February 19, 2015
電通の傘下に入るか、電通に挑み続けるか。IT・メディア業界で生き残る手段はこの二つだけ。

テレビで報道されている内容は正しく、インターネットは誰でも自由に発言し、自分に必要な情報を手に入れることができるプラットフォームだと思っている人が多いかもしれませんが、私たちが気づかないところで「意志的」に操作され、一部の権力者の利益を守るために、様々な「洗脳」の道具に使われているようです。

認知科学者の苫米地 英人さんは、テレビ、インターネットを含め、日本のメディアを裏で操作している企業として、「電通」を名指しで非難しており、内容がすべて事実なのかは分かりませんが、彼の著書、「”電通 “洗脳広告代理店」を読んでいくと、世界でも極めて稀な日本のメディア界の裏側が見えてきます。


↑テレビはもちろんのこと、自由に発言できるインターネットにまで権力者の手が伸び始めている。(Pic by Flickr)

テレビはNHKを除いて、基本的に広告費によって運営されており、スポンサーからの広告費が途絶えてしまえば、テレビ局はたちまち潰れてしまいますが、いくら毎年大量の広告費をテレビで使っている東京電力やトヨタ、そして花王などの大型クライアントでも、金という権力でテレビ業界全体に影響力を及ぼすのは難しいと言われています。

しかし、広告代理店である電通は、いくつもの大口クライアントを束ねる元締めのような役割を果たし、テレビ局に「うちに手数料をいただければ、広告枠に広告を出してくれる企業を探しますよ。」と言って近づき、資金源を独占することで、テレビ局に圧力をかけ、日本のメディア界を独占しています。


↑テレビ局は電通に資金源を押えられている以上、彼らの圧力に抵抗するすべはない。(Pic by Flickr)

広告代理店が複数あって、公正な競争が行われているのであれば、話は全然別で、A代理店がテレビ局に圧力をかけたとしても、テレビ局側が「だったら、B代理店と契約する。」ということになり、何の問題もありませんが、電通の業界シェアはダントツ1位であり、テレビ局は電通に睨まれたらひとたまりもありません。

海外の広告代理店は一業種一社制が常識であり、全業種を一社が独占することは海外ではかなり珍しいことです。

しかも電通がやっているのは、広告主の代理店とメディアの代理店の両方を掛け持つ事業であり、一業種一社制になっていないこと、異常な程のマーケットのシェア率は、独占禁止法に違反する可能性も十分にあります。


↑海外の広告代理店は一業種一社制が当たり前。(Pic by Flickr)

イギリスでは1980年頃から、独占禁止法との関係から、広告会社はメディア購入部分を切り離し、企画や制作といったクリエイティビティーに対して対価を払うようになり、広告は単なる「宣伝」から、一種のポピュラー文化や芸術の地位にまで上がりました。

アメリカでもこの10年、メディア購入機能が切り離され、広告会社と広告主の間で料金制度が確立されたことによって、強い個性と創造力を誇る会社が地方からどんどん現れ、広告業界が活性化し始めています。(創造都市への展望・佐々木雅幸P93)


↑クリエイティビティーに対して、対価を払う仕組みがなければ、本当の芸術は作れない。(Pic by Flickr)

日本の広告代理店が企画や制作といったクリエイティビティーによって、お金を請求する構造にならない限り、広告の質が低下するのはもちろんのことですが、電通が広告主の代理店とメディアの代理店を独占している限り、今後も電通は自分のクライアントの利益を守るために、様々な方法を使って情報を操作していくことでしょう。

原発の情報操作は記憶に新しいですが、東電のメイン代理店である電通は、「メルトダウンしていない」、「放射能は危険ではない」、「避難の必要はない」と事故から数週間、嘘のニュースを堂々と流し、真実を指摘する学者や関係者は、当初ほどんど取材されませんでした。(電通と原発報道–巨大広告主と大手広告代理店によるメディア支配のしくみ 本間龍)


↑クライアントの利益を守るために、代理店が情報を操作。(Pic by Flickr)

それ以外にも、権力者にとっては、国民にはバカでいてもらう方がありがたく、くだらないテレビ番組をどんどん作ることで、国民を世の中の本質から目をそらさせようとしています。

実際、僕が6年の海外生活を終えて、日本に帰ってきた時、テレビを見ていて一番気になったのは、なぜバラエティー番組などで、主演者の言ったセリフを画面の下に字幕として表示する必要があるのかと言うことです。

これは「テロップ」という手法の一つで、視聴者の脳を停止させた後で、「こう解釈しなさい」と押し付ける非常に危険なやり方であり、この手法が洗脳に有効なことは様々なリサーチが実証しています。


↑権力者からすれば、国民は本なんか読むより、テレビを見てヘラヘラ笑っていてくれる方が助かる。(Pic by Flickr)

ただ、若者がテレビを見る時間は、インターネットの普及ともに減っており、Facebook やTwitterがテレビに変わる新しいメディアとして注目されていますが、もちろん、このような新しいメディアにも権力者の洗脳が少しずつ浸透し始めています。

実際、リーマンショック以降、メディアの広告の落ち込みは激しく、特に雑誌、新聞の落ち込みはケタ違いですが、それとは逆行するようにインターネット・メディアの広告費は2004年にはラジオを、2006年には雑誌を、2009年には新聞を、そして2013年、ついにアメリカではテレビを抜き去り、一番費用対効果が高いメディア産業に成長しつつあります。


↑2013年、ついにアメリカでは、インターネットがテレビを抜き去った。(Pic by Flickr)

従来、電通などの大手広告代理店は、テレビと比べて単価が安すぎるインターネット・メディアには手を出していませんでしたが、最近ではGoogleやFacebook、そしてTwitterなどとパートナーシップを組み、インターネットをテレビ同様、立派な「広告媒体」と見なし始めました。

電通はFacebookのプレミアム広告枠を独占販売できる権利を2011年に取得し(現在は不明)、認知科学者の苫米地 英人さんは、「Facebookのプレミアム広告枠を電通が独占販売できるようになったということは、事実上、Facebookの日本市場を支配下に置いたも同然だ。」と述べています。


↑事実上、Facebookの日本市場を支配下に置いたも同然。(Pic by Flickr)

カーネギーメロン大学の調査によれば、ツイッターで語られている言葉を自然言語処理することによって、オバマ大統領に対する好感度を数値化することができるらしく、ツイッターでのオバマ大統領の好感度と世論調査によるオバマ大統領の支持率とは、見事なまでに正比例していたことが分かりました。

この調査を逆手にとれば、自然言語生成で意志的なつぶやきを増やし、ツイッターを操作することで、大統領の支持率などどうにても操作できるのかもしれません。


↑ツイッターも意志的に操作が可能。(Pic by Flickr)

実は、ネット上の発言はすでに監視されており、経済産業省の資源エネルギー庁(原発を推進するための官庁)は、原発に対するツイッターやブログなどの監視業務を広告代理店に委託しており、この事業は2011年、広告代理店のアサツーディ・ケイ(ADK)が7000万円で落札しました。

当然のことながら、この7000万円は国民からの税金で、日本の国民は自分たちの税金で、原発反対に関する発言を政府に監視されていたことになります。


↑自分たちの税金で、自分たちの発言が監視されている。(Pic by Flickr)

グーグルの元CEO、エリック・シュミットは以前、「第五の権力」という本の中で次のように述べていました。

「たいていの政府は、仮想世界でも、現実世界と同等の支配力を持ちたいと考える。これは甘い考えだろうが、そう望むのは当然のことであ る。そして今後はそれぞれの国がインターネットを規制し、思い通りに方向づけようとするだろう。」(第五の権力P125)


政府はインターネットの中でも、現実世界と同等の支配力を持ちたいと考える。(Pic by Flickr)

2010年から11年にかけて、チュニジアで「ジャスミン革命」が起き、23年続いた独裁政権が崩壊し、この革命で大きな役割を果たしたのが、Facebook、Twitter、Youtube、そしてWikiLeaksなどインターネット・メディアでした。

さらにそれは一国に留まらず、周辺のアラブ諸国の国々に飛び火し、あちらこちらで政権打倒の民主化運動が勃発すると、「アラブの春を我が国でも」とつい考えてしまいますが、政権をも倒す力を持つ、インターネット・メディアが、ある特定の企業の影響下に入ってしまえば、テレビと同じような洗脳の役割として使われる可能性は十分にあります。

実際、電通は政界とのつながりも強く、政党のコンサルティングなども手掛けており、彼らが広告費だけのそろばん勘定だけ動いているとは到底思えません。


↑革命の道具も特定の影響下に入ってしまえば、何の役にも立たない。(Pic by Flickr)

インターネットを通じたマーケティングは、まだまだ新しいものであり、FacebookやGoogleなどとパートナーシップを組んでいる大手広告代理店が、何か特別なノウハウを持っているわけではありません。

しかし、若い起業家がインターネットのマーケティングに関して、どれだけ実力があっても、電通などの大手広告代理店を「通して」仕事を受けるのが、この業界の常識になりつつあり、このふざけた常識は日本全体のためにも、何とか壊していく必要があるのではないでしょうか。


↑権力者の好きにさせるな。2つ、3つ・・・、数多くのベトナムをつくれ、これが合言葉だ。(Pic by wikipedia)

逆に大して実力がなくても、大手広告代理店の傘下に入りこんでしまえば、巨大権力の中で甘い蜜を吸うことができ、そちらの道を選ぶ人も中には多いのかもしれません。

人気アニメワンピースの中で、ルフィと共通の目的を持つトラファルガー・ローは次のように問いかけました。

「新世界で生き残る手段は2つ。四皇(巨大権力)の傘下に入るか、挑み続けるかだ。誰かの下につきたいってタマじゃねぇーよな、おまえ?」


↑誰かの下につきたいってタマじゃねぇーよな、おまえ?(Pic by mirror)

ただ、真っ向から挑んでも、相手は国の政権すら支配しつつある巨大組織、全く歯が立たないでしょう。

キューバの革命家、チェ・ゲバラはゲリラ戦で勝利しましたが、本当に世の中を変えたいと考えているのであれば、世の中を支配しようとする巨大権力をどんどん挑発していくべきです。

ジョン・レノンは平和の象徴として知られていますが、生涯、彼に注目が集まった理由は、「世の中を挑発する力」にあったと言われており、「ビートルズはイエス・キリストより人気がある」、「戦争するより、セックスしよう」と世の中を挑発しながら、「想像してごらん……いつの日かあなたが私たちに加わり、世界がひとつになって生きるだろう」と彼は歌い続けました。(UNThink エリック・ウォール  P65)

ジョン・レノンを夢想家と見る人もいれば、典型的な脅迫者と見る人もいたそうですが、彼がリスクを負って行動したことが、カウンター・カルチャーを急成長させ、世の中を変えていったのは誰もが知っている事実です。


↑「戦争するより、セックスしよう」と巨大権力を真っ向から挑発。(Pic by Flickr)

権力の暴走は、憲法の力だけでは制御することができず、そこにはメディアという権力の監視役が絶対に必要なはずです。

ところが権力を監視するはずのメディアが、国民の方を向かず、電通や広告主のほうを見てしまえば、僕たち国民は小さな鳥かごの中で都合良く洗脳され続けるだけです。

この苫米地 英人さんの「電通 洗脳広告代理店」の内容がどこまで正しいのかは分かりませんが、少なくともテレビやバイラル・メディアの状況を見る限り、日本がとても危険な状況にあることは間違いありません。

自分たちの自由を守るため、常に政府や巨大権力を挑発し続けるアメリカでは、「Do the right thing(人として正しいことをする)」という言葉があり、権力に対してスキがあれば常に攻撃を仕掛けていきます。


↑権力を挑発し続けろ。(Pic by Flickr)

本当に世の中を変えたいのであれば、リスクを取って立ち向かい、挑み続けるしかないのかもしれません。

世の中は権力者に有利なようにできていますが、リスクを負って行動する者には歴史はいつも味方するのですから。

/TAKE_CONTROL