコもワインも大好きで、一週間に1キロのチョコレートを食べるという、とても健康とは言えない部分も多かったそうですが、長寿の秘訣を「いつも笑ってる」「退屈しないこと」だと答えており、姉妹で107歳、108歳と長生きしたきんさんとぎんさんも、「テレビの出演料をどう使いますか?」と聞かれて、「老後のために貯金しとくがね」と答えるなど、健康で長生きする人は、ユーモアのセンスが高い人が非常に多いようです。(7)


↑病気になったら、自分の生活を改める。本当にそんな笑いのない生活で良いのか。(Francois de Halleux)

風邪の予防に欠かせない免疫力を測る目安のひとつに、免疫グロブリンAというものがありますが、やはり、「笑い」や「心の動き」で分泌量に差が出ることが分かっており、ウェスタン・ニューイングランド大学で学生に、「笑える映画」と「そうでない映画」を30分ずつ見せて、前後の免疫グロブリンAの量を測定したところ、ユーモラスな映画を見た後の方が、免疫グロブリンAの量は明らかに多かったそうです。(8)

オリンピックで9個のメダルを獲得しているカール・ルイスは100m走の時、70mを過ぎた地点でニコッと笑顔を作ると良い記録が出ると述べており、タイガー・ウッズやマイケル・ジョーダンなどもここぞという時は、舌を出したりして、口元の緊張を解いていますが、これは無意識の内に、「笑い」の表情筋を動かしているのかもしれません。


↑スポーツ選手も勝負どころでは、いつも口元を緩める (Jason H. Smith)

人間は自然から遠ざかるにつれて、病気に近づくと言われ、現代の人たちはインターネットや携帯電話が普及し、直接顔を合わせて話をする機会が減っているため、表情筋が衰えて、自然に笑うことができません。

人間の体は使えば発達し、使わなければ退化するという法則があり、笑わない生活を続けていると本当に笑えない顔になってしまうため、感情を抑えることは体に一番悪く、「笑えない生活」が続くと免疫力が低下するため、ガンなどにかかりやすい体になってしまいます。(9)


↑笑えない生活を続けていると、本当に笑えない顔になってしまう (Kiks Balayon)

楽しい笑いは、乱れた体の機能を正常に戻す役割を果たし、薬と違うところは、基準値以上の働きをすることがないため、副作用が一切ないことですが、医師の松本光正さんも「笑い」について次のように述べています。(10)

「1回の笑いで癌細胞が100個も消滅する。100回笑うと100×100で1万。そうすると1日に生まれる癌細胞がみんな消えることになる。1日100笑い推奨ですよ。ねっ、EBM(科学的根拠のある医療)でしょう?」


↑子供の頃は1日300〜500回笑っていたのだから、1日100回笑うというのは大した数ではない (Ren Kuo)

健康面で「笑い」が大切なのは言うまでもありませんが、スタートアップや常にイノベーションを起こす企業では、「冗談を言える環境」を大切にしており、Yコンビネーターのポール・グレムは、ハッカーやイノベーターは冗談好きな人が圧倒的に多いとして、次のように述べています。(11)

「もしハッカー国の国家休日があるとすれば、それは4月1日(エープリルフール)になるだろう。素晴らしい解答にも、おそろしくやっつけな仕事にも、同じ言葉を使うという事実は、私たちのやっていることの本質をとてもうまく表現している。奇妙なことにプログラミングというものは、正確で厳密なものだと思われているようだか、それは違う。正確で厳密なのはコンピューターのほうだ。ハッキング自体は、笑みを浮かべながら愉快にやるものだ。」


↑ハッカーやイノベーターには冗談好きな人が圧倒的に多い (JD Lasica)

人間も動物も一般的には、報酬を得ること、例えば、食べ物を手に入れたり、お金を手に入れたりすることで欲を満たし、生きていきますが、人間は食べ物や金銭的な欲だけに引きづられて生きていくだけではなく、本人が内発的な努力を経て、自らが産み出したユーモアで人を笑わせたりすることは、金銭的な報酬とは全く別物の、「自己報酬系」の欲求を満たすものになるのではないかと、京都大学の苧阪 直行さんは述べています。(12)

松本人志さんも、「笑いは0円で作れるもの」として次のように述べています。

「人間に許された唯一の特権は笑うことや。笑いながら生きるという事が人間としての証や。人は笑うために生きるんやで。お前は金を見て笑顔になりたいから仕事しとる。俺は皆の笑顔を見たいから仕事しとる。それが俺とお前の違いや。」


