February 14, 2015
業界にビル・ゲイツが入ってきてイノベーションを起こすと、あなたの会社の売上は激減する。

検索エンジンで莫大な利益を得たグーグルには、自由に使えるお金が約7兆円あり、グーグルCEOのラリー・ペイジは次の数十年で、そのお金を人工知能に投資することで、多くの仕事が機械に代行されるだろうと述べていますが、もうすでにその影響は世の中に出始めており、技術の進歩がはや過ぎて、人間がそれについて行けていません。


↑あと数十年で、多くの仕事は機械に代行される。(Pic by Flickr)

ある経済学者が2004年にコンピューターと人間の能力を比較した調査によれば、完全無人のロボットカーは8時間以上かけて、たった12キロしか走しれず、車の運転のような複雑な作業がコンピューターにとって変わることは、まだまだ難しい理由を次のように述べました。

「トラックの運転手は、周囲の環境から視覚、聴覚、触覚に訴える様々な情報を常に受け取って処理している。こうした行動をプログラミングするには、まずはビデオカメラやセンサーを使って莫大な情報を収集しなければならない。だが、車が行き交う中で右折をする場合、関与する要素があまりに多く、運転手の行動を再現しうる一連のルールは、とうてい決められそうにない。」(機械と競争 P30)


↑2004年の調査「視覚、聴覚、そして触覚をプログラミングするのは到底無理だろう。」(Pic by telegraph)

しかし、そのたった6年後の2010年10月、グーグルは人間の介入が一切ない完全自動車運転で道路を1600キロ走行することに成功し、人間がほんのわずか指示を出す方法では、22万キロの走行を成功させました。

車の例はほんの一例に過ぎませんが、少し前までSFの中にだけ存在していた高度な能力が、今私たちの目の前で現実化し始めているのは間違いなさそうです。


↑作業の効率化は人間の一番の欲求。簡単ではないが、決して不可能ではない。(Pic by Flickr)

建設労働者が居酒屋で飲んでいるところにビル・ゲイツが入ってきて、一番貧しい労働者が出て行ったら、その場にいる人間の平均資産は一気に1000億円になりますが、実際の経済ではそうはなりません。

ここ数十年でアメリカ経済が創造した富は数兆ドルを上回りますが、その大半の富は人口のごく一部に集中しており、経済学者のエド・エルフ氏によれば、1983年〜2009年にアメリカで創造された富の100%以上は、世帯の上位20%に集中していますが、残り80%の世帯では同時期に富が減っているそうです。


↑あなたの業界にビル・ゲイツが入ってきて、作業の自動化が進めば、富の多くは技術を持っている一部の人に集中する。(Pic by Flickr)

マサチューセッツ工科大学のエリク・ ブリニョルフソン氏は、デジタル技術が発達するにつれて、高いスキルを持つ人たちとスキルを持たない人がどんどん両極端に二極化され始めており、実際、ITの自動化で一番の被害を受けるのは帳簿の記帳、銀行の窓口、そして工場の半熟練工などの仕事をする中間層の人たちであると指摘しています。


↑上位10%の人たちはデジタル技術で自分のスキルにレバレッジがかかるため、所得は自然と上がる。(Pic by Flickr)

アメリカのベストセラー作家、ダニエル・ピンク氏が指摘するように、10年〜20年前に評価された「ナレッジ・ワーカー(知的労働者)の仕事は、想像以上に速いスピードでIT技術に代行され始めており、元マッキンゼー日本支長の大前研一さんは、今の義務教育で行われている左脳中心の教育や知識など、メモリーチップにおさめたらせいぜい100円ぐらいの価値しかなく、グーグルやメールなどを使って、どんどん「カンニング」をして、新しいもの作っていかないと、これからは飯を食っていけないと述べています。


↑これからは「カンニング」しなければ食べていけない。(Pic by web.mw)

実際、過去数十年間、アメリカの教育からイギリスの入学試験、そして日本の塾まで、先進国の国々では「左脳型ナレッジ・ワーカー」の教育に力を入れ、テレビ、車、携帯電話、そしてパソコンなどを一家で一つ所有するのでなく、一人一つ所有できる生活基準を作り上げたことで、2015年の世の中は、100年前の人たちからは、とても想像できないほど豊かな世界になりました。

「左脳主導の教育」は大成功しましたが、その「豊かさ」があまりにも急激に訪れた為、徐々に価値が下がり始め、現在ではそれほど合理的ではなく、右脳的感覚に訴えかけるもの、つまり美しさ、精神性、そして感情といったものに、より多くの価値が見出させるようになりました。


↑「合理主義」があまりにも急激に進んだため、右脳的感覚に訴えるものの価値が上がった。(Pic by Flickr)

