November 4, 2018
ビジネスマンの価値は泊まるホテルの高さで決まるが、クリエイターの価値はホテルの安さで決まる。

最近の海外の若者が泊まるユース・ホステルやゲストハウスは、昔の安くて、とことん汚いものではなく、アートや様々なオブジェが飾られ、むしろ普通のホテルよりもオシャレになってきているような気がします。

特に、一人で旅行に行く場合は、お金という部分を抜きにしても、世界中から感性豊かな面白い人たちが集まるホステルほど、話のネタになる宿泊先はないのではないでしょうか。





世界中どこを探しても、「面白い宿泊先」というものは存在せず、存在するのは「面白い人達がいる宿泊先」だけです。

よくきれいな猫をペットショップで買ってくるよりも、汚い猫を拾ったり、もらったりして、自分できれいして飼う方が運気が上がると言いますが、ユース・ホステルなども、その場所をどう面白くできるかは自分次第で、価値がないものにどう新しい付加価値をつけていくかといういうところに、その人の能力が問われていきます。







文化研究者の桑原武夫さんが「あいつ頭ええなと言われたら、馬鹿にされてると思え」と学生によく言っていたように、「あいつはおもしろい」と言われて始めて褒め言葉になるのだと言います。

その理由は、「おもしろい」という言葉は、今までとは違った視点で物事を表現した時に使われる言葉なのに対して、「頭がいい」という言葉は、現代の常識や今世の中に流通している知識の基準値ではかられた評価でしかないからです。

ファッションのクリエティブ・ディレクターの経歴を調べてみると、一番独創的な表現ができる人は、海外に住んだ時間に関係なく、日本人ならアメリカ、ヨーロッパ、欧米人であれば、日本や中国といったように、自身の文化とできるだけ違う文化に多く触れているという特徴がありました。





そういった意味では、宿泊環境としては、満足できるものではなくても、安さと引き換えに自分とは全く違う価値観を持った変人が世界中から集まるユース・ホステルは新しいアイディアの宝庫だと言えます。

学校の先生というのは、普段、子供としか接していないため、世の中を狭い範囲でしか見ることができていませんが、広告代理店の人たちは日々様々な業界の人たちの接しているからこそ、色々な視点で新しいアイディアをどんどん出していけるのでしょう。

大企業のPRなどを見ていると、急に明日から「多様性を尊重してイノベーションを起こします!」みたいなものがすごく多い気がします。

しかし、当たり前ですが、急に明日から「多様性になれ!」と笛を吹いたところでそんなものが機能するわけはなく、多様性の組織をつくり、維持していくためには、常に自分とは異なった価値観を持った人たちが集まる場所に出入りして、自分自身をアップデートしていかなければなりません。







よく、ビジネスマンの価値は泊まるホテルの値段で決まると言われますが、面白いクリエイターの価値は泊まる場所の値段の安さで決まってくるのでしょう。

いいホテルに泊まるのも勉強ですから、一日だけ最高級のホテルに泊まって、あとは全部安宿に泊まるのが一番「面白い旅」なのかもしれません。

/YOUTH_HOSTEL