↑松本人志「笑いは0円で作れるもの」 (イラストby L&C)

医師の本来の仕事は、人の病気を治療することではなく、人が病気にならないように予防することで、病気の85%は自然治癒で治せるのにも関わらず、多くの人たちが自分では治せないと勝手に決めつけてしまっています。

「笑い」以外にも、自然治癒力に関する実験は数多く行われており、例えば、アメリカで43組のカップルを対象に行われた実験では、腕に傷をつけてもらい、1時間、ラブラブな話をしたカップルと、ものすごい喧嘩をしたカップルの傷の治り具合を比べたところ、ラブラブな話をしたカップルの方が2日も傷の回復が早かったそうです。(13)


↑ラブラブなカップルの方が傷の治りが圧倒的に早い (Mo Riza)

様々な実験で笑いの医学的な効力が証明されつつありますが、私たちは未だに、病気は自動車修理のように病院で治すものだと考えており、職場や会議の場でも、「笑うこと」があまり好まれないことも多いのが現状です。

ドイツの作家ミヒャエル・エンデは、童話「モモ」の中で、ただ単に効率だけを求める世界に対して疑問を投げかけました。

「モモ」の物語の中では、ある町に突然、「時間貯蓄銀行」と称する灰色の男達が現れ、今の無駄な時間を全部省いて、将来に投資すれば、大きな利益を得ることができると、町の人達にささやきます。

すると町の人たちは、道端での雑談や床屋などでのちょっとした会話をどんどん省いて、将来に投資し始めたため、町がどんどんギスギスした雰囲気になってしまい、これはおかしいと思ったモモという少女が立ち上がるというのが、この童話のストーリーが現代の日本の職場と同じように、笑いや雑談よりも仕事の効率化に焦点が当てられているように思います。


↑不況になればなるほど職場はギスギスする (trierdailyphoto)

もし本当に医者の仕事が病気を治すことではなく、病気を予防することだとしたら、本来ある病院の姿はどんなものでしょうか?

病院に行くと待合室では、お笑いの番組が流れ、部屋に呼ばれると医者と雑談をして、帰りに隣の薬局でお笑いのDVDを何本も渡される、もし「笑い」が人間だけに許された特権なのであれば、本来の病院は独特の匂いがする嫌な空間ではなく、どこからも笑いが溢れでる、お笑い芸人養成学校みたいな雰囲気であるべきなのかもしれません。


↑映画にもなった医師のパッチ・アダムスは、笑わせることで患者の精神力を回復させる (PROCulturactiva SCG)

ある映画監督によれば、人間は泣くところは大体一緒ですが、笑うところは十人十色なため、生涯のパートナーを見つけるにしても、同じところで笑える人を見つけることが大切になってきます。

現在、日本の医療費は35兆円、2025年には56兆円になるという試算も出ていますが、長期的に体を健康に保つためには、何が本当に大切なのか、もう少し自分の中で考えてみる必要があるのかもしれません。

「笑い」が病気を治したり、体を健康に保つことは、様々な医学的根拠が出てきている以上、もう「笑い事」ではありませんし、やはり、どんな人でも難しい顔をして、長生きをすることはできないのではないでしょうか。

参考書籍

1.(笑いの免疫学―笑いの「治療革命」最前線/船瀬 俊介) P82 2.(笑いの免疫学―笑いの「治療革命」最前線/船瀬 俊介) P165 3. (笑って長生き―笑いと長寿の健康科学) P12 4.( 泣いて生まれて笑って死のう/昇 幹夫) P142 5.(笑いの免疫学―笑いの「治療革命」最前線/船瀬 俊介) P18 6.(笑いの医力/高柳 和江) P67 7. (よく笑う人はなぜ健康なのか/伊藤 一輔) P35 8.(笑いの免疫学―笑いの「治療革命」最前線/船瀬 俊介) P47 9.(笑って長生き―笑いと長寿の健康科学) P64 10.(笑いと健康 君子医者に近寄らず/松本 光正)P125 11.(ハッカーと画家 コンピュータ時代の創造者たち/ポール グレアム)P59 12.(笑い脳――社会脳へのアプローチ/苧阪 直行) P58 13.(笑いの医力/高柳 和江) P88その他、参考にした書籍 (病気にならない人は知っている/ケヴィン・トルドー)、(人生いきいき 笑いは病を防ぐ特効薬/松本 光正)、(人はなぜ笑うのか―笑いの精神生理学/志水 彰)

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