例えば、電気照明は100年前に生きた人にはとても珍しいものでしたが、今では当たり前になってしまいました。

アメリカではロウソクの市場が年間300億円近くあるらしく、人々は照明という論理的な必要性を超えて、「美しさ」や「ロマンチック」というところに、本当の豊かさを見つけ始めているのかもしれません。


↑合理性、生産性よりも、「美しさ」や「ロマン」(Pic by Flickr)

左脳的思考の仕事はどんどんコンピューターに代行されていきますが、21世紀は「左脳型人間は敗北し、右脳型人間が勝つ」といった単純な二元化の世界ではありません。

いくら必要なことがすべてグーグルで調べられると言えど、何から何までグーグルで調べるわけにはいかないからです。

本田直之さんは、「レバレッジ・リーディング」という本の中で、通常のビジネス本一冊を一時間で読み切り、知識にレバレッジをかける方法を紹介していますが、これからの時代は左脳を鍛える時間をどう効率的に減らし、右脳を使う時間をどれくらい増やせるかが、ビジネスの勝敗を大きく左右していくのではないでしょうか。


↑未来は「左脳型人間は敗北し、右脳型人間が勝つ」という単純な二元化ではない。(Pic by Flickr)

大前研一さんによれば、本当にすごい人は右脳からアイデアを出して、左脳で評価できるらしく、右脳と左脳の関係について次のように述べています。

「”必要条件”が右脳から出てきたら、それが”十分な条件”かどうかを左脳で判断する。そこで、この両者を結ぶ”脳梁”の働きが非常に重要になる。”右脳だけ”の人は、考えられてもそれがチェックできず、白昼夢のようになってしまう。一方、左脳もバランスよく働かせられる人は、右脳で出たアイデアを現実的なものに焼き直して、”おまえ、違うぞ”と右脳に投げかける。」ハイコンセプトP20


↑右脳からアイデアを出して、左脳で評価する。(Pic by Flickr)

左脳思考で世の中が回っていた時代は、一つの分野で専門知識を身につければ成功は保証されましたが、現在では「プロフェッショナル」という言葉はただのお守りにすぎず、新しい時代は全く異なる領域の仕事を同等の自信を持ってこなせることができる人が、多額の報酬を得ることができるだろうとダニエル・ピンク氏は述べています。

実際、「マーケティング」+「料理人」であれば、Web上で自分独自のメディアを作れるでしょうし、「営業職」+「農家」であれば、新たな顧客を発見できる可能性が高くなるなど、全く異なるモノを組み合わせることで、競合にはない個性や価値を生み出していく、これが右脳主導の新しい21世紀の働き方なのではないでしょうか。


↑全く違う「組み合わせ」を見つけることから、本当に付加価値が生まれる。(Pic by Flickr)

スティーブ・ジョブズは、「物語を語れる人が世界で一番力を持っている人だ。」と述べていたそうですが、ある状況における要素をすべて見て、その意味を理解したり、複数の物事を同時に処理することは、コンピューターが不得意とするところであり、これからの時代は統計データや数字を基本に議論をするのではなく、もっと全体的な思考を意識し、ディズニーのように数字には現れないストーリーを作れる人が活躍していく時代なのでしょう。


↑物語を語れる人が世界で一番力を持っている。(Pic by Flickr)

経済学者のグレゴリー・クラーク氏によれば、19世紀の産業革命で一番の被害を受けたのは、何と馬だったそうで、鉄道が作られ内燃機関が登場すると、馬車で移動する需要がなくなり、1901年には325万頭いた馬がたった20年ほどの間に40%近く減り、1924年には200万頭を下回っていたそうです。

現在はIT革命によって人間の需要がなくなりつつありますが、現在の日本人の左脳(70%)と右脳(30%)の割合を反対にしなければ、もう日本人は世界で戦っていくことはできないでしょう。


↑鉄道や内燃機関の発展によって、一番仕事を失ったのは馬だった。(Pic by Flickr)

世の中はもの凄いスピードで動いており、動きの遅い人や頑固な人にとっては、過酷な時代になっていくことは間違いありません。

しかし、逆に起業家は左脳型の取り残された莫大な労働者と、どんどん安くなるテクノロジーを上手く組み合わせたビジネスモデルを作ることができたら、21世紀に相当する価値を生み出していけることでしょう。

現在は、機械に自分の仕事を奪われるのではないかと心配する人たちにとっては、最悪の時期なのかもしれませんが、才能ある起業家にとっては、新しいものを生み出す「最高の時期」なのかもしれません。

(Eye Catch Pic by Crowdspring)

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