April 25, 2020
悪いニュースを聞いて笑う人は、危機は乗り越えられるという意思表示。

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今まで体験した事のない危機に直面すると、人々は不安な未来から少しでも逃げようと情報収集に必死になります。

しかし、「株価が急上昇した」という見出しの新聞は大して売れないのに対して、「株価が暴落した」という新聞はよく売れるように、必要以上の不安を煽ることで潤う人達がいるのは紛れもない事実でしょう。

特にテレビなどは、まるで感染者が増えるのを楽しむかのような報道をしているようにも見えます。

実際、不安を和らげようと情報収集に必死なればなるほど、余計になって身体の免疫がどんどん落ち、病気にかかりやすくなってしまうのです。


↑情報収集をすれば、するほど、不安になっていく。

もし、あなたが医者でも看護師でもなくて、周りの人達をウィルスの感染から救ってあげる方法があるのだとすれば、ジョークやユーモアのある発言して周りを笑わせてあげることなのだろう。

今回、日本を代表するコメディアンの志村けんがウィルスにかかって亡くなってしまいました。

これは、「こういった大変な時だからこそ笑おうよ!」という世の中に対してのメッセージのように感じるのは自分だけでしょうか。

よく笑うことは、「副作用のない一番の薬」などと言われますが、日本よりも遥かに多い犠牲者を出しているアメリカでは、「もう笑うことは最高の薬などではなく、生き延びるためのサバイバルだ」とも言われています。


↑もう笑うことは生きるためにサバイバル。

第二次世界大戦中、500万人以上の人たちが殺されたホロコーストの時でさえ、人々はお互いにジョークを言い合いました。

もちろん、ウィルスにかからないために手洗いやうがいをすることは大切ですが、恐らく、お笑いの動画を見たり、ジョークで周りを笑わせて、頭の中に溜まっている不安も洗い流してあげることは手洗いやうがいと同じくらい大切なのでしょう。

悪いニュースを聞いて、笑ってしまう人は、それに打ち勝つことができるという意思表示。



日本の「笑いの療法」の第一人者である伊丹仁朗さんによれば、人間の体内にある細胞もそれぞれが、豊かな感情を持っており、僕たちが憂鬱な気分になったり、悲んで落ち込んだ気分でいると、これらの細胞の機能も同じように低下していくのだと言います。

ウエストケンタッキー大学が2003年に行った調査では、ユーモアな映画を見た後は、病気と戦うための細胞であるナチュラルキラー細胞の活動が活発になりました。

筑波大学と吉本興業が行った調査でも、漫才を見て大笑いしてもらった後は、血糖値が123mg/dlから77mg/dlまで大幅に下がり、笑いが身体に与える効果の大きさが「笑いごと」ではなくなってきています。(1)


↑もう笑いの効果は、「笑いごと」ではない。

加えて、ノルウェー科学技術大学が5万4000人を対象に行った調査を見ると、人生にユーモアを見つけられる人は、そうではない人よりも35%長く生きると報告され、笑いと寿命の関係は間違いなくポジティブなのだと言えるでしょう。

122歳まで生き、人類史上最も長く生きたとされるフランス人のジャンヌ・カルマンさんは、タバコもワインも大好きで、一週間に1キロのチョコレートを食べるというとても健康とは思えない生活をしていましたが、長寿の秘訣を「いつも笑ってる」「退屈しないこと」だと答えています。(2)

また、姉妹で107歳、108歳と長生きしたきんさんとぎんさんも、「テレビの出演料をどう使いますか?」と聞かれて、「老後のために貯金しとくがね」と答えるなど、健康で長生きする人は、ユーモアのセンスが高い人が非常に多いのでしょう。


↑人生にユーモアを見つけられれば、35%長く生きられる。

ごく稀に、自身にとってものすごくマイナスなニュースを聞いた時、思わず笑ってしまう人がいます。

周りから見れば、「なぜ悪いニュースを聞いて笑っているのだろう?」と不謹慎に思われることは間違いありませんが、これは心理学的な視点から見ると、ただ笑うことで悪いニュースをごまかそうとしているわけではないようです。

自分にとってすごくマイナスのニュースを聞いて笑ってしまうのは、将来起こりうるであろう大きな心配事や不安に対して、「それに打ち勝つ準備はできている。」という意思表示のようなもの。


↑悪いニュースを聞いても笑える人は、不安に打ち勝つ準備ができている。

笑いながら、心配事で悩んだり、誰かに怒りの感情をぶつけることはできません。

そういった意味では、「笑うこと」というのは、ちょっと旅行に出かけて嫌なことを全部忘れてしまうショート・トリップのようなもので、旅行に行けない今こそオンライン上の面白い動画をたくさん観て、免疫力を上げるべきなのだろう。

顔にシワが増えてきたということは、それだけ人より多く笑ってきたということだ。



アメリカは世界一強い軍隊を持ちながら、今回のウィルスから国民を守ることができませんでした。

今やウィルスの死者は911の時を遥かに超え、一時は一日の死者が911の死者の数に迫るという自体に陥っています。

20世紀の敵というのは、戦車、兵隊、爆弾など目で見ることができましたが、21世紀の敵は、ウィルス、テロ、サイバー攻撃、金融市場など、自分の目で確認することができません。

そう言った意味では、終わりのない不安がずっと付き纏う時代でもあり、こういった時代を生き抜くためには、長期的な不安に打ち勝つための方法を身につけておく必要があることでしょう。




↑21世紀の敵は、肉眼では確認できない見えない敵。

こういった時こそ、芸人の出番なのだと言える。何となく、日本が暗い時代になると、お笑いのブームが起こるのは、多くの人が危機の中では、泣くよりも笑った方が良いことを本心では気づいているからだろう。

人間の頭の中では、1日平均約6万個の考えが生まれていると言われ、その大半はネガティヴなものなのだと言います。

したがって、ポジティブとネガティヴの考えのバランスで考えれば、1日1時間ぐらいは、お笑い番組を見て、笑い転げるくらいがちょうどいいのかもしれません。


↑1日1時間は笑い転げてるぐらいがちょうどいい。

先のことを不安に考える悲観視が「気分」で、先のことをポジティブに考える楽観視が「意志」なのだとしたら、いまどれだけポジティブにいられるかが、危機が過ぎ去った後の行動力に影響してくることは間違いないでしょう。

女性の方は、最近、顔にシワが増えてきたと気にするかもしれません。でも、それは、自分の笑った回数が周りよりも圧倒的に多いという立派な証拠だと思えばいい。

笑いはウィルス以上に感染力が強いものです。

志村けんさんが「こういった時こそ、笑おうぜ!!」と言っているのをどこかで強く感じます。

参考書籍

■1.昇 幹夫「笑って長生き―笑いと長寿の健康科学」大月書店、2006年 P12 ■2.伊藤 一輔「よく笑う人はなぜ健康なのか」日本経済新聞出版、2009年 P35